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高知に新しい情報資源の活路を開くかーー高知インターネットプロジェクト技術セミナー開催

1999年06月22日 00時00分更新

文● 野々下裕子 younos@pb3.so-net.ne.jp

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6月19日、高知県工業技術センターを会場に、高知インターネットプロジェクト技術セミナーが開催された。高知インターネットプロジェクト(略称:KIP2)は、インターネット関連のベンチャービジネスとなる技術シーズ開拓を目的とする産官学連携のグループで、地域の情報化をテーマに今年1月からスタート。今回のセミナーは、KIP2設立のきっかけとなった、昨年11月のセミナーから数えて第4回目にあたる。ここではその前半を紹介する。

情報通信時代は第3革命期。知の民主主義化も進む

県外から専門家を招いての基調講演では、国際大学グローコム所長の公文俊平氏を講師に迎え、“情報通信革命の最新事情”をテーマに話が進められた。公文氏は、「情報通信時代は第3革命期にあり、IPネットワークでつながれたインターネットが、生活のすべてに入り込みつつある」と言う。「情報化で遅れている地域も、技術で取り戻すチャンスがある。たとえば、ネットワークインフラは光ファイバーでと言われてきたが、無線のような新しい技術が登場し、いかに安く速いインフラを実現するかが勝負となってきた」

さらに、知の民主主義化が進み、これからの市民は、主権・財産権・情報権という3権を主張し始めるとも。そこで流通するのはまさしく情報で、それも行政からのトップダウンではなく、個人が発進するものが中心となると強調した。たとえば、NTT東日本の法人営業部では、各人がホームページを作り、そこで仕事や情報のやりとりを行なおうとしているそうだ。

「こうした流れは、いったん逆流や行き過ぎ、独占といった状況を生み出すかもしれないが、そこから人は名前より縁で情報価値を判断するようになり、*エコモディティーや*エコマネーのような新しい社会形態も生まれてくるだろう」(*公文氏による造語)
 

会場風景
会場風景



3月には全国初の無線LANによる実験ネットワークが完成

続く技術セミナーでは、“無線LANによる地域情報化ネットワークKCANの現状と近未来”と題し、高知高専電気工学科の助教授でKIP2代表の今井一雅氏が講演。現在KIP2で実験中の無線LAN技術と、それを発展させた地域情報化ネットワークKCAN(Kochi City size Area Network)の展望について語った。
 
実験そのものは、地形的に平たんで電波が飛びやすい南国市で始められたが、無線アンテナとコントロールユニットなどの簡単な施設だけで、あっさりとネットワークはつながった。地理的条件もよかったのかスペック以上の距離を結ぶことができ、3月には全国初の無線LANによる実験ネットワークが完成。その後、中継基地は3から20ヵ所に増え、10Mbpsの幹線を運用中だ。「低電力でコストも比較的安くてすむ無線LANの市場はこれからも大きく広がるだろう。それらを高知独自の技術としてKIP2ならびにKCANでの活動を進めていきたい」と今井氏。目的はもちろんビジネス市場の創造だ。

無線LANを使った地域情報化ネットワークについて解説する高知高専の今井助教授
無線LANを使った地域情報化ネットワークについて解説する高知高専の今井助教授


 

この4月にはKIP2から、全国初の無線LANプロバイダー会社“シティネット高知”というベンチャー会社も誕生した。同社代表取締役の澤本一哲氏は、今後の展開として、防災情報ネットワークの開発や、小中学校間の接続などを進めていきたいと言う。すでに、インターネット電話やリモートコントロールカメラといった製品の開発も行なっている。

会場ではシティネット高知が開発中のリモートコントロールカメラシステムのデモも行われた
会場ではシティネット高知が開発中のリモートコントロールカメラシステムのデモも行われた




高知に新しい情報資源の活路を開くか、Harmonizing Area Network=HAN

休憩をはさんだ後半の技術セミナーでは、“高知版地域指向インターネット交換所KPIXについて”、高知工科大学情報システム工学科の菊池豊助教授がプレゼンテーションを行なった。

現在、インターネットの情報はほとんど東京を経由して行なわれている。IX=Internet eXchangeと呼ばれるポイントを地域に作ろうという提案は各地域でもあるが、管理が大変なうえに技術的にも難しい。そこで、地域にコンテンツのキャッシュをため込んで管理を独立させるHarmonizing Area Network=HANを立ち上げては、というのが今回の提案の中身である。「変化に応じて技術を変え、あるいは育んできたインターネットの精神が、高知に新しい活路を開くことを期待したい」と菊池氏。現時点ではアイデア段階だが、実験でビジネスモデルを作ることで、地域の情報資源の活性化を目指す。
 

KPIXについて解説する高知工大の菊池助教授KPIXについて解説する高知工大の菊池助教授

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