このページの本文へ

桂文珍氏らが情報通信サービスについて語る--情報通信展'99 記念講演会から

1999年06月07日 00時00分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

任意団体の近畿テレコム懇談会、同じく任意団体の情報通信月間推進協議会が主催し、“情報通信展'99”が開催された。会場は大阪市中央区のOBP(大阪ビジネスパーク)内にあるツイン21ギャラリーで、会期は6月3日から5日の3日間。“見て触れて楽しさみつかる情報通信”をキャッチフレーズに、21の企業・団体が出展した。携帯電話やPHSなどのモバイルツールや、CATVや衛星を使ったインターネットシステム、介護相談システムといった最新の情報技術を紹介していた。

ツイン21ギャラリーで、開会セレモニーが行われた。スーツ姿に混じって、修学旅行中の生徒や教職員の参加も
ツイン21ギャラリーで、開会セレモニーが行われた。スーツ姿に混じって、修学旅行中の生徒や教職員の参加も



モバイルツールやネット通販--情報技術は、確実に生活に浸透しつつある?!

中でも人気が高かったのは、携帯電話関連のブースだ。話題のcdmaOneや、 NTT移動通信網(株)(NTTドコモ)の新サービス“ドッチーモ”などに参加者からの質問があいつぎ、スタッフが忙しそうに応対。また、テレビ電話を使った在宅介護支援システムなど、高齢化社会を見据えた通信技術の利用を提唱していた。

オンラインショッピング体験コースでは、日本上陸が話題となっているAmazon.comをはじめとする通販サイトの画面をデモで紹介。子供を抱えた主婦の来訪も多く、女性ユーザーの関心の高さがうかがえる。

会期は、ちょうど電波利用保護週間(6月1日~10日)にあたり、マスコットの“DENPAくん”もおおはしゃぎ会期は、ちょうど電波利用保護週間(6月1日~10日)にあたり、マスコットの“DENPAくん”もおおはしゃぎ



この催しを記念し、会期初日である6月3日に、3人の講師を招いての記念講演会が開かれた。

開会の挨拶を述べた石原氏開会の挨拶を述べた石原氏



まず冒頭に、主催者を代表して、近畿テレコム懇談会・顧問の石原秀昭氏が開会の挨拶を述べたあと、トップバッターとして壇上に立ったのが、(財)マルチメディア振興センター理事長の森本哲夫氏。

森本氏は、(株)日本サテライトシステムズの取締役会長でもある森本氏は、(株)日本サテライトシステムズの取締役会長でもある



“マルチメディア・シティ”--4年間の成果と課題とは?

同財団では、平成9年7月から、関西文化学研都市“けいはんな”を舞台に、光ファイバーを使った次世代インターネットやテレワークの実験を進めている。森本氏は、アメリカの好景気を情報通信産業が支えている現状について説明した上で、日本ではコンピューターの普及台数が世界第2位であるにもかかわらず、一人当たりに換算すると世界第18位であるという事実を指摘。「日進月歩の技術革新に比べ、実用化への動きは大きく遅れている。そのギャップを埋めるためのアプリケーション開発を、我々が担っている」と述べた。

そして、今求められている“マルチメディア”の条件として、デジタル、インタラクティブ、パーソナルの3つを挙げ、利用者個々のリクエストに応じ、音声や動画といった大きなデータを気軽に送受信できるコンテンツの登場が期待されると力説した。

“けいはんな”の実験では、利用者のデマンドをセンターで収集し、それに応じた情報をバックする“デジタルビデオ・オン・デマンドシステム”を採用。オークションや趣味講座、カラオケなどのエンターテインメント性のあるコンテンツや、地元密着型の情報の充実に力を入れている。

住民の“デマンド情報”に応える、数々のコンテンツを提供。インターネットで家庭生活はどのように変わるのか?住民の“デマンド情報”に応える、数々のコンテンツを提供。インターネットで家庭生活はどのように変わるのか?



現在では、インターネット環境でもほぼ同様のサービスが実現できる状態となったため、来年で実験は終了する。しかし、「インターネットには管理者がいないため、近年増えている薬物の事故や、プライバシー侵害に対応するのが難しい。また、“イライラネット”と揶揄される通信速度の改善も必要」と、いくつかの課題を提示。衛星通信やCATVの採用が進むことで、学校教育や在宅勤務などにも、通信ツールの利活用が広がってくるであろうと展望を語った。

高速インフラとして期待の高まる衛星通信インターネット

NTTサテライトコミュニケーションズ(株)代表取締役副社長である永井裕氏の講演は、森本氏の話を受ける形で始まった。パソコンユーザー数は、国内で1200万人を超え、年内には2000万人にも達するといわれている。そのユーザーたちの最大の悩みは「レスポンスが遅い」こと。動画・音楽などを取り入れたコンテンツを快適に楽しんでもらうためには、高速インフラの整備が急務となろう。

そこで、CATVや、xDSLと並んで注目されているのが“衛星インターネット”である。永井氏は、レスポンスが遅れる原因として、回線が細いことと、伝送量が多いことの2点を挙げ、それらを一挙に解消してしまう衛星通信の仕組みを解説。「まるで空に浮かぶ複数の30Mbpsのイーサーネットが、各家庭に直結しているようだ」と、その魅力を述べた。

永井氏の講演は、衛星インターネットのデモを中心に展開永井氏の講演は、衛星インターネットのデモを中心に展開



すでに140万人の加入者を抱えるというSkyPerfectTVとの連携や、広域なサービスエリア、同報性など、一般回線にはない衛星インターネットの将来性を、デモンストレーションで実証。ストリーミングや、オンライン学習の要素を盛り込んだコンテンツが軽快に動く様子に、場内からは、ためいきまじりの声が上がっていた。

デモンストレーションのため、2台のパソコンを準備
デモンストレーションのため、2台のパソコンを準備





左が衛星回線、右が一般回線。画像や音声の多い“重い”ページほど、スピードに差がでる(上がスタート時で、下が数秒後の表示結果)
左が衛星回線、右が一般回線。画像や音声の多い“重い”ページほど、スピードに差がでる(上がスタート時で、下が数秒後の表示結果)



関西独特のコミュニケーション力で技術を肌になじむ文化へと変えていこう

最後に登場したのは、落語家の桂文珍氏。今春からは慶応大学でも教鞭をとっており、関西・関東の大学生にみる“コミュニケーションの違い”を中心に話が展開していった。

アクションを交えてユーモアたっぷりに講演する桂氏。聴覚障害者のために開いている“字幕寄席”にもパソコンが活躍しているというエピソードも披露したアクションを交えてユーモアたっぷりに講演する桂氏。聴覚障害者のために開いている“字幕寄席”にもパソコンが活躍しているというエピソードも披露した



学生たちのレポートを読み、「最近の若者は、情報をとりこむのは、非常にうまくなっているが、アレンジするのは苦手。断片的には理解できても、体系的にまとめることができないようだ」と分析。しかしながら、関西人ならではの“自分本位”や“共感性”をいかすことができれば、情報産業を肌にあったものへと加工できるのではないかと期待しているという。

「新しい動きが入ってきて、それが本格化するまでの間こそが、落語のネタにできる一番“おいしい”時期。情報産業という新しい文明が、文化として馴染んでいくまでに、関西人らしいコミュニケーションの面白みを発揮して、世界に誇れるものを生み出して行きましょう」と、笑いの中にも課題を込めた内容で、講演を締めくくった。

平日にもかかわらず、会場となったIMPホールはサラリーマンで埋めつくされた。どちらかというと中高年層が目立つ平日にもかかわらず、会場となったIMPホールはサラリーマンで埋めつくされた。どちらかというと中高年層が目立つ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン