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最新のVR技術が集結--“産業用バーチャルリアリティ展”開催

1999年06月17日 00時00分更新

文● 浅野純一

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16日、東京お台場の東京ビッグサイトで“第7回産業用バーチャルリアリティ展”が始まった。このイベントは幅広い用途を狙ったバーチャルリアリティ(VR:仮想現実)技術や製品を紹介するためのもの。主催はリードエグジビションジャパン(株)。

同会場ではCADやCAM、生産・製造システムを扱う“第10回設計・製造ソリューション展”と、機械要素や部品材料を紹介する“第3回機械要素技術展”も併催されており、これら3つのイベントで製造業に対するトータルなソリューションを提案しようという狙いだ。実際の製造プロセスでは、CADやCAMによる設計はもちろん、画面上で部品を組み合わせるだけで、製品を仮想的にテストすることができたり、VR技術を使うことで、手に取って感じることもすでに行なわれている。製品開発の時間短縮や効率アップ、コスト削減に非常に有効な手段となっている。これらは有機的に結びついた技術なのだ。

 データグローブは多くのブースで展示された。写真のようにセンサーがついたものから、生地に縫い込まれたスキン風のものもある
データグローブは多くのブースで展示された。写真のようにセンサーがついたものから、生地に縫い込まれたスキン風のものもある


 小形のジャイロ装置の展示。模型を傾けると取り付けたジャイロが働き、画面上の飛行機がシンクロして動く
小形のジャイロ装置の展示。模型を傾けると取り付けたジャイロが働き、画面上の飛行機がシンクロして動く


とはいえ、VRといえば3DCGをメインに据えたアトラクションとしてのシミュレーターやライドもの、ゴーグルをかけてVR空間へ入り込むなどの応用が思い浮かぶが、会場でも人気を博していたのはこの部類だ。3次元CGを見せることで視覚的にVR空間へ導くゴーグルと、インターフェースとしてVR空間のオブジェクトを動かしたり、触覚をフォースフィードバックするグローブは、たくさんの展示が行なわれた。ゴーグルはより高精細化&軽量化されているし、グローブもゴツゴツしたものではなくスキン感覚のものに進化している。また、従来はRISCワークステーション(WS)で処理されていたものが、IntelベースのNT搭載のWSでも可能になりつつある。会場でもSGI製ビジュアルWSに混ざって安価なシステムが展示されていた。また、川崎重工や富士重工は、トラック運転やクレーン操作のシミュレーターを展示していたが、こうしたVRの民生用途が進む背景には高機能なパソコンの存在がある。このほかに、3次元モニタ(いわゆる立体テレビ)や、立体物をデータ化する3次元スキャナー、6軸の自由度を持つ入力デバイスなどが展示されていた。

 VRは映像だけでなく、サウンド面の取り組みも多い。写真は3次元のサラウンドを生成するための3次元マイク。4方向からの音を同時に録音、プロセッサーで処理を行なう
VRは映像だけでなく、サウンド面の取り組みも多い。写真は3次元のサラウンドを生成するための3次元マイク。4方向からの音を同時に録音、プロセッサーで処理を行なう


 三洋電機のメガネなしで見る3次元モニタ。モニタ前に座った視聴者の位置を検知してモニタ側の液晶シャッターを操作、右目用と左目用の映像を交互に表示する仕組みだ。同社は3Dモニタに従来から力を入れているメーカー
三洋電機のメガネなしで見る3次元モニタ。モニタ前に座った視聴者の位置を検知してモニタ側の液晶シャッターを操作、右目用と左目用の映像を交互に表示する仕組みだ。同社は3Dモニタに従来から力を入れているメーカー


 通常のモニタやテレビに取り付ける液晶シャッター。これと2D-3Dコンバーターを取り付けると立体映像を楽しむことができる。出光興産の展示
通常のモニタやテレビに取り付ける液晶シャッター。これと2D-3Dコンバーターを取り付けると立体映像を楽しむことができる。出光興産の展示


 アクセラレーターカードなどを扱うコマツは、重機メーカーらしくクレーンシミュレーターを展示した
アクセラレーターカードなどを扱うコマツは、重機メーカーらしくクレーンシミュレーターを展示した



 ノーマルなカメラで立体映像を撮影できる3Dアダプターなども展示された
ノーマルなカメラで立体映像を撮影できる3Dアダプターなども展示された



ソフトではソリッドワークス・ジャパンの『SolidWorks』やオートデスクの『AutoCAD2000』などのCADの新製品が発表され、その高機能がアピールされた。インターネット経由でデータチェックができたり、ウェブブラウザー上での表示など、この分野でもインターネット関連の機能が重視されているようだ。

 地図上のセンサーを移動させると、その地形にあった3次元CGも変化するという製品。高さも認識できる
地図上のセンサーを移動させると、その地形にあった3次元CGも変化するという製品。高さも認識できる


 360度に配置されたスピーカーで再現する3次元音響装置
360度に配置されたスピーカーで再現する3次元音響装置




 富士重工のモーションシステム。このベースをもとにライドものを製作する。ラリーの体験シミュレーターが展示されていた
富士重工のモーションシステム。このベースをもとにライドものを製作する。ラリーの体験シミュレーターが展示されていた


 立体物をデータ化する3次元レーザースキャナー。レーザー光でなぞるだけで、画面に映像が現われる
立体物をデータ化する3次元レーザースキャナー。レーザー光でなぞるだけで、画面に映像が現われる


 6軸の自由度を持つ入力デバイス『Phantom』。入力だけでなく、フォースフィードバック機能もあり、触感を体験することもできる。この分野ではメジャーな製品だ
6軸の自由度を持つ入力デバイス『Phantom』。入力だけでなく、フォースフィードバック機能もあり、触感を体験することもできる。この分野ではメジャーな製品だ




 川崎重工の『トラック安全運転教育シミュレータ』。宅配トラックのドライバーを養成するためのもので、駐車や背後確認、道路の走り方などを訓練するもの。教官は仮想の街に駐車ポイントや荷物を届ける家を指定、パソコンの画面上でアクセルやハンドルの扱いをチェックできる。ヤマト運輸と共同で開発したもの
川崎重工の『トラック安全運転教育シミュレータ』。宅配トラックのドライバーを養成するためのもので、駐車や背後確認、道路の走り方などを訓練するもの。教官は仮想の街に駐車ポイントや荷物を届ける家を指定、パソコンの画面上でアクセルやハンドルの扱いをチェックできる。ヤマト運輸と共同で開発したもの



また、併催の設計・製造ソリューション展では、CADやCAMソフトや生産管理関連のシステムが数多く展示された。いかに効率よくスピーディに行なうかがトレンドで、実際にプロトタイプを作る前に画面上でシミュレートするシステムなどが目立った。また手軽に造形ができる光やレーザーを使った造形装置もたくさん展示されていた。

 併催の設計・製造ソリューション展では、AutoCAD2000などの大物CADソフトが展示され、注目を集めた
併催の設計・製造ソリューション展では、AutoCAD2000などの大物CADソフトが展示され、注目を集めた


 ソニーは、デジカメやロボット犬・AIBOなど自社製品の設計に使った自社の3次元CADシステムを展示した
ソニーは、デジカメやロボット犬・AIBOなど自社製品の設計に使った自社の3次元CADシステムを展示した




 粉末を焼き固めて造形する装置。レーザー光を当てると焼結する粉末を焼きながら押し固めるしくみ。さまざまな形状のものが加工できる
粉末を焼き固めて造形する装置。レーザー光を当てると焼結する粉末を焼きながら押し固めるしくみ。さまざまな形状のものが加工できる


なお、このイベントは18日まで開催されている。

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