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【Key Word Survey】“Webデザイン”は新しいビジネスフィールド

1998年09月14日 00時00分更新

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 この夏、マクロメディア(株)とアドビシステムズ(株)から同じ目的を持ったグラフィックアプリケーションが発売になった。『Macromedia Fireworks』と『Adobe ImageReady』はWebページデザイン専用のグラフィックツールである。いずれもバージョン1.0の製品であり、Webデザインというジャンルが新しいビジネスのフィールドであることを示しているように思う。

 パーソナルコンピュータがデザイナーの仕事の現場欠かせない道具となって久しいが、そのきっかけはいうまでもなくDTP(デスクトップパブリッシング)であった。10年ほど前、日本語によるDTPが我々の前に現れたとき、実際の仕事の現場ではDTPに対する評価は非常に厳しかった。デザインはもちろん、印刷、製版、写植業などの多くの印刷関連業界はコンピュータによるDTPを否定した。彼らのほとんどは口を揃えてこう言った。「こんなオモチャは仕事の現場には使えないよ…」

 あれから数年。印刷の業界にDTPのシステムは欠かせない存在になっている。日本語のDTPは、書体、カラー、コストなどのさまざまな問題を解決してきた。同時にDTPに関連する多くのソフトウェアの進化も見逃せない。ドローソフト、レタッチソフト、レイアウトソフト…。多くの種類のソフトウェアが各社から登場し、良い意味での競争が市場を活性化した。他社にはない便利な機能、他社よりもスピードアップした機能をセールスポイントにしてバージョンアップを重ねてきた。ソフトウェア会社が、これだけ熱心にソフトウェアを育てるということは、DTPという市場がビジネスになり得るものであったからだ。

 デザイン、印刷という業界が、いずれデジタル化されるだろう--そういった市場予測があったから、多くのソフトウエアが生まれ、事実相互作用としてDTP業界は活発になっていった。

 インターネットが我々の生活に関わりはじめて、まだ2~3年ではないだろうか?たった2~3年の間に日本のインターネットは大きく変わった。特にWebページの成長には驚くべきものがある。

 最初のインターネットブームで、好奇心旺盛なユーザーはこぞって個人のホームページをオープンした。多くのユーザーがモニターに向かい、HTMLコードを書き、デザインを始めた。当然ホームページ制作に必要な専用ソフトウェアは発売されておらず、多くのフリーウェアやシェアウェアを使い、また既存のグラフィックソフトウェアをなんとか工夫してWebページのデザインパーツを作ってきた。

 その後、専用のHTMLエディターがソフトウェア会社から発売された。同時にWebページの数も増え続け、多くの企業もWeb制作に感心を持ち始めた。興味深いのはソフトウェアや周辺機器の整備よりも先に市場ができつつあったことである。ある意味でWebはユーザーが作ってきたビジネス市場と言ってもいいだろう。それはインターネットの進化のスピードに大きく関係している。

 『Fireworks』と『ImageReady』はWebページ制作のためのグラフィックソフトウェアである。今までのグラフィックソフトはWebデザインパーツも作れるソフトだった。“Webも作れる”と“Webのための”では全然機能が違う。時期を同じくして2大グラフィックソフト会社が同じ目的の製品を発売したのは興味深い。それはすでにWebデザインがクリエイターにとって“金を稼ぐことのできる市場”として認められてきた証拠ではないだろうか?事実、2年前は、Webデザインはデザイン会社の特殊なメニューであった。企業の発注に応えられないデザイン会社の方が多かった。しかし、これだけ優れたツールが揃った今、「できません」では通らない。Webに対応できないデザイナーは確実にビジネスチャンスを失うだろう。

森川眞行(もりかわまさゆき)氏プロフィール

Silicon Cafe'代表 Webデザイナー
1958年大阪府茨木市生まれ。 1981年、大阪芸術大学を卒業後、グラフィックデザイナーとして職に就く。1993年、シリコンカフェというネーミングで独立。同年関西DTP協会を設立して初代会長に就任。1997年タワーズ株式会社に参加するが98年夏、同社の解散に伴い、再びシリコンカフェとしてデザイナー活動を再開する。

この記事は、「Focussed Series」からもアクセスできます。多彩な筆者の寄稿を収録中です。

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