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【Key Word Survey】デジタル神経系とEビジネスに注目

1998年08月21日 00時00分更新

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デジタル神経系とEビジネスに注目

 デジタル神経系(Digital Nervous System:DNS)とは、ネットワークが社会に普及して、コンピュータ機能が計算の道具から通信のツールへ定着した状態を言う。DNSの概念と意義については、1997年5月8日、世界のトップ企業CEO100人を無料招待して開催した "Microsoft CEO Summit"で、マイクロソフトのCEO兼会長ビル・ゲーツ氏が、基調講演の中で初めて唱えた。同氏は、1998年5月28日の第2回同サミットでも、DNSを主題として基調講演を行なった。急速に技術革新が進行中の米国コンピューター社会で、著名人が、同じ会議で同じ話題を2年続けて基調講演テーマとすることは、異例な(それだけ注目に値する)ことである。

 では、ビルゲーツ氏がそれほどまで強調する DNS とは何か?それは、(1)コンピューティングの高速化、低コスト化、ネットワーク化によって起こる出来事である(2)現在は、国、社会、ビジネス、教育、個人がますますネットワークに依存する時代の到来前夜である(3)ネットワーク時代が現実になると、個人はもちろん社会を構成する各組織の長(リーダー)の役割がきわめて重要になり、ネットワークコンピューティングは、優れたリーダーの下で発達し、そうでないリーダーの下では衰退するか(発達が遅れる)ことになる--という警告を示唆したものである。

 現状、ネットワーク社会では、(1)一人一台へと普及するパソコン、(2)通信手段として日常使用されるeメール、そして(3)その通信網であるインターネット--の3つが世界の標準インフラストラクチャーとなるのは必至である。このインフラを活用して、商品、サービス、事業、プロジェクトなどの開発は、年単位から月単位へと短縮されようとしている。

 そこで、ネットワーク社会(すなわち、DNS)の組織のトップには、ネットワークの(1)Manageability(管理機能)と(2)Scalability (発展機能)を制御する能力--が課せられることになる。特に、DNS の特性である「情報の流れ4原則」を周知しておくことが重要となる。すなわち、(1)ネット上では、悪い情報ほど速く流れる、(2)インターネットがすべての仕組みを変える、(3)ものごとの規範が「顧客中心」主義に変わる、(4)組織(企業)の構成員が情報技術操作の達人(knowledge worker)となる。

 Eビジネスは、ご存知の通り、現在IBMの社是となろうとしている用語である。同社のCEO兼会長のLouis V.Gerstner氏が、この1年あらゆる機会をとらえて強調している近未来のビジネス形態であり、同社の事業展開理念でもある。同氏は、今年のCeBIT(3月ドイツのハノーバーで開催)で、e-businessとdeep computingを2大テーマに基調講演を行なった(因みに、deep computing とは、膨大な情報宝庫から、以前は見出せなかったものごとの相関関係の「知恵」を掘り出すコンピューティング能力を意味する)

 現在、e-businessとは、単なる商品売買の電子化以上にネットワーク化された経済現象へと成長している。すなわち、e-businessは、(1)社内のコミュニケーション、(2)対顧客とのコミュニケーション、(3)政府、教育、医療など多岐の分野のコミュニケーション--へと拡大している。しかも、このコミュニケーションのインフラストラクチャーとなっているのが、1日24時間、1年365日、時空を超えて稼動し続けているインターネットである。

 すでに、世界中の顧客を相手にオンライン書籍販売をしているAmazon.com がe-businessのお手本であるが、そのe-businessは、流通、自動車販売、音楽・エンターテイメント、証券、教育、政府など、急速に他業種へ急速波及している。もはや、e-businessは「観るスポーツ」ではなく「参加するスポーツ」へと大変身している。

 となれば、企業、学校、行政のトップは、みな、パイロットWebサイトを立ち上げ、e-business戦略を練り、次の事項を自問自答すべきときが到来している。すなわち、(1)ネットワーク化された世界によって、ウチはどんな影響を受けるか、(2)ウチは、ネットワーク社会の(どんな)脅威に晒されているか、(3)この新しいネットワーク化されたメディアを、どのようにウチの事業に有利に取組み活用していくべきか。

内田 登美雄氏のプロフィール

 1970年代より四半世紀日米を往復し、シリコンバレーウオッチングを中心に米国の新興ベンチャー、新興市場の胎動を執筆、講演活動を続けている。現在の関心テーマは(1)インターネットが世界を変える(Internet Changing the World)、(2)女性と子供が躍進するインターネット利用(Women and Children Going Online)、(3)自宅がビジネスの発信基地(Working fromHome)など。日米のコンピュータ関連の出版社、市場調査、コンサルタント企業に勤務。上智大学外国語学部英語科卒(1967年)。

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