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秋葉原がアートの街に、実験的現代美術展“akihabara TV”開催

1999年03月03日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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 ビデオアートの実験的現代美術展“akihabara TV”(秋葉原TV)が2月27日に開幕した。同展は東京・秋葉原の電気街全体を展示会場とし、電気店の店頭にディスプレーされたテレビに、国内外の若手現代美術アーティスト25組のビデオアート作品を上映しようという試み。3月14日まで16日間に渡り秋葉原がアートの街になる。

LAOX本店のSUPER LISAをはじめ、秋葉原の電気店店頭で上映されている“秋葉原TVプログラム”、これは中村政人氏の作品『RGB』
LAOX本店のSUPER LISAをはじめ、秋葉原の電気店店頭で上映されている“秋葉原TVプログラム”、これは中村政人氏の作品『RGB』



秋葉原の電気街に出現したマルチビジョンアート

 秋葉原といえば、派手な電飾や広告、巨大なウォールビジョン、そして店頭のテレビモニターという風景が定着している。これらの映像機器を利用して普段の秋葉原の街にアートを出現させるのが、この秋葉原TV。つまり、店頭にディスプレーされた無数のテレビモニターに、ビデオアート作品を上映しようというのだ。

 先日のMACWORLD Expo/Tokyo '99では、アップルコンピュータ社のSteve Jobs暫定CEOが講演の終盤で49台のiMacを登場させた。このような大量のモニターをディスプレーするマルチビジョンを編み出したのは、韓国の現代美術作家で“ビデオアートの父”とも呼ばれるナム・ジュン・パイク(白南準)。パイクは、そうした手法でテレビへの批判的作品を生み出してきた。

「ただ今、美術作品を上映中です」、身近な言葉を太めのゴシック体で力強くビジュアル化するコトバアーティスト、イチハラヒロコ氏の『美術中。』
「ただ今、美術作品を上映中です」、身近な言葉を太めのゴシック体で力強くビジュアル化するコトバアーティスト、イチハラヒロコ氏の『美術中。』



 しかし、いまやこうしたマルチビジョンや巨大なウォールビジョンは秋葉原や新宿、渋谷の例を挙げるまでもなく私たちの日常に同化しつつある。今回はそうした巨大な装置(ハード)と化した秋葉原の街を使って、装置には手を加えずに作品(ソフト)で街の見方を変えてみよう、というわけである。

 主催のcommand+N(コマンド・エヌ)では、「過去最大の不況下にある消費の最先端で行なわれるパブリックなアートイベントは、経済偏重の社会の未来を“アート”という新しい視点から眺める絶好の機会」とコメントしている。

電気街の至るところで秋葉原TVが楽しめる

 秋葉原TVのハード面に関しては、電気店店舗内の大小モニター・マルチビジョン風のディスプレー・壁掛け液晶テレビ・ウォールビジョンなど、既設の映像機器を活用する。上映場所は30ヵ所ほど。詳細は無料配布されている秋葉原TVガイドマップで確認できる。電気街から徒歩5分ほどのcommand+Nオフィスにおいても秋葉原TVビデオギャラリーが開催されており、上映作品全てを鑑賞することができる


秋葉原TVガイドマップは各電気店の店頭で無料配布されている秋葉原TVガイドマップは各電気店の店頭で無料配布されている



 上映するソフトは、秋葉原をテーマにした1作品60秒以内の短編映像作品を各アーティストに依頼し、秋葉原TVプログラムとして1本にまとめたもの。秋葉原TVプログラムには全作品が収録されており、各上映場所で同じプログラムが放映される。作品はすべて60秒以内で制作されているので、足を止めれば次から次へとさまざまなヴィジュアルイメージがモ二ター内で展開される。

世界中のアーティストを結ぶ合言葉〈秋葉原〉

 本展を主催したcommand+Nは、コンテンポラリーアートに関わる美術家など4人の共有スペース。東京都・上野にギャラリーをかまえるcommand+Nの名前は、Macintoshユーザーならすぐにお気づきと思うが、ショートカットキーの“新規...”に由来する。秋葉原TVに作品を出品しているcommand+Nの中村政人氏もMacintoshユーザーだ。出品作品の『RGB』は、秋葉原電気街の風景を素材にMacintoshを使って加工したものだという。各作家から寄せられた作品の編集には、Power MacintoshとAdobe Premire、ソニーのデジタルビデオデッキや東芝のビデオデッキが使用された。

 command+Nによれば、傾向も年代も国籍も異なる多彩なアーティストの協力を得ることができたのは、彼らをつなぐ〈秋葉原〉というキーワードがあったからとか。作家自身の秋葉原体験から生まれる新鮮なメッセージが、この街を訪れる1人1人にダイレクトに届くのだという。

ベルリンを拠点に活動するカタリナ・コポニー氏による『what comes to yourmind when you think of Japan?』(日本について思い浮かぶことは何?)、街頭インタビューをもとに外国人の日本のイメージを映像化した作品
ベルリンを拠点に活動するカタリナ・コポニー氏による『what comes to yourmind when you think of Japan?』(日本について思い浮かぶことは何?)、街頭インタビューをもとに外国人の日本のイメージを映像化した作品


 command+Nの坂口千秋氏は、「60秒という限られた時間で表現する、ということも作家に意欲を持って作品づくりに取り組んでもらえたと思います」と語っている。また、「電気街振興会をはじめとする各社のバックアップが思っていた以上に受けられました。特に上映各店が大変協力的で理想的な展示状況を作り出せました」としている。

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