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【KNN特約】MACWORLD EXPO NEWYORK体験レポート--iBook登場にワイヤレスモバイル時代の福音の鐘

1999年07月23日 00時00分更新

文● KandaNewsNetowork、神田敏晶

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林信行さんのレポートで、MACWORLD EXPO NEWYORKのオフィシャルな基調講演情報は、つかんでいただいていると思うので、ボク(神田)は、ニューヨークの現場で体験したインプレッションを中心にお伝えしたいと思う。

アップルブースで展示されているiBookブルーベリー。コンピューターとは思えない展示スタイル。しかもこのまま回転する
アップルブースで展示されているiBookブルーベリー。コンピューターとは思えない展示スタイル。しかもこのまま回転する



ニューヨーク、ブロードウェーのホテルから徒歩で数分の距離にあるジャビッツ・コンベンションセンター。西海岸のMACWORLDとちがって、東海岸のMACWORLDでは、人にあまりフランクさを感じない。21日の早朝に並ぶ人たちにインタビューしてみても、反応は西海岸ほどよくない。しかし、心のどこかに新製品を期待している気持ちはありありと感じることができた。米国の東と西とでは、同じMac文化でも、やはりかなり違う。

こちらはタンジェリンの展示。まるで宝石を展示しているかのよう
こちらはタンジェリンの展示。まるで宝石を展示しているかのよう



はばたけ、『iBook』! (撮影は林信行氏)
はばたけ、『iBook』! (撮影は林信行氏)



コンベンションセンターの会場内には、例によって、いたるところに“Think Different.”のキャンペーンポスターが張られている。実はこの下に“iMac to go”が隠されていたとは……誰も気がついていなかった。

しかしながら、アップルのいつものごとく、このようなアンベール(unveil)イベントでは、非常にコストを掛けている。たった数時間後に発表する会場なのに、ダミーのバナーをわざわざ前日のセットアップの時から飾っているわけだから……。まだ、ブースには参加者が誰もこなくても、デベロッパーや出展者がブースを見る可能性があるから、前日の仕込みからダミーで仕込むのだ。

“Think Different.”からキーノートが終わると、“iMac to go.”へとバナー類が交換されていた。これもジョブズ氏の美学なのか?
“Think Different.”からキーノートが終わると、“iMac to go.”へとバナー類が交換されていた。これもジョブズ氏の美学なのか?



しかも、キーノートのたった2時間の間に新製品をブースに並べ替え、あちらこちらのバナーやポスターをすべて取り替えるのだ。そこまでして、新製品のアンベールイベントをコントロールするジョブズ氏のプレゼンテーションは完璧であった。

巧妙に仕込まれていたバナー(撮影は林信行氏)
巧妙に仕込まれていたバナー(撮影は林信行氏)



かつて、アップルの新製品情報は業界で、誰もがすべて周知の状態で発表されていた。しかし、ジョブズ体制下になってからは、たとえスペックまで予想できたとしても、価格や最終的な出荷時期までは誰も予測できない状況であり、そのすべてがキーノートで明らかにされる。そして、今回もウェブサイトで全世界にストリーミング放送され、世界中のアップルフリークが、同時にウェブで見守る中、時差も国境もすべてを超越して、コンピューターメーカーの新製品発表にかたずを飲むのであった。これは、もうひとつのメーカーの発表会でなく、宗教もしくは文化に近いといっても過言ではない。

右側にプロフェッショナル向けの“Power”、左側にコンシューマー向けの“i”、上が“Desktop”=“Mac”、下が“Portable”=“Book”。左下の『iBook』が出た(撮影は林信行氏)
右側にプロフェッショナル向けの“Power”、左側にコンシューマー向けの“i”、上が“Desktop”=“Mac”、下が“Portable”=“Book”。左下の『iBook』が出た(撮影は林信行氏)



また、今回、ボクたち業界人にとってこれほど“ホッとした”発表もない。もしも、今回発表されなかったら……いろんな臆測が飛び交っていた。特集ページの空きを何で埋めればいいのだろうか? 表紙の差し換えは間にあうのか? いろんな臆測が、『iBook』の文字を見たとたんに、すべて安堵の気持ちに変わった。

あとは、そのスペック、価格、重量、サイズ、発売時期、キャンペーン、デザイン、そしてプラスアルファ!である。

バッテリーが6時間持つことは、大きなセールスポイントの1つ(撮影は林信行氏)
バッテリーが6時間持つことは、大きなセールスポイントの1つ(撮影は林信行氏)



今回の発表で、デザインの良さはもちろんのこと、価格、発売時期も納得できるものであった。実際に大量に新製品の現物を目撃しただけに、発売時期も予定どおりと考えられる。まだ時間があるだけに、予約状況を参考にしながら、密かにカラーバリエーションを用意し、もう一度驚かすことも十分可能だろう。これも期待したい! しかし、それよりも重要なのが、プラスアルファだ。確かに、iBookキャリングハンドルも大事だろう。6時間バッテリーも重要だ。しかしそんな事ならWindowsのノートでもすぐに実現できる。

しかし今回、新たなモバイルコンピューティングの世界を、アップルはボクたちに示唆してくれた。それは、“AirPort”だ。これは、ワイヤレスモバイル時代の福音の鐘のように頭に鳴り響いた! ルーセントテクノロジーと共同開発された“AirPort”が搭載されたことをボクは非常に評価している。このプラスアルファをアップルがデファクトで考えていることがアップルのアップルたるところだろう。

AirPortSation、299ドル。150フィートの距離、11Mbit/sの通信速度で10台までのiBookをワイヤレスで結ぶことができる
AirPortSation、299ドル。150フィートの距離、11Mbit/sの通信速度で10台までのiBookをワイヤレスで結ぶことができる



iBookには、“AirPort”用のアンテナが、すでに本体内の液晶部分を中心に内蔵されている。これは、今後のモバイルコンピューティングのワイヤレス化に一気に拍車をかけることだろう。カードを99ドルで売るのはアップルのご愛嬌といったところか。AirPort Stationがあるだけで、周辺のiBookがワイヤレスのインターネット環境を享受することができる。従来のPowerBookでも、ルーセントのPCカードで対応できるそうだ。

iBookは、持つ人を選んでしまうコンピューターなのかもしれない。なかなかの“曲面”である
iBookは、持つ人を選んでしまうコンピューターなのかもしれない。なかなかの“曲面”である



大容量バッテリとワイヤレスは、新たなモバイル経験を与えてくれる。PHSや携帯電話で接続するのとは、まったく訳がちがう。無線使用料金を気にしながらのモバイルではなく、距離は限定されるが、本当のモバイルワークが実現できるようになった。
実際にジョブズ氏が見せたような片手で持ったり、フィル・シラー氏が2階から抱いて飛び下りたり--するほどアクティブに使いたいとは思えないが、iBookのハンドルを持って歩く日は待ち通しい。しかし、このiBookは、かなり持ち歩く人を選んでしまうのかもしれない。iBookを販売するパソコン売り場には、姿見の鏡が必要とまではいわないが……。

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