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「消防のホースで水は飲めない。我が社が蛇口になる」--富士通グループ内の11番目のベンチャー、コンステラ社長に聞く

1999年04月12日 00時00分更新

文● 聞き手、文:編集部 中野潔

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富士通に、グループ内ベンチャーの仕組みがある。いままで10社が設立され、すべて、3期目で単年度黒字というゴールをクリアした。その11社目が関西ではじめての例として、この2月に旗揚げした。富士通グループのストアオートメーション担当企業にいた吉田耕治氏が率いる株式会社コンステラである。

エンドユーザーの出す商品探しやサービス探しの要求と、店舗、サービス企業側からの情報をマッチングして、エンドユーザーに推薦する。データベース、ポータル、ブラウジング、エージェント、ショッピングモールのちょうど重なったあたりをカバーする。大学ラグビーのナンバーエイトでならしたガッツを、ベンチャー経営にぶつける、吉田社長に聞いた。


星の数ほどある情報を星座にして見せる

--コンステラという社名の由来を教えてください。

「英語に“Constellation”という言葉があります。星座を意味し、また、星をつなげて星座に見たてる作業も、そう呼びます。世界各地の古代の人が、同じ星々を見たはずなのに、それぞれの地域の神話や伝承によって、星座は異なります。インターネット上には、情報が夜空の星のごとく大量にあります。ありすぎて、誰も自分に役立つ情報が見つけられません。そこで、まず、1つ1つスターであるところのお客さんと店とをつないであげる。また、それぞれの人の思い出と希望に添うように、わかりやすい形で星をつないで、自分にとっての星空の姿がつかめるようにしてあげる--。そんな意味を込めました」

--富士通グループにおられたそうですが、いわゆる社内ベンチャーという仕組みで起業されたのですね?

「私は、富士通エスエーシステムズという、富士通グループのストアオートメーション担当企業にいました。富士通グループ内に、社内ベンチャー制度があります。5年ほどの間に、10社が設立され、コンステラが11社目です。関西地区では、はじめてのケースです」

--社内ベンチャーには、甘えが出るといって、批判する人もいます。

「富士通グループに限っていえば、そんな甘えはありません。3期目で単年度黒字、5期目で累積黒字というのが、成功か否かの判断基準です。成功しなければ、富士通は資本を引き揚げます。面倒を見ないので、自己責任で継続するなり、解散するなり、御随意に--というわけです。ところが、いままでの10社とも、この成功基準をクリアしているのです」

--先輩企業全部が成功ということは、審査が相当厳しいということでしょうか。会社設立の構想は、いつごろからあったのですか?

「'95年の秋に、それぞれの家庭の望むテーマの絵本を、ネットワークの中で探して、それぞれの家庭に教えてあげる--といったビジネスができないか、ということで企画が始まりました。バーチャルのショッピングモールが、ごく少数あるだけの時代でした。それから、何段階かの審査を経、'98年末に富士通の秋草社長の最終審査を通って、"99年2月26日の会社設立に、こぎつけたのです」

記者(中野)の感覚でいえば、3年半という準備期間は長すぎる。コンステラの場合、初期の構想が非常に革新的だったので、消えずに済んだが、世の中の半歩先を行く程度のアイデアだと、ビジネスチャンスを失いかねない。半歩先を行く程度でも、スタートダッシュがよければ、株式公開まで持っていけることが、米国では実証されている。


消費者の要望と店舗からの情報を突き合わせて消費者に推薦

--コンステラの提供するサービスの仕組みを説明してください。

「インターネットユーザーに、『コンステラビューワ』という、データベースソフトとブラウザーとを組み合わせたようなソフトを無料で配付します。一方、バーチャルショップでも実際の物理的店舗でもいいのですが、会費を払って会員になってもらった店にも、“店舗版コンステラビューワ”を提供します。店側から、サービスや商品の情報を、店版のビューワーを使って、書き込んでもらいます」

大学ラグビーのナンバーエイトでならしたガッツを、ベンチャー経営にぶつける。「星の数ほどあるインターネット上の情報を結び付けて、エンドユーザーに星座の姿を示す」と吉田社長
大学ラグビーのナンバーエイトでならしたガッツを、ベンチャー経営にぶつける。「星の数ほどあるインターネット上の情報を結び付けて、エンドユーザーに星座の姿を示す」と吉田社長



「エンドユーザーは、自分の欲しい商品やサービスの内容や条件、必要となる日時、自分の記念日などをビューワーを通じて登録します。ビューワーを起動すると、コンステラのサーバーにつながり、ユーザーの条件にあった商品やサービスの情報が取り出されます。これが、ユーザーのローカルのデータベースとして蓄積されます。ちょうど、手帳の末尾に、自分専用の備忘録を作るように、自分の探している店やサービスの一覧表がたまっていくわけです」

--通信費が高くなるのでは、ありませんか?

「専用のビューワーを開発したのは、そこにも関係しているのです。コンステラビューワでは、エンドユーザー用でも店用でも、入力や検索をできるだけスタンドアローンで実行して、本当に必要なときだけインターネットに接続し、ダウンロード、アップロードするようにしています。通信費が安く済むのです」

「ブラウザーで、ウェブウォッチングや、ショッピングモール巡りをすると、時間が掛かりすぎるのです。あるショッピングモールでは、ワインだけで1000件も出てきます。検索サイトを使うともっと大変です。ワインを探しているのに、ワインカラーのポロシャツまで出てきます」

--コンステラがショッピングモールになるのでは、ないのですか?

「ここ当分の間、コンステラは、あくまで、マッチングをとって、エンドユーザーに、あなたの探している商品、サービスがここで提供されていると知らせるだけです。ウェブに誘導する場合もあるし、物理的な店舗の場所と連絡先を知らせる場合もあります」

消防ホースで水を飲む人はいない、水道の蛇口が必要

--現在の、ウェブの世界全体で、情報の供給の仕方に問題があるということですか?

「現在、ポータル層には、新興の検索サイト、パソコン通信、OSメーカーが陣取り、また、放送、電話、アニメ大手などからポータルに参入した勢力も存在します。それでも、寡占化の方向に進んでいます。サービス層には、天気予報、チャット、株価、ショップと、非常に多くのサービスサイトがひしめいています。特にオンラインショッピングに関する情報について、2つの層のギャップを埋めるものがありません。ポータル側からアプローチしても、個々のサービス側からアプローチしても、ともかく情報が絞り切れません。水が飲みたいのは人なのですが、まるで、自分がプールであるかのように消防ホースを口に突きつけられた感じです」

「インターネット自身が好きなわけではなく、ツールとして使いこなしたい人は、ともかく時間に飢えています。この人たちを狙って、コンステラでは、ショッピングポータルのような役を果たしたいと思っています。ただ、ポータルウェブサイトではなく、必要な情報をバッチで送るマイデータベースサービスです」

--必要なものだけ出てくるようにする点に秘訣があるのですか?

「蛇口としては、ビューワがありますね。1日にユーザーに送る情報の件数に上限を設けることもできます。これから、いろいろな形式を作っていきますが、ともかく、コンステラの中の、商品データベース、顧客データベースが、双方のマッチングを実行します。商品データベースですが、契約店舗が店舗用ビューワから入力する方式、他のサイトから変換ツールでコンステラ形式に変換する方式、サイトを持っていない店舗向けにコンステラがデータベース構築を請け負う方式などを、順次追加していくことになるでしょう」

--収益は、どこであげることになるのですか?

「エンドユーザー側からは、まったく費用をもらいません。商品情報、サービス情報を、提供してもらい、コンステラのデータベースに掲載する店舗から、掲載料や配信手数料をいただきます。店舗や他サイトとの連携でいろいろな方式が出てくれば、データベース構築料、広告料、要求マッチングソフトのライセンス料といった形も出てくるでしょう」

--実際のビジネスは、いつから始まるのですか?

「今年の秋からです。まだ、お話できない点も多くて、申し訳ありませんでした。情報発信元の店舗を探してきてくれる代理店が1つ見つかりました。同様の、代理店をさらに募集しています。関西の大学ラグビー1部リーグで、ナンバーエイトだったガッツで、ガンガンやります。期待していてください」

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