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【WINDOWS WORLD Expo/Tokyo 99 Vol.8】基調講演詳報--Office2000で実現するウェブコラボレーション

1999年06月30日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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WINDOWS WORLD Expo/Tokyo 99は、スティーブン・シノフスキー(Steven Sinofsky)氏による基調講演で幕を開けた。米マイクロソフトの副社長でOfficeグループを統括するシノフスキー氏は、Office2000の発売を目前に控えた今回のWINDOWS WORLD Expoでの講演者としては、絶妙なキャスティングといえるだろう。

午前11時、真っ暗になったステージ上のスクリーンに、大樹をイメージしたビデオが流れはじめた。そして、画面上には“Mother Tree”の文字が。それは、ウェブコラボレーションを実現する次世代のオフィススイート、『Microsoft Office2000』を意味するキーワードである。

ステージ中央には、ひときわ大きく“Office2000”の文字が飾られていた
ステージ中央には、ひときわ大きく“Office2000”の文字が飾られていた



基調講演のタイトルは“Microsoft Office2000 Launch”。内容はその名の通り、7月9日に発売が予定されている『Office2000日本語版』の紹介とデモが中心だ。とりわけ、サブタイトルに“Enabling the Future of Business”とうたっているように、Office2000が備えているビジネス分野向けの機能を、ユーザーに向けて強くアピールするものだった。

米マイクロソフト社のスティーブン・シノフスキー副社長
米マイクロソフト社のスティーブン・シノフスキー副社長



すべてのアプリを搭載した『Office2000 Premium』

シノフスキー氏はまず、年々パソコンの出荷台数が増えていくにつれて、Officeの販売本数も増えていっていると語り、前作のOffice97では5000万本のライセンスが発売されたという数字を紹介した。

またシノフスキー氏は、代々のOfficeがバージョンアップを重ねるにつれてアプリケーション間の連携がシームレスになってきているとし、Office2000では、ウェブを介した連携である“ウェブコラボレーション”が、重要なフィーチャーになっていると語った。

次に、Office2000のラインナップを紹介。ここでアピールしたのが、すべてのアプリケーションを備えた『Office2000 Premium』の存在だ。これは従来からOfficeに用意されていたWordやExcelといったアプリに加え、FrontPageやPublisher、PhotoDrawなどのアプリをフルファンクションで用意しているというもの。ウェブによる有機的な情報共有を可能にするOffice2000においては、ウェブページ製作ツールやグラフィック加工ツールでさえ、オフィススイートの要素として欠かせないというマイクロソフトの主張を体言化したものだ。

Office2000 Premiumには、アプリ以外にも多くのビジネスツールが含まれているという
Office2000 Premiumには、アプリ以外にも多くのビジネスツールが含まれているという



Office2000の売りは“ウェブコラボレーション”

Office2000の開発にあたっては、様々なユーザーからの意見やフィードバックを最重要視したという。それらの要望の中から主だったものとして、次の3点を改善を要する点として取り上げたという。

・ウェブを利用したコラボレーションと情報共有
・強力な分析機能と意思決定支援
・使いやすさと管理しやすさの向上


コラボレーションに関しては、インターネットを共有のワークスペースとして利用するために、Office2000ではHTMLファイルを標準のファイル形式としてサポートしている。また、HTMLの拡張機能であるXMLとCSS2.0もサポートされている。これにより、Office内のどのアプリからもHTML形式でデータを吐き出すことができ、オフィスで作成したファイルをブラウザーで閲覧することが可能になったという。

情報の共有については、ウェブサーバーをファイルサーバーとして利用するという手法を導入。それが、ドキュメントをウェブで扱う“ウェブパブリッシング”だ。たとえば、ウェブサーバーに置かれたデータに変更を加えた場合は、そのデータに関係するスタッフに対し、変更を通知するメールが配信される。このシステムは、各企業における情報システム担当者の約76%から好評を得ているという。

使いやすさに関しては、専門研究組織の“Office ユーザビリティラボ”を設立。マイクロソフトでは日本市場を重要視していることから、米国以外では唯一となるラボを、日本に設立したという。

ここで、ウェブコラボレーションを紹介するデモを行なうため、ステージにはマイクロソフト(株)の古川亨会長と、Office2000プロダクトマネージャの横井伸好氏が登場した。

古川会長(左)と、横井氏。古川氏はいつものように、大きな身振りを交えながら、2000のフィーチャーについて解説した
古川会長(左)と、横井氏。古川氏はいつものように、大きな身振りを交えながら、2000のフィーチャーについて解説した




インターネットで共同作業を行なう“ラウンドトリップ”

古川氏と横井氏の両氏はWord2000とExcel2000を使って、アプリ間のシームレスな連携を披露した。まず、一度に12個までのファイルをクリップボードに貼り付けられる“オフィスクリップボード”機能を利用し、Excelから表とグラフを一度にWordにインポートするというデモを行なった。

続いて、表とグラフが埋め込まれたWordの文書を、ウェブページに変換。ここでは“テーマ”機能を使って、テンプレートを利用したページデザインを行なうことが可能だ。そうやって作成したHTMLファイルは、特にFTPツールを立ち上げなることなく、ワード内の操作だけでウェブサーバーにアップロードすることができる。この自動転送を行なうためには、サーバー側にあらかじめ“オフィスサーバーエクステンション”をインストールしておく必要があるという。

ここで横井氏が紹介したのが、XML技術を応用した“ラウンドトリップ”機能だ。これは、1つのファイルに対して加えられる変更を、複数のユーザーがウェブを介して共有できるというもの。たとえば、サーバー上のファイルをブラウザーで表示し(この時点ではHTMLファイル)、そのファイルに変更を加えて上書きすると、元ファイル(docファイルやxlsファイルなど)にも変更を加え、更新するというもの。

このラウンドトリップ機能を補完するのが、“Web購読”機能と“Webコメント”機能だ。Web購読は、特定のファイルに変更が加えられた場合、その変更をメールで自動通知するというもの。変更のチェックは1日おきにしたり、逐次チェックするようにするなどの設定ができるようになっている。Webコメントは、ブラウザーに表示されたファイルに、“付箋”のようなメッセージを貼りこめるというもの。イメージとしては、稟議書に付箋をつけてまわすのを、ウェブ上でもできるようにしたといった機能だ。

これらの機能を利用することで、「ウェブをコラボレーションスペースとする」(古川氏)ことが可能になるという。

ラウンドトリップ機能を紹介する古川氏の動きは、いつもにも増してダイナミックだった
ラウンドトリップ機能を紹介する古川氏の動きは、いつもにも増してダイナミックだった



情報の交換と共有を円滑に行なう“ナレッジマネジメント”

ここでステージに再登場したシノフスキー氏は、企業内で情報を扱う“ナレッジマネジメント”の現状について説明を行なった。ここでは“ナレッジワーカー”という言葉が使われていたが、これは“情報を交換しながら仕事を進めていく人”くらいの意味。ホワイトカラーの大半は、ナレッジワーカーに属すると言える。

ナレッジワーカーが現在直面している問題としては、未だに会話が最も有効な知識収集手段であること、知識共有を行なう理由が明確にされていないこと、パソコンを使うよりも他人に聞いたほうが早いこと、などが挙げられる。

これらの問題を解決し、情報の交換と共有を円滑に行なうためには、次に挙げる5点が肝要とのことだ。

・HTMLファイルの電子文書を利用した情報の共有
・物理的な距離を越える電子会議の導入
・知的情報の蓄積が目的であるオンライン分析の実施
・Windows CEデバイスなどによる場所を選ばない情報活用
・情報を一元管理する“デジタルダッシュボード”の活用


ここで再度古川氏と横井氏が登壇し、デジタルダッシュボードの紹介を中心に、Office2000とBackOfficeサーバーの連携をデモンストレーションして見せた。


ウェブベースで個人情報を管理する“Outlook Today”

スクリーンに表示されたのは、Outlook2000の画面。HTMLファイルを直接表示できるようになったOutlook2000には、“Outlook Today”という機能が用意されている。これは、その日1日の業務に必要な情報を、ウェブベースで一元管理・表示するというものだ。

Outlook Todayのデスクトップには、その日のスケジュールと、受信メール数や未読メール数が表示されている。それに加え、ほかのOfficeアプリで作成されたファイルを表示したり、インターネットから市況情報や天気予報などを呼び出して表示するなど、ユーザーが必要とする情報をOutlookだけで一覧することができるようになっている。

古川会長のOutlook Todayには、製品の売上を示すグラフが埋め込まれているとか?
古川会長のOutlook Todayには、製品の売上を示すグラフが埋め込まれているとか?



デスクトップはウェブベースで構築されているため、ストリーミングビデオを埋め込むことも可能。また、Excelのピボット機能といった、各アプリ特有の機能を利用することもできる。これらの機能を実現するために、バックエンドにはWindows Media Technologyや、SQLサーバーが使われているという。

また、Outlook TodayはBackOfficeのサイトサーバー機能を利用することで、ログオンするユーザーごとに画面デザインをカスタマイズすることもできるようになっている。

古川氏によれば、Outlook Todayの画面こそがデジタルダッシュボードであり、このデザインやコンセプトは飛行機の計器盤(ダッシュボード)をなぞらって、開発されたという。また古川氏は、高高度を飛ぶ飛行機が、まわりの景色が見えない状態でも計器に頼って飛行できることを例に挙げた。そのこころは、デジタルダッシュボードを使うことで企業内の全社員が情報を共有することができ、ひいては企業の意思決定能力が向上できるのだという。

このデジタルダッシュボードはOffice2000のみならず、Windwos CEデバイスや携帯電話からでさえ、利用することができるとのこと。そうすることで場所に囚われることなく情報を共有でき、ナレッジマネージメントに活用することができるという。

CEデバイスはもちろん、NTTドコモのiモード向けにも、すでにデジタルダッシュボードが開発されていた
CEデバイスはもちろん、NTTドコモのiモード向けにも、すでにデジタルダッシュボードが開発されていた



一太郎のファイルも自動オープン

再度ステージに戻ったシノフシキー氏は、Office2000を導入するメリットとして、コストの削減、特にTCO(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ)の削減にOffice2000が大きく寄与できるとアピールした。

TCOを削減できる理由としてシノフスキー氏が一番に挙げたのが、Office2000はグローバルにコラボレーションを行なうことができるという点だ。

Office2000で提供されるWordやExcelといった各アプリは、基本的に世界共通のexeファイルを1つだけ用意している。それを各国語に対応させるための手法が、インターフェースと言語入力メソッドだけを各国語ごとに用意するというもの。その手法を提供するための手段が、“Windows Installer”だ。

Windows Installerでは、オフィスでインストールされる各アプリ・ツールをツリー状に表示している。インストールの際は、“ネットワークから実行する”“初めて使うときにインストールする”などのオプションが選択できる。

ここで、一太郎のjbwファイルを、Word2000で開くというデモが披露された。これは、Word上にjbwファイルをドラッグ・アンド・ドロップすると、一太郎コンバーターが自動的にインストールされ、ファイルが表示されるというもの。

また、アプリケーションを自動的に修復する機能も紹介された。こちらではwinword.exeをわざと削除した状態で、Wordを立ち上げるというデモを披露。こちらでも、Windows Installerが実行ファイルの損傷を自動的に察知し、即座にwinword.exeをインストールし、何事もなかったかのようにWordを起動させるに至った。

最後のデモは、多言語に対応したインターフェースの切り替え。ステージ上に用意されたパソコンでWord2000日本語版を立ちあげ、そのインターフェースを英語に切り替えて、シノフスキー氏が“寿司”“刺身”といった単語の変換を行なうというものだ。シノフスキー氏は、「この機能が一番気に入っている」とご満悦の様子だった。

壇上に勢ぞろいした3人。古川市がシノフスキー氏に何やら耳打ちする場面も見られた
壇上に勢ぞろいした3人。古川市がシノフスキー氏に何やら耳打ちする場面も見られた



全体的には、英語版のOffice2000で明らかにされた機能を改めて紹介したにすぎない内容ではあったが、初めてOfficeの画面を見る聴衆も多かったためか、デモの際には「ホーッ、ヘーッ」といった、感嘆の声が多く聞かれた。また、やはり企業向けのフィーチャーが多いからか、聴衆の多くはきっちりと背広を着込んでおり、いかにも企業のシステム管理者といった風情の人が目に付いた。

シノフスキー氏は講演の端々で「日本語版の発売は7月9日です!」と発売日をアピールしていた。どうやら、Office2000はマイクロソフトにとって、かなりの自信作に仕上がっているようだ。

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