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芸術・科学・福祉という異分野を結びつける“メビウスの卵展”、28日まで開催中

1999年07月26日 00時00分更新

文● 船木万里

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東京都大崎のO美術館で、7月17日から28日まで“メビウスの卵展”が開催されている。この催しは、芸術・科学・福祉という異分野を結びつけ、多面的な作品を展示し、これらの共同研究の可能性を探るもの。観客参加型の作品をメーンに置きながら、“バリアフリー”、“五感”などをテーマにしたワークショップや講演会を開き、障害をもつ人々も楽しめるような工夫を凝らしている。

五感での体験をテーマにした多彩な展示

出品された作品は約20点。五感での体験をテーマにしているものが多い。例えば“音の種子”というオブジェは、すっぽり頭をおおう帽子型。かぶって体を動かすことによって、微妙な音を聴くというもの。低い段差をつないだ道が設置してあり、かぶったまま歩けば微妙なバランス感覚を楽しめる仕掛け。
“かしこいかみ”は、一見普通の折り紙のようだが、紙に細かいドットが打たれているため、複雑な造形を簡単に作ることができるというもの。また、竹かごを編んだランプシェードを回すことで、幾何学模様の影を楽しめる“カゴメボールプロジェクション”や五角形と六角形のかご目の組み合わせによって出来上がるかごの形を分析した“12の五角形”など、伝統的な素材を科学的に解析したものも展示されていた。

“万目鏡”は、両端から見ることのできる大きな万華鏡で、2人で覗けば、お互いの顔が万華鏡状態に見える。“一期一会”と題された装置は、フラッシュボタンを押すと、自分の影がスクリーンに数分の間だけ焼き付く。
そのほか、観客がポンプを押すことでサイフォン現象を見られるオブジェや、手で回せば虹色に輝くプレートなど、科学と芸術の融合、という形容がふさわしい、不思議な仕掛けを実際に体験できる。

“メビウスラボ”で作ってみる

“メビウスラボ”では、工場長の西野氏が子供たちに作品の作り方を教授
“メビウスラボ”では、工場長の西野氏が子供たちに作品の作り方を教授



また、展示室の一角にある“メビウスラボ”では、工場長に教えてもらいながら、紙のオブジェや竹を編んだかごボールなどを実際に作ってみることができる。

“音の種子”をかぶり、道の上を歩く参加者。道には“ユクモカエルモアフサカノセキ”という題名がつけられている
“音の種子”をかぶり、道の上を歩く参加者。道には“ユクモカエルモアフサカノセキ”という題名がつけられている



“カゴメボール”。手で回転させると、かご目の影が周囲のカーテンに写り、幻想的なイメージを醸し出す
“カゴメボール”。手で回転させると、かご目の影が周囲のカーテンに写り、幻想的なイメージを醸し出す



“万目鏡”を両端から覗き合うと、相手の目が無数に写り込む
“万目鏡”を両端から覗き合うと、相手の目が無数に写り込む



“色のダリヤ”。手で円盤を回転させると、幾何学模様が虹色に輝く
“色のダリヤ”。手で円盤を回転させると、幾何学模様が虹色に輝く



バリアフリーなワークショップ

“バリアフリーな展覧会のためのワークショップ”は、障害者を含めた少人数で展覧会を体験する、というもの。“2人で見て、はじめてわかること”と題し、期間中の土曜日曜に約1時間行なわれた。さわったり動かしたりできる参加型のオブジェが多いので、視覚障害者も、健常者の案内があれば触覚・聴覚によって楽しめる。アーティスト自身や実行委員も案内役を務め、1つひとつの作品をともに体験していた。

“五感の重なりを体験するワークショップ”は、参加者が1つの感覚だけに頼らず、体全体で感じたこと、イメージしたものを創作するという試み。“音楽と香り”、“触覚と香り”、“自分の声を形にして見る、触れる”といったテーマを掲げる。このワークショップでは、品川手話サークルの協力により、すべてに手話通訳を付けた。

“触覚と香りのワークショップ”講師をつとめる、本展実行委員の加藤治男氏(右)と、アーティストの鈴木健生氏。
“触覚と香りのワークショップ”講師をつとめる、本展実行委員の加藤治男氏(右)と、アーティストの鈴木健生氏。



マッチの燃えかすやレモンの切れ端の“印象”

24日の“触覚と香りのワークショップ”では、親子連れや視覚障害者も参加して、粘土の造形にチャレンジした。講師は、本展実行委員の加藤治男氏。視覚障害を持ちながらも、アーティストとして本展に参加している鈴木健生氏をゲストに迎えてのワークショップとなった。

「香りを形で表現してみましょう」と参加者に指導する加藤氏。後方では、品川手話サークルのメンバーが手話通訳を務める
「香りを形で表現してみましょう」と参加者に指導する加藤氏。後方では、品川手話サークルのメンバーが手話通訳を務める



まず、参加者全員にボール紙の台紙とひとかたまりの粘土が渡される。「自分の鼻を触ってみましょう。そして、粘土で鼻の形を作ってください。触ったときの手の感触や鼻の感じなどを、粘土で自由に表現してみましょう」という呼び掛けに、参加者たちは、思い思いの鼻の形を作り始めた。
 
次に、1人ひとりにマッチの燃えかすやレモンの切れ端を渡し、香りを嗅いで自分なりに記憶や印象を表現するという命題に、それぞれが取り組んだ。出来上がると、それぞれの作品を鈴木氏が指先で触って確認し、どういう思いを込めて作ったのか、など作品の造形について各参加者と語り合った。

レモンの香りをとがった三角形で表現したものや、細いヒモのような形で煙のイメージを作ったものなど、1つひとつが個性的な仕上がり。「私たちは参加者の皆さんに、自分でものを作るという楽しさを実感する、きっかけを提供しただけです」という加藤氏。その言葉通り、参加者は障害のあるなしにかかわらず、粘土の造形を心から楽しんだ様子が伝わってきた。ワークショップ終了後は、出来上がった作品を大切に持ち帰る姿も見られた。

なお“メビウスの卵展”は今後、岩手、富山、仙台など全国7ヵ所で行なわれる予定。

出来上がった参加者の作品を、“指先”で見る鈴木氏出来上がった参加者の作品を、“指先”で見る鈴木氏

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