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「インターネット、だめ! だめ!」対“新聞‘網友’面”--中国インターネット生活事情

1999年07月29日 00時00分更新

文● ジーコム・津田天

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コンピューターを利用しながら、ライター、編集を生業として十ン年、中国人と結婚して中国に暮らすこと5年、今は中国と日本の間を行ったり来たり……。中国のインターネット生活事情について、気鋭の女性ライター、ジーコム・津田天 氏に寄稿してもらった。

「インターネットは、だめ! だめ! だめ!」

今回は、中国のインターネット事情。といっても、専門的な話はできないのであしからず。コンピューターを利用しながら、ライター、編集を生業として十ン年、中国人と結婚して中国に暮らすこと5年、今は中国と日本の間を行ったり来たり、という私の目に映った中国の最新のインターネット事情を紹介したいと思う。

1ヵ月ほど前。2ヵ月ぶりに南京に戻った時に、印象的な場面に出くわした。あ、ちなみに、南京という街のバックグラウンドをお伝えしておこう。南京は、戦争中の悲惨なできごとで日本人にも有名な古い都だが、南京市内だけで300万人、周辺を含めると500万人の人口を抱えている10大都市の1つで、なぜ、南京かというと、私の夫が生まれて育った街で、私が5年間を暮らした街なのである。

この南京の私たちの家は、住宅地域の団地の1室なのだが、その郵便受けが並ぶ団地の入口の前で、夕暮れ時に近所の人と立ち話をしていた時のこと。いつもの新聞配達のおばちゃんが自転車に乗って目の前にやってきて、新聞を手渡してくれた。「インターネットなんかしちゃだめだよ。だめだよ、だめだよ」。呪文のように唱えながら、そのおばちゃんはまた自転車にまたがって走り去った。

国有企業の経営不振で、仕事がない、とぼやく人は、この1、2年で急激に増えている。おばちゃんにとって、新聞配達はなくなってはならない大事な仕事だ。このおばちゃんにしてみれば、ニュースを新聞を買わなくても見ることのできるインターネットは、自分の職を奪う敵なのだろう。

若人、都会、専門職

とはいえ、実際に、インターネットというものが、どの程度、中国の暮らしに根付いているものなのか。ちょうど、7月20日付の中国経営報という新聞に、“わが国のインターネットの発展状況最新統計報告公布”というのが掲載されたので、まずは最新データとして紹介したいと思う。利用者についてのかなり細かい内訳があって興味深い。

この公布によれば、中国のインターネット利用者は400万件。そのうち、ISDNの利用者は76万件、電話線の利用者は256万件、両方とも利用しているのが約68万件だという。

利用者の内訳を見てみる。

まず、性別では、85パーセントが男性で、15パーセントが女性。

年齢別に見ると、21~25歳が39.9パーセント、26~30歳までが27.1パーセント。31~35歳までが11.4パーセント。

地域別では、北京(21.02パーセント)広東(11.77パーセント)上海(8.71パーセント)。

学歴別では高校生以下が2パーセント、大専(短期の大学のようなもの)27パーセント、本科(一般の大学)48パーセント、修士9パーセント、博士および博士以上の方が2パーセント。

使い方も真面目一本槍

月収別では、500元(1元=約15円)以下が21パーセント。500~1000元が29パーセント、1000~2000元が28パーセント、2000~4000元が15パーセント、4000~6000元が4パーセント、6000元以上が3パーセント。

利用目的別には、ニュースなどの情報が56.8パーセント、コンピューターの新しい技術開発が9.7パーセント、仕事のためが9.4パーセント、レジャー娯楽が8.2パーセント、各種無料情報を得るが7.2パーセント。

さらに、Windows95/98の利用者が93.6パーセント。WindowsNTの利用者は5.1パーセント。

株投資情報が人気の人民共和国

ちなみに、1月の発表では、インターネットの利用者は210万件だったので、半年で2倍に増えたことになる。ご存じの方も多いと思うが、中国では貧富の差がますます拡大している。都市部では、あって当たり前のカラーテレビが、今や平面テレビの流行へとつながっている。一方、へき地では、ようやく1家に1台カラーテレビが普及し始めているという話もあるほど。インターネットの普及が都市部に集中していることは、上の統計でも明らかだ。

ということで、中国の地方にある大都市の1つである南京にいても、インターネットの普及スピードはかなりのものだと実感している。その背景には、政府の規制緩和、プロバイダー間の競争が激化して、登録が簡単で、料金が安くなったことなどが挙げられる。もちろん、中国で人気のある情報として、株投資の情報やニュースやサッカーなどのスポーツの結果などのコンテンツが整い始めたこともあるだろう。

私の知り合いは、貿易会社や旅行会社で働いていたり、自営業を営む人、外国と関わりのある人が多いせいもあるだろうが、この半年の間に、家でインターネットを使い始めた人の数は、知り合いの知り合いを含めればかなりの数になる。なかには、今ならホームページ制作でかなりの収入が見込めると聞いて、ホームページ制作の学校に通い始めた人もいる。

かくいう私の夫も、3月に登録して、最初は英語で、今では、日本語で毎日Eメールの交換ができるようになった。先月、しばらくメールが来ないな、と思っていたら、数日経ってから「お金が足りなくなったから、銀行に行って入金してきました。あと、当分大丈夫」とメールが入った。料金前払い制で、払い込んだお金から、使った分だけお金が減っていき、お金がなくなったらインターネットに接続できなくなる、というシステムになっているらしい。なるほど、これなら料金のとりっぱぐれもないわけだ。

夕刊紙に“網友”面

というわけで、ハード、ソフト、決済システムが整って、本格的インターネット時代に向けて助走を始めた感のある中国。インフラの面でいえば、政府が公共投資として光ファイバーの基盤整備に力を入れていること、ケーブルテレビと衛星を連携したシステムが既に広く利用されていることなどから、後発組の有利性を生かした、ほかの先進諸国とは異なった新しい発展の形を見せてくれるかもしれない。

さて、今回の中国滞在で、インターネットが中国の人の暮らしの中にいかに入り込んでいるかを証明する、もう1つの現象に出くわした。それは、夕刊紙の中にあった。多くの中国人が愛読している夕刊紙にサイバー面が登場していたのだ。その名も“網友”面。“網”はネットのことだから、“ネット友達”とでも名づけておくことにしよう。

さてさて、この“ネット友達”というサイバー面の記事。とても面白いのでぜひ紹介したいところだが、今回は最新のデータを説明していたら、スペースがなくなってしまった。機会があれば、中国語のインターネット用語、つまり漢字で書かれたインターネット関連の単語を説明しながら、その詳細をお伝えできればと思う。

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