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東京地裁、中古ゲームソフトの販売で中古ソフト店勝訴の判決--エニックスは控訴へ

1999年05月27日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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中古ゲームソフト販売店の(株)上昇(カメレオンクラブ)が、(株)エニックスを相手取って提訴していた訴訟の判決が、東京地裁で言い渡された。これは著作権に基づく差止請求権不存在の確認を求めていたもの(平成10年(ワ)22568号)。判決では、上昇の訴えが認められ、エニックスによる中古ソフト販売差し止めの訴えが退けられる結果となった。エニックスはこれを不服とし、東京高裁に控訴する予定。

争点となったゲームソフト2タイトル
争点となったゲームソフト2タイトル



今回係争の対象となったのは、エニックスがプレイステーション用に発売したRPGゲームソフト『スターオーシャン セカンドストーリー』と、同ダンスシミュレーションソフト『バスト ア ムーブ』の2タイトル。

争点はゲームが映画の著作物に該当するか否か

エニックスは中古ソフトの販売業者に対し、中古ソフトの取り扱いについて定めた売買取引契約書を渡していた。内容は、同社の中古ソフトを販売する場合、新作発売の9ヵ月後以降に限ること、かつ売り上げの7パーセントを同社に支払うというもの。原告側がこれを拒否したため、ソフトの出荷が停止されていた。

今回、上昇が提訴した訴訟では、メーカーが中古ソフト販売店に対して、中古ソフトの販売を差し止めるよう請求する権利はないという判断を求めた。

本訴訟の争点は、映像や動画を伴うゲームソフトが著作権法第2条3項の定める“映画の著作物”に当たるか否かという点にある。“映画の著作物”に該当し、かつ、“映画の著作物の著作権者”に認められている許諾料すべて無条件で成立する場合、製作者(エニックス)は著作権法第26条に基づく頒布権を専有し、ゲームソフトの販売について許諾を与える権利を有することになる。

ソフトメーカーは頒布権を前提に中古ソフト業者と交渉

過去、この問題をめぐっては'81年に(株)ナムコの『パックマン』、最近ではコナミ(株)の『ときめきメモリアル』など数タイトルについて法廷で争われている。これらの訴訟では、ゲーム中の映像はあらかじめプログラムによって設定されているもので、映画の著作物に当たるという判断が下され、メーカー側の複製権などの権利が認められている*。

これらの判決を受け、ゲームソフトメーカーはゲームソフトに頒布権が認められるとみなし、それぞれ、中古ソフト販売業者とエニックス同様の契約を交わしているという。

(株)コーエーの『三国志II』のみ、シミュレーションゲームは画像が静止した状態で進行するため、映画の著作物とは認められないという判断が示されている

「最後まで戦う」とエニックス

浜野英夫弁護士(左)とエニックスの福嶋康博代表取締役社長(中央)
浜野英夫弁護士(左)とエニックスの福嶋康博代表取締役社長(中央)



この判決を受け、エニックスと上昇はそれぞれ都内で記者会見を行なった。エニックスの会見において、同社の訴訟代理人を務める浜野英夫弁護士は、「今回の判決では、コントローラーの操作によって決定されるような、プレーごとに映像が異なるゲームソフトは、ゲーム制作者の思想や感情を表わすものとはいえない。すなわち、インタラクティブ性のあるものは同一内容の連続映像が得られる"映画"に当たらないと主張された」とし、著作権法第2条3項の解釈を明らかに誤っていると語る。

エニックスの福嶋康博代表取締役社長は、中古ソフト販売の全面的中止を求めているわけではないとした上で、今回の判決どおり頒布権が認められなければ、新タイトルの開発費が回収できなくなると語った。また、今回の訴訟については、最高裁まで戦うという意志を示した。

ソフトメーカー陣営は一斉に反発

また、エニックスの会見では、権利保護団体の(社)コンピュータソフトウェア著作権法協会、(社)コンピューターエンターテインメントソフトウェア協会、(社)日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会は、連名で判決に対する見解を表明。そのなかで、ゲームメーカーは“映画の著作物”に該当するゲームソフトについて著作権法に基づく頒布権を占有し、販売許諾を与える権利を有すると考えるとした上で、「本訴訟の結果については、不当とも言えるものであって、私たちとしてはこれを認めるわけにはいかない」と強く訴えた。

この判決について、著作権についての著書もある識者は次のようにコメントしている。「判決では“映画の著作物”における頒布権が、(フィルム)配給制度という他の著作物にない映画特有の事情から認められるようになったと明確に述べている。だとすれば、“頒布権を条文に織り込んだ経緯から考えて、配給制度を通じて消費者に伝達されているのではないゲームソフトに、頒布権の考えを適用するのは不適切”とだけ述べればよかったのではないか」

「ゲームソフトが“映画の著作物”に該当するか否かを詳細に検討し、結果として該当しないと結論づけてしまった。このあらずもがなの結論が、膨大な投資を要するところのゲームコンテンツに対するあらゆる方向からの権利侵害を助長することを懸念する」--。

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