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【INTERVIEW】イメージモールジャパン社長小森雅夫氏インタビュー~デジタル資産運営組織とは

1998年12月15日 00時00分更新

文● 報道局 伊藤咲子

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 '98年10月、凸版印刷(株)、(株)日立製作所、(株)朝日新聞の3社は、合弁で(株)イメージモールジャパンを設立した。同社の業務は、美術や写真の預託と運用という2つのフェーズに分けて考えられる。預託とは、美術作品や写真の著作権者、所有者、所蔵者などからその作品や写真を預かること。運用とは、預託を受けた作品の貸し出し業務や著作権処理、代金徴収事務などを遂行することである。今回はイメージモールジャパン社長小森雅夫氏に、ビジネスの成算などについて伺った。

イメージモールジャパン社長、小森雅夫氏
イメージモールジャパン社長、小森雅夫氏




1万数千点をすでにデジタル化

---今年7月の事業設立時に、5年後2002年にコンテンツの保有点数100万点を目指すという発表でしたが、現在どのくらいの数が集まっていますか?

「ウェブに載せられるものが5000点、その前のデータとして蓄積されているものは1万数千点です」

 現在、同社がウェブに掲載している国内美術作品は、徳川美術館所蔵「源氏物語絵巻:柏木(三)」 、写真家西川孟氏による「姫路城」など。海外美術作品は“印象派の絵画ライブラリ”、“イタリア美術ライブラリ”、“ スペイン美術ライブラリ”に分かれ、ゴヤの“着衣のマハ”やマネの“笛吹く少年”など、有名作品も多数含まれている。

---朝日新聞のコンテンツ2次利用は、どこまで進んでいますか。

「朝日新聞社が所蔵している写真は、新聞に掲載されている報道写真と、出版物に掲載されている写真とに区別されます。イメージモールジャパンでは、著作権問題がクリアされている出版物の写真を対象に、リストアップしている段階です。報道写真は朝日新聞社内で、デジタルデータとして管理されています」

 凸版印刷の関連会社の中では、現在デジタルハウスが報道写真を扱っている。設立は'94年で、共同通信、ロイター、毎日新聞などの報道写真を扱い、会員にインターネット経由で販売している。

「朝日新聞の強みとしては、大量の写真を持っていることだけではなく、美術館やその所蔵品に強いスタッフがいるということもあげられます。データベースの作成やデータの2次利用、それぞれの段階でコーディネートが必要になります」


写真資料が大量に死につつある

---写真のデジタル化の需要は、他の出版社にもあると思うのですが、交渉しているところがあったら教えてください

「昨年、平凡社と写真などのデジタルデータ化について交渉を開始しました。写真の点数は20万から100万枚にのぼります」

「出版社は1社で数百万枚単位の写真を持っていますが、資料室や各編集部に散在し整理されていない場合がほとんどです。また管理状況も悪いため退色や劣化が激しく、各社とも悩みの種となっているようです。そのためデジタル化が早急な課題となっており、出版社数社と写真のイメージデータ化について相談を受けています」

 同社は現在、平凡社をはじめ大手出版社数社と交渉中とのこと。その際、膨大なデータ量、カメラマンや美術品所持者との著作権の交渉、デジタルデータの運用方法が問題になる。

---貴社が特にデジタルデータの層を厚くしたい分野はありますか

「日本の美術品や文化財です。現在、京都、奈良、鎌倉の寺社と粘り強く交渉しています。京都・高台寺とは所蔵品の契約が済んでおります。動画は現在、実験段階です」


絵画のデジタル化権の奪い合いは起きるのか

---'98年4月に大日本印刷がフランス国立美術館連合と共同で、国内でRMNが所有する美術品のデジタルデータのライセンス事業を行なうことを発表しましたが、美術品のデジタル化権の取り合いは起きないのですか

「世界的に価値の高い美術品を多く所蔵する美術館が、1民間企業にデジタル化や販売を独占的に許す契約を結ぶことは、まずありません。また、所蔵している国にもよりますが、制作後100年以上が経過している絵画には作品自体には著作権がありません。それら作品のデジタル化にあたっては多くの場合、絵画を撮影したカメラマンとの交渉になります。RMNのほかにも、こうした権利を持つカメラマンは多くいます」

---1つの絵画にたくさんのデジタルデータが存在するなかで、他のデジタルアーカイブの団体とどのように差別化を図りますか

「権利処理の深度、ユーザーが目当ての絵画を探すための検索システム、価格等サービスでしょうね。イメージモールジャパンとしては、さらに凸版印刷、日立製作所が培ってきたイメージデータの色彩の再現性の高さがあげられます」

 日立製作所と凸版印刷は、イメージモールジャパン設立以前にもコンテンツのデジタルデータ化事業をそれぞれ展開している。同社のアプリケーション開発を担当する日立製作所は、Digital Image Systemという高精細画像のデジタル技術を開発、過去に古文書のデジタルデータ化などを行なっている。凸版印刷は前述のデジタルハウスの他、美術写真の検索や版権処理、2次利用などの総合サービスをおこなう“アートモール"という事業部を設立している。コンテンツの収集、マーケティングの経験には定評がある。

---コンテンツの預託、運営業務はどうなっていますか

「基本的にはコンテンツの2次利用を前提に、イメージデータを預けていただいています。具体的には写真展などのイベントや、CD-ROMやカレンダー、ミュージアムショップといった商品の製造が考えられます。美術品デジタル化の権利を獲得し、そのデータを集めて売るだけが、仕事ではありません。こうした企画営業的な活動が、もう1つの仕事です」

 設立されて数ヵ月ということもあり、まだ具体的な大規模プロジェクトは公表されていない。日立製作所、凸版印刷、朝日新聞、この3社の相乗効果はどのようにして現れるのであろうか。

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