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コンピューターの遠隔授業、東京都江戸東京博物館から子供たちへ

1998年10月07日 00時00分更新

文● 報道局 横田雅美

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 2日、“社会科共同授業”という触れ込みで小学校の遠隔授業が行なわれた。テーマは“福澤諭吉が目指した新しい日本”。参加した小学校は福岡県福岡市・長尾小学校と大分県中津市・沖代小学校の2校。協力した社会教育施設は、大分県中津市・福澤諭吉記念館と東京都墨田区・東京都江戸東京博物館の2施設。このうち東京都江戸東京博物館を取材したので報告する。なお遠隔授業には、NTT(株)のマルチメディアテレビ会議システム『Phoenix(フェニックス)』が用いられた。

 授業開始前から取材しているが、そうした準備の状況については後述する。

通信技術の未熟さを感じる場面も

 午後3時、江戸東京博物館の多くの館員の見守るなか、緊張した面持ちで遠隔授業は始まった。始まった当初は、緊張した様子であった担当学芸員の田中実穂氏も、子供たちの発表を見て、少しずつではあるが、緊張の糸がほぐれていったように思えた。

 授業はまず、長尾小学校の発表から始まり、続いて沖代小学校の発表に移った。さらに、各小学校が“福澤諭吉”について学んだあとの“分からない点”について、江戸東京博物館と福澤諭吉記念館が答えるという形で進んだ。両小学校から、調査結果が示され、両館の学芸員が当時の社会背景などについて解説した。

 遠隔授業は、接続の準備や、学校側のコンテンツのあり方によっても難しいものである。今回の4ヵ所中継では、音声が途絶えたり、画像が止まったりというハプニングが起こった。また、音声の遅れがあり、1時間という短い授業では、慌ただしさを感じた。

社会教育施設側の負担も大きい

 記者は授業開始前の、準備段階から取材をしている。江戸東京博物館では、授業開始の数時間前から、NTT(株)のマルチメディアテレビ会議システム『Phoenix』の設置に余念がなかった。何度もNTT(株)本社側との双方向中継をし、マイクテストなどのチェックをしていた。

 江戸東京博物館の普及情報課の川口信範氏は、画面を通して同博物館の雰囲気を伝えるために、あえて一般の見学者が訪れる平日を選んだという。このような双方向中継への協力は、初めてで、1時間の授業のために1週間の準備期間を費やした。

 インターネットを利用した遠隔授業は、まだ参加校も少なく、広まるには時間が掛かるだろう。しかし、子供たちにとっては教室で学ぶこと以上のものが、必ず得られると感じた。まず、学習面でいえば、行事で得た知識の方が忘れにくいという事実がある。そして何より、経験として、インターネットで遠くにいる人々と交流ができることを、子供たちが肌で感じられたことが素晴らしいと思った。

 協力施設側のマルチメディアテレビ会議システムの設定が大変であることを痛感した。しかし、このように労力を惜しまず、協力してくれる社会教育施設が増えることを切望した。

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