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「金融サービス法とノンバンク社債法が必要」と竹中平蔵氏

1998年10月07日 00時00分更新

文● 報道局 郷家香織

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 スマートバレー・ジャパンおよび(株)タイム二十四の主催で、情報通信ベンチャー支援の催し“TIME24 VENTURE FESTA98”が6日、7日の2日間に渡り開催されている。事業PRや業容拡大、ベンチャーキャピタリストとの出会いの機会として、昨年は64社の参加と500名以上の見学者のもと、交流を通じていくつかの商談や業務提携が進んだ。

竹中平蔵氏竹中平蔵氏



 慶応義塾大学総合政策学部教授で経済学博士の竹中平蔵氏は、6日の午後に“フロンティア型産業と日本経済”というテーマで講演した。竹中氏は、今の日本の経済、社会システムが非フロンティア型であることに問題があるという。いかに社会のインフラをフロンティア型にしていくかが重要であり、そのために必要な事項4点を挙げた。

 まず第1に、“速さ”である。例えば、Windowsのマーケットシェアが世界の中で98.5パーセントを占められたのは、真先に市場に出されたから、そして、どういう規格、仕様になっているかをオープンにしたからである。Windowsさえ入れておけば、同OSを通してアプリケーションのネットワークの中に入っていける。つまりWindowsというOSは、アプリケーションのネットワークに守られているということである。ネットワークも経済性だから、速く出すことが大切である。従来は“The big eat small”だったが、今は“The first eat slow”という言葉に象徴される。同じようなことを別の言葉で、“The winner takes all”とも言う。

 第2に“競争原理(自己責任の原理)の導入”である。そのためには、自己責任の果たせるような社会のインフラ整備のために、規制緩和とフロンティア産業を支える金融システム作りが挙げられる。

 かつての自動車産業に代表されるようにフロンティアを走れる産業を改めて自分たちの手で作っていく必要がある。しかし日本は、自動車に象徴される生産性の高い産業と農業に象徴される生産性の低い産業との極端な2重構造経済になっている。だからこそ、競争の中から作っていくしかない。

 どこの分野にもフロンティア企業はあり、農業の分野にもある。例えば、種と苗の分野の“タネのサカタ”という会社は、1社で世界全体のパンジーの種の8割、アメリカで使われるブロッコリーの種の7割を供給している。

 このようなことが可能となったのは、初めから世界を相手にしていたからである。日本の米は、規制や保護があったからそうはならなかった。規制を緩和して新しいチャレンジを可能にすべきである。今やマーケットエコノミー人口は55億人である。マーケットというフロンティアには当然競争相手も出てくる。だからこそ、早く始められる規制の緩和と金融の仕組みが必要なのである。

 金融についてだが、まずは税制の問題。フロンティア型では速く走れる人や頑張る人には、それに見合う税制を作らなければならない。行きすぎた累進構造を見直すべきである。現在所得税の最高税率は65パーセントである。これを法人並みの40パーセントにしてはどうかと竹中氏は提言している。次に、起業家には誰かにお金を出してもらわなければならないという問題がある。この問題は社会的な制度として可能にすべきである。このために、投資家を保護する“金融サービス法”(米、英にはすでにある)とノンバンクも社債を発行できる“ノンバンク社債法”を整備すべきだという。

 第3に、“即断即決”である。従来のシステムのように問題を先送りにするのではなく、今の問題を今解決する仕組みにしていくべきである。第4に“ソフトパワー”が挙げられる。一人一人が経済の動きから物事の動き方のメカニズムまで、根本から理解して対応できるようなしたたかな力を身につけていくしかない、そういう広い意味での力をソフトパワーと定義している。

 以上の4点については、個人でも企業でも社会、政治でも心がけることが必要である。ベンチャーを通産省指導で育てるという発想そのものが間違っていると述べ、我々が直面している社会システムの変換は“改革”という言葉ではなく、“体制移行”という言葉に匹敵するものであると竹中氏は語った。

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