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閉鎖性を打破することができるか? 高知県の動きに注目!

1999年06月23日 00時00分更新

文● 野々下裕子 younos@pb3.so-net.ne.jp

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6月19日、高知県工業技術センターを会場に開催された、高知インターネットプロジェクト(KIP2)技術セミナーの後半として、同セミナーの最後を締めくくるパネルディスカッションを紹介する。


「閉鎖性のゆえ、力のある者が県外に出てしまう」

司会を務めるのは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)アルコール事業本部の岡林哲夫総務部長。パネリストには、基調講演の講師を務めた国際大学グローコム所長の公文俊平氏をはじめ、以下、高知県産業振興センター・アライアンスセンターの坂本世津夫次長、高知医科大学で医学情報センターの助手である伊勢和宏氏、シティネット高知の代表取締役澤本一哲氏、そしてエムトム代表取締役山本誠氏らと、高知をフィールドに活躍する人たちが並んだ。

パネルディスカッションの司会役を務める岡林氏
パネルディスカッションの司会役を務める岡林氏



「これからは新しい価値をもったお金を作る手もある」と公文氏
「これからは新しい価値をもったお金を作る手もある」と公文氏



まず、この4月に四国銀行からアライアンスセンターへ席を移した坂本氏が、高知の現状分析をした。

「情報が伝わらないことにより横のつながりができず、力があるものは県外へ出てしまう。せっかくの技術力があるのに、ビジネスへの展開といったコーディネート力が足りない。これからはKIP2のような、閉鎖的な性格を打ち破るオープンな仕組みがもっと必要である」――。

地方ビジネスを活性化させるための意見交換

「人とモノと技術。さらには現在と未来までつなぐ役割をアライアンスセンターが担っていきたい」と同センター次長の坂本氏
「人とモノと技術。さらには現在と未来までつなぐ役割をアライアンスセンターが担っていきたい」と同センター次長の坂本氏



ニフティサーブのインターネットビジネスフォーラムシスオペという肩書きを持ち、同じく4月より福岡から高知医科大へと活動のフィールドを移した伊勢氏も、高知に対する客観的な分析から意見を述べた。「せっかくベンチャーを起こしても今の状況ではアドベンチャーとしか言えない。インフラはすでに出来上がりつつあるので、今後は食べることにつながるアプリケーションの開発を、それも高知らしい形で進めていくべき」――。

医療や福祉は高知だけでなく日本にとっての大きな課題と語る伊勢氏
医療や福祉は高知だけでなく日本にとっての大きな課題と語る伊勢氏



4月に高知でベンチャー会社“シティネット高知”を立ち上げたばかりの澤本氏は、伊勢氏と同様、高知の市場は、今まさに食べられるものを探さねばならない状況にあると言う。「KIP2のような産官学協同体もひとつの手段であり、官や学の資源を民が活かしていく道もある」――。

高知の市場は、今まさに食べられるものをと訴えるシティネット高知の澤本氏
高知の市場は、今まさに食べられるものをと訴えるシティネット高知の澤本氏



高知で個人事業を行なっているエムトムの山本氏は、現在、インターネットがビジネスになるのかを見極めている段階だという。だが、それでインキュベーション事業に応募しようと思っても、募集内容からして堅苦しさを感じ、なかなか参入意欲が湧いてこないとも。先の澤本氏も、「たとえ会社を立ち上げても規模が小さいので、大手に太刀打ちできない。そうした仕組みをなんとかしなければ、地域からのビジネスは育たない」と、厳しい意見を述べた。

「まじめに働くフリーター」を目指しているというエムトムの山本氏
「まじめに働くフリーター」を目指しているというエムトムの山本氏



2年前から高知で活動してきた坂本氏は、個のネットワークがいかにビジネスにつながるかを感じたという。そして、次の世代では、高知の得意とする1、2次産業へつなげていくことも大切だとも。

高知の動きに注目――県知事自ら率先して取り組むネットワーク化

高知県では平成9年から“KOCHI 2001 PLAN”がスタートし、今年はその中間期として“高知県情報スーパーハイウェイ”の整備を進めている。県庁LANの整備で職員全員が個人アドレスを持つようになった。中でも一番のヘビーユーザーは橋本大二郎知事だという。トップが率先してネットワーク化に取り組むことが、民間への波及力になる。そのようにして生活にネットワークが浸透することで、これまでにない新しい価値観を生み出すと公文氏は強調する。「これからは技術のレベルよりも、ニーズの応え方に価値観が出てくる」――。

参加者からの「人を動かし、育てる具体的な仕組みはないのか」という質問に対し、坂本氏は「従来型の組織は限界に来ている。これからは個人の行動力をアメーバーのようにフォローし、人、モノ、技術を結びつける仕組みが必要」と、自らがかかわっているアライアンスセンターの役割を説明した。「その人の中には、お年寄や女性も積極的に関わってくるだろう。そういう意味でもこれから高知の動きに注目していきたい」と公文氏がコメント。その後も会場からの質問が続き、セミナー終了後の懇親会までその熱気は続いた。

今回のセミナーはKIP2からKCAN誕生と、その活動を報告するものとなった。正式な発表は10月を控えているというこれらのプロジェクトの今後の動きにも注目したい。

セミナーには80名の参加者が詰め掛けた
セミナーには80名の参加者が詰め掛けた



会場からは県関係者からのコメントもあった
会場からは県関係者からのコメントもあった



公文氏をはじめパネリストからは今後の高知の活性化に向けて多数の意見が飛び出し、セミナー全体を盛り上げた
公文氏をはじめパネリストからは今後の高知の活性化に向けて多数の意見が飛び出し、セミナー全体を盛り上げた



参加者からは「お年寄のメーリングリストを手伝っているが書き込みの多さに驚かされ、これからの福祉の在り方を考えさせられた」との現状報告もあった
参加者からは「お年寄のメーリングリストを手伝っているが書き込みの多さに驚かされ、これからの福祉の在り方を考えさせられた」との現状報告もあった



高知インターネットプロジェクト
 http://www.ee.kochi-ct.ac.jp/kip/

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