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「出資者候補を中国まで追い掛けた」――起業家をめざす人たちを応援するCEIN'99開催(前編)

1999年06月16日 00時00分更新

文● 野々下裕子

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11、12日の2日間、大阪市内の関西特許情報センターを会場に、『シビックアントレプレナー国際ネットワークフォーラム'99』(通称CEIN'99)が開催された。今回で3回目を迎えるこのイベントは、これから新たにアントレプレナー(起業家)としての第一歩を踏み出そうという人たちと、それらを応援する人たちの出会いの場として設けられた。今年のテーマは“起業をあと半歩を踏み出すために”。

1日目は、現役アントレプレナーによる貴重な体験談をはじめ、各専門家からのアドバイスを聞く場として、2日目は公募ビジネスプランを元に、事業の実現化をシミュレートする場として、いずれも参加型のプログラムを中心に構成されていた。ここでは第1日目のリポートをお伝えする。

それぞれ興味があるジャンルのシールを名札に貼り、交流のチャンスを設ける。
それぞれ興味があるジャンルのシールを名札に貼り、交流のチャンスを設ける。



開会の挨拶をする実行委員長の石谷操氏。
開会の挨拶をする実行委員長の石谷操氏。



受付には学生の姿も目立った。
受付には学生の姿も目立った。



メンターとの出会いが起業の鍵

初日を飾る基調講演では、(株)リクルートの起業家向け雑誌『アントレ』の野村滋編集長を司会に、サイボウズ(株)の高須賀宣代表取締役と、米国ホットラインインテグレーターの渡辺吉範代表取締役が、それぞれの起業体験を語った。

高須賀氏は松下電工からの社内ベンチャーで企業向け情報共有パッケージソフトを開発、グループソフトウェア会社サイボウズ社を’97年に設立。渡辺氏はシリコンバレー在住で、電子商取引システムのビジネス開発を実行している。
「出資者との出会いはどのようにして?」という野村編集長の質問に対し、高須賀氏は過去の知り合いから協力を得て、渡辺氏は大阪主催のベンチャーフォーラムで講演し、現在の出資者と出会ったと回答。両名ともに共通するのは、出会いの場を作るためにいろいろな場所へ出かけ、自分の夢を語るという点である。特に渡辺氏は「情熱がなければチャンスは得られない。人と人との出会いが不完全さを埋め、刺激につながっていく」と。高須賀氏も「独立心旺盛なだけでも、努力だけでもだめ。共有できる感動を持つ起業家が成功する」と語る。

また、野村氏は以前に取材で出会った、7億円を集めて幼稚園を作ったという主婦の例を紹介。出資者となってくれそうな人を中国まで追い掛け、土地という現物援助を受けた主婦は「起業家にも宝クジ型と貯蓄型がある。私は前者なので出会いは自分で作るしかない」と言い、その行動力に感心させられたという。「日本のエンジェルは米国に比べて信頼重視。金銭的な見返りよりも志を支援するというケースが多い。そうして起業を助ける“メンター”といかに出会えるかが鍵となるだろう」。
 

事業の解説をするサイボウズ(株)の高須賀氏。元々は松下電工の社内ベンチャーから立ち上がった
事業の解説をするサイボウズ(株)の高須賀氏。元々は松下電工の社内ベンチャーから立ち上がった



基調講演のゲストスピーカー。手前からアントレの野村編集長、米国ホットラインインテグレータの渡辺氏、サイボウズの高須賀氏
基調講演のゲストスピーカー。手前からアントレの野村編集長、米国ホットラインインテグレータの渡辺氏、サイボウズの高須賀氏


会場風景
会場風景



討論会と分科会では熱い意見交換も

昼休みを挟んだ後半では、公募されたビジネスプラン2案に対し、マーケティング、弁護士、弁理士、ベンチャーキャピタリストなど、各専門家らが討議するパネルディスカッションが行なわれた。それぞれ提案者から10分のプレゼンテーションをした後、市場性、優位性、発展性など、本物の事業会議さながらにプランが討議されていく。さすがにコメント内容は厳しいものが多かったが、企画の手順や事前調査のポイントなどを専門家がどのような視点から見ているのかがよく分かった。

そのパネルディスカッションでのコメントを元に、その後、各専門家をリーダーにした分科会ゼミナールが行なわれた。マーケティング、法律、人事、資金、環境、インターネットとそれぞれのキーワードに合わせてグループが集まり、1時間にわたって意見交換がなされた。
 

11日のパネルディスカッション1案目の“アクセスポイントを活用した、インターネット情報ダウンロード&アップロード配信サービス関連ビジネス”は、山梨県在住の宗田光一氏によるもの。プレゼンテーションのため本人も来阪した
11日のパネルディスカッション1案目の“アクセスポイントを活用した、インターネット情報ダウンロード&アップロード配信サービス関連ビジネス”は、山梨県在住の宗田光一氏によるもの。プレゼンテーションのため本人も来阪した



11日のパネルディスカッション2案目は関西学院大学総合政策学部の現役大学生の小泉洋平氏による“『環境報告書作成』ビジネスプラン”は、話題の環境ビジネスについて多くの示唆を得られる機会ともなった
11日のパネルディスカッション2案目は関西学院大学総合政策学部の現役大学生の小泉洋平氏による“『環境報告書作成』ビジネスプラン”は、話題の環境ビジネスについて多くの示唆を得られる機会ともなった



パネルディスカッションでは各分野の専門家からそれぞれコメントが寄せられた
パネルディスカッションでは各分野の専門家からそれぞれコメントが寄せられた



ゲストスピーカーが語る“資金調達”

初日最後は、 大阪府立特許情報センターの久保浩三氏、メディアポリス(株)代表取締役の松岡広宣氏、そして(株)グローバル・ベンチャー・キャピタル代表取締役のマイケル・J・コーバー氏をゲストスピーカーに迎え、“資金運用について”三者三様のコメントがなされた。

コーバー氏は資金調達では、技術(開発)、市場、人材という3大リスクのうち、2つ以上を負わないようにすることが大事と言う。また、アメリカでは優先株という形で投資したパーセンテージで投資者に見返りがあるのに対し、日本の行政ベンチャーキャピタルの仕組みが、ただ資金を提供するだけで半分も権利を持っていかれることに疑問があるとも。しかし、それらが日本のベンチャーを支えているのも確かである。その種類については、一冊の本にもまとめきれないほどあると久保氏。

現在、休学中ながら学生起業家である松岡氏も、そうしたベンチャーキャピタルの支援を受けている一人である。「仕組みがあっても動かなければ出会いはない。今回のイベントもそうだが、参加し、踏み出すことが資金調達の一歩でもある」とまとめた。

分科会はそれぞれの部屋に別れた小グループ単位で開かれた
分科会はそれぞれの部屋に別れた小グループ単位で開かれた



“資金運用について”語る手前から大阪府立特許情報センターの久保氏、メディアポリス(株)の松岡氏、そして(株)グローバル・ベンチャー・キャピタルのコーバー氏
“資金運用について”語る手前から大阪府立特許情報センターの久保氏、メディアポリス(株)の松岡氏、そして(株)グローバル・ベンチャー・キャピタルのコーバー氏

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