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「日本は米国に6~7年遅れている」--“米国コンピュータ教育団体との交流プログラム”

1998年11月19日 00時00分更新

文● 報道局 中野潔

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 (財)コンピュータ教育開発センターは、17日、東京・霞ヶ関ビルで、“第5回 CEC情報交流会”を開催した。16日から20日までのうち4日間に渡って開かれている“米国コンピュータ教育団体との交流プログラム”の一環である。東京で2日間、岐阜県高山市、大阪市で各1日ずつ開かれる。本稿では、17日13:30から14:20までの“新指導要領における情報化について”の内容をお伝えする。

 登壇したのは、東京工業大学大学院 社会理工学研究科長の清水康敬教授。教授は、中学校で2002年度から、高等学校で2003年度から実施される新指導要綱が現在策定されていることに触れた。新指導要綱は、今年度中に大筋が固まる状況ではあるが、まだ審議中であるため、その内容に踏み込むことを避けた。以下は、清水教授の講演の要旨である。発言の中の元号を西暦に改めてある。

高校に『情報』という学科を新設

 「'96年7月、中央教育課程審議会の第1次答申で“生きる力”を中心に据えることが打ち出され、その中で、情報教育について触れられた。'97年10月、(清水教授がかかわっている)情報教育協力者会議の第1次報告書が出た。'98年7月、教育課程審議会の答申、同8月、情報教育協力者会議の最終報告書が出た」

 「最終答申や最終報告書では、“情報化に対応した教育”の中に“情報教育”と“コンピュータやインターネットを活用した効率的な教育”の2つが含まれている」

 編集部注:新指導要領では、高校に『情報』という新しい学科が登場する。“情報教育”が主にこれに相当する。まず、“情報教育”は、コンピューターやインターネットを使った教育のことではない。既存の科目を学ぶ際に、情報機器や教育ソフトやデータベースを用いて効率化をはかるのは“コンピュータやインターネットを活用した効率的な教育”に相当し、“情報教育”と区別されている。


 「情報教育によって培う力は、次の3つに集約して考えられる。(1)情報活用の実践力、(2)情報の科学的理解、(3)情報化社会に参画する態度--である」

 編集部注:実際には、それぞれの力について、10行前後に渡る詳細な説明文章があるのだが、省略する。“情報教育”は、コンピューターやインターネットに関する教育と一部重なるが、同一ではない。上記、(1)から(3)の中では、(2)が、コンピューターやインターネットに関する教育と関係が深い。(1)および(3)には、テレビ、新聞、雑誌、書籍、図書館など既存のメディアや情報収集手段との付き合い方が含まれよう。また、POSや銀行のATMがその典型であるような、社会のすみずみまで浸透した電子的手段の影響に関する考察の仕方も視野に入っているだろう。

 「小学校では新設される『総合的な学習の時間』(中学、高校でも同じ名称の時間が設けられる)の中で、情報教育を教える。中学校では、技術・家庭の中で、情報教育の基礎と、発展的な内容とを学ぶ。高校では、『情報A』、『情報B』、『情報C』の3つの中から1つ以上履修することが必修となる」

 「また、既存の各教科の中で、“情報活用の実践力”を育成してもよい。各教科の学習指導に活用(効率化のツールとしてコンピュータやインターネットを利用)してもよい。また、教員のツールとして活用してもよい」

設備率に大きな差

 「日米間で、学校におけるコンピューターの整備について大きな差がある。学校当たりのパソコンの台数が、日本で21.9台に対し、米国で72台(以下いずれも小、中、高校の平均)。パソコン1台当たりの生徒数が、日本で18.0人に対し、米国で6.3人。インターネットに接続している学校の割合が、日本で18.7パーセントに対し、米国で85パーセント」

 「インターネットへの接続の速度なども大きく異なる。日本では、2001年までにすべての中学、高校を、2003年前にすべての小学校をインターネットにつなげるという。この場合、128kbpsのISDN回線を前提にしている。米国では、2000年までにすべての教育機関と、12歳以上のすべての生徒をインターネットにつなげるという。1.5MbpsのT1回線を前提にしている」

 「学校をインターネットに接続するのに日本で予定している予算は、年間81億円、1校当たり20万3000円。米国で予定している予算が年間22億5000万ドル。また教育機関に対しては、通信料などを20パーセントから90パーセント、割り引くことになっている。こうした施策の差や普及率の差をみると、日本は米国に比べて6~7年程度、遅れている」

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