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【第10回ITRONオープンセミナー Vol.1】TRON協会、μITRON4.0仕様を公開--移植性を重視したリアルタイムカーネル仕様へ

1999年06月30日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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(社)トロン協会ITRON部会は、リアルタイムOSであるITRON(Industrial TRON)の小規模組み込みシステム向けカーネル仕様であるμITORN4.0仕様を第10回ITRONオープンセミナーにおいて発表した。これを受け、μITRON仕様共通規定から仕様の利用条件まで細かく明記した仕様書を、ITRON部会のホームページに掲載し、配布を開始した。

TRON(The Real-Time Operating system Nucleus):東京大学の坂村健教授が'84年に提唱した産学共同プロジェクト。生活環境におけるあらゆる物にマイクロプロセッサーが搭載され、ネットワークによって接続されるコンピュータ体系の構築を目指す。プロジェクトは、パソコン用OS、通信制御や情報処理用端末のOSの標準化といったサブプロジェクトに分かれて進められ、ITRONプロジェクトもその1つ。今回発表されたμITORNは、8bit、16bit、32bitのMCU(Micro Controller Unit)上に実装され、組み込み機器にも広く利用されている

ITRON部会幹事の高田広章氏(豊橋技術科学大学教授
ITRON部会幹事の高田広章氏(豊橋技術科学大学教授

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μITRON仕様のバージョンアップは、実に6年ぶりになる。μITRON4.0の大きな特徴として、ソフトの移植性の向上に力点を置いたことが挙げられる。μITRON4.0仕様全体ではスケーラビリティーを意識し、ライブラリー単位でのタスクの取り外しを可能とするなど、アプリケーションやチップへの実装依存性を高く設定した。その一方でソフトの移植性も意識し、標準的な機能に関しては“スタンダードプロファイル”を新たに策定した。ITRON部会幹事の高田広章氏(豊橋技術大学教授)は、スタンダードプロファイルについて「ソフトウェア部品の移植性を重視するソフトに関しては、スタンダードプロファイルの機能のみを利用して構築することが可能」としている。スタンダードプロファイルでは、タスクなどのカーネルが静的に生成されることになる。

また、別の大きな特徴として、国内の主要自動車メーカーなどで構成されるRTOS(Real Time OS)自動車応用技術委員会が“自動車制御用プロファイル”を策定したことが挙げられる。これは自動車制御を主眼にとらえたもので、スタンダードプロファイルよりも小規模なシステムに対する機能セットとなっている。タイムアウト付きのサービスコール(システムコール)や、待ち状態に入ることのできない“制約”タスクなどが導入されている。高田氏は「μITRONはスケーラビリティーと同時に、システムごとの最適化も進めている。その第1段がこの“自動車制御用プロファイル”である」と語り、今後の展開を示唆している。

セミナーで配布された“μITRON4.0仕様書”。現在のところ書店経由で仕様書を配布する予定はなく、ホームページからダウンロードのみとなっている
セミナーで配布された“μITRON4.0仕様書”。現在のところ書店経由で仕様書を配布する予定はなく、ホームページからダウンロードのみとなっている

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