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新しいPDFにプリプレスはどのように対応するか?--PRNCOM '99から

1999年07月27日 00時00分更新

文● 山木大志

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PDFに対するプリプレス業界のスタンスと今後への期待

PRNCOM '99の2日目の22日、“Adobe Acrobat(PDF)とプリプレス最新事情”と題して、恒陽社CPLの石塚晃氏が講演した。石塚氏は、プリプレス(製版)業界の現在の問題点を指摘するとともに、装いを新たに登場したAdobe Acrobatとプリプレスに関する実情報告と提案を行なった。

PDFは、オフィスのデジタルデータ発信、共有の手段として有望視され、実際に活用もされている。これに対して、プリプレス業界においてはワークフローの革新手段として期待されながら、実務運用は極めて低調である。その理由は以下の2点に集約される。

・色のコントロールがDTPデータに比べて難しい
・フォントの埋め込みができない

6月に発売された『Acrobat 4.0』ではこの2点に対して一応の答えを出しており、プリプレス業界では今後PDFの活用が期待されている。上記2点について、今回の石塚氏の講演では、フォントの埋め込みについては多くの時間を費やして説明したものの、色のコントロールに関しては“カラーマネージメントができるようになった”と指摘するに止まった。

DTPデータの問題点

石塚氏は、現状のDTPデータの問題点を次のように指摘した。「アナログ工程では、データに問題があっても中間プロセスで修正できた。しかし、DTPでは入稿データに問題があったとき、製版プロセスで修正しようがないものが多い」--。

実際のDTPデータの問題点として、石塚氏は、米国の印刷業界団体GATF(Graphic Art Technical Foundation)の調査例を挙げた。それによれば、DTPデータの主な問題点が、10種類ほど存在する。



1


フォントエラー


20%


2


トラップミス


12%


3


RGBカラーデータ


11%


4


ファイルフォーマット


8%


5


ページ設計ミス


8%


6


リンクはずれ


5%


7


ブリードミス


5%


8


カンプなし


5%


9


画像なし


5%


10


解像度ミス


3%


DTPデータに発生する10種類の問題点


“フォントエラー”というのは、ドキュメント中で使っているフォントが出力側にないということだ。“トラップミス”は、図形や文字の重なっている部分で、上下関係や輪郭の取り方の指定が誤っている場合である。“RGBカラーデータ”とは、写真などの画像がRGB形式で入稿されることだ。印刷用のカラーデータはCMYKとしなければならない。“ブリードミス”とは、日本では俗に“ドブ”などと呼ぶ設定の誤りだ。印刷物用のデータでは、わずかな断裁ミスで紙の白が出ないように、断裁サイズよりも大きめにページデータを構成する。これが断裁サイズ以下であると、紙の白が出てしまう。

新しいPDFの活用によってフォントトラブルを解消

石塚氏は、「これらの実態は日本でもほぼ同様と推測される」としながら、「フォントエラーに関しては、日本はもっと数字が大きいはずだ」とも語る。そして「このフォントエラーに関してPDFでの解決ができるのではないか」と期待する。石塚氏が語った趣旨は、以下の通りだ。

コンピューターには機種依存文字がある。文字コードのうち、外字エリアと呼ばれる部分はメーカーによってまったく異なった構成になっている。このことは、代表的なコンピュータ環境であるWindowsとMacintoshの間でも同様だ。さらに異体字、ユーザー外字などは、それを作ったシステムでなければ表示、プリントできない。

こうした問題を回避するために、現在は字形のアウトラインを取得して製版データを作成している。しかし、この方法だと、一般のプリンターでは文字が太るうえ、ファイルサイズも非常に大きくなる。さらに、文字情報が失われ、検索ができなくなるなどの問題点がある。

新しいPDFでは、フォントを埋め込むことによって、これらの問題点を解消できる。ファイルサイズはオリジナルファイルよりは大きくなるものの、アウトライン化したものよりは小さくて済む。文字情報も失われない。さらに、テキストの編集も可能になっている。

フィルム出力などを行なう側からすれば、さらに大きなメリットがある。現在のDTPシステムでは、ドキュメント中に使われているフォントが出力機にインストールされていることが必須の条件になっている。しかし、フォントが埋め込まれていると、出力機はフォントを持たなくて済むのである。これによって、WindowsのデータもMacintoshの出力機で出力することが容易になる。

プリプレスで活用できるAcrobat 4.0の新機能

フォントという主要な問題点をクリアできるほかに、Acrobat 4.0では、プリプレスで活用できる機能のいくつかが搭載されている。石塚氏はプリプレスのベテランらしく、下版間際に利用できる2つの機能、TouchUpとページ比較を取り上げた。

TouchUpは、PDF内でページを構成する文字、画像の編集機能である。石塚氏は「下版間際の修正にこの機能が有効であろう」と述べた。従来の工程でいえば、フィルムのストリップ修正の作業として推奨している。日本の印刷工程では、ぎりぎりまで修正に対応しなければならない。

“ページの比較”は、Windows版のみの機能だ。2つのPDFを開いて、このコマンドを実行すると異なる部分を赤い線で示す。従来は、版が前後して制作された場合、目視で確認するしかなかった。「この場合、訂正するべき個所については確認が容易だが、本来修正すべきでない個所が訂正されていた場合には発見が難しい」と石塚氏は語る。“ページの比較”はこうした検版上の課題の解消に役立つ。

さらに、「Acrobat 4.0のカラーマネージメント機能、OPIへの本格対応、Distillerの解像度の向上、PDFサイズの拡大などにより、CTP(ダイレクト刷版)やオンデマンド印刷機での利用環境が向上する」とも述べている。

PDF入稿での3つの問題点

石塚氏は、PDFのプリプレスでの利用に関して、実務家らしく、厳しい観点も持っている。今後PDFを利用していく上での問題点を、次の3点に集約した。

・誰が最終データに責任を持つか?
・誰がPDFを制作するか?
・DTPがわからない人には印刷仕様のPDFは作れない

米国のデジタルワークフローでは、PostScriptファイルによる入稿が、従来から一般的である。PostScriptファイルを直すことはできず、入稿された側はそれを出力するだけでよい。つまり、最終データへの責任は制作者が負うのである。ところが日本では、制作上のどの段階でも直しの指示が発生する。しかも、入稿されたデータは製版上修正しなければ出力できないものが多い。このため、クライアントとプリプレスの双方で修正作業が行なわれる。データの最終形態が決まるのは下版直前である。結果として最終データの責任が曖昧になっている。「これを放置したままPDF入稿が行われると混乱が起こる」と石塚氏は言うのである。

日本では、入稿データとしてPostScriptファイルを作ることはほとんど行なわれていない。QuarkXPressなどの生データから直接出力するワークフローが一般的だ。PDF入稿を行なうとなれば、プリプレス工程が1つ増えることになる。「プリプレス企業がこれを行えば、工程数が1つ増えることになり、それはコストに反映する。そのコストを誰が負担するのか?」と石塚氏は懸念する。

PDFは誰でも作れるが、作られたPDFがすべて印刷に適した仕様になるわけではない。“DTPを理解している人にしか印刷仕様のPDFは作れない”のである。石塚氏は、これに関しては単なる事実の指摘を行なうにとどめたが、こうした混乱を避けるにPDFに関する啓蒙活動を行なう以外、有効な手段はない。

石塚氏の話を聞くかぎりでは、PDFをプリプレス企業が自ら取り入れる必然性は少ないように思われる。強いてプリプレス企業内でPDF利用のメリットを挙げるとすると、WindowsデータのMacintoshからのスムーズな出力という局面くらいである。

とはいえ、今後クライアントである一般企業でのPDF活用は広がる一方と推測され、PDF入稿も増えるであろう。石塚氏も根拠は明示しなかったものの「今後PDF入稿は増えるだろう」と推測している。この流れをスムーズなものにするには、入稿から仕事が始まるという現在のワークフローを、印刷用文書制作の立ち上がりからプリプレス企業が関与するというワークフローへと変更することが、不可避であるように思われる。

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