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【Company Survey】グラフィックソフトをメールにしたコラボ

1998年08月20日 00時00分更新

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 『PinkRabbit』は、まったく新しいマルチメディアメールソフトである。

 “WebからMailへ”という昨年来の動きが、今年になっていよいよ本格化し、インターネットといえば、すでにWebではなくMailのこととなっている。コンピューター雑誌の編集部に聞いても、今年になってから売れ筋は“メールの特集”というのが常識になっている。

 そうした状況の中で、さまざまなメールソフトの開発が進んでいる。大手プロバイダーや、コンテンツを扱う企業には、頻繁にメールソフトの売り込みが訪れるという。しかし、大半が『PostPet』の亜流であるとのことだ。キャラクターを変えただけのポスペもどきでは、もはや、新鮮さはない。

 PinkRabbitの何が新しいかというと、これは、多くのメールソフト開発者が追求している視点とは別な発想で作られているからである。インターネットは、HTMLという共通の言語体系を持つことによって発展した。だから、技術者のほとんどには、「インターネット上のメールとは、こういうもの」という既成概念がある。例えば、マルチメディアメールの多くがHTMLメールであったり、画像の圧縮率を追求しただけの添付書類であったりする。いわゆる“インターネットの標準”というものが前提にあって、それに準じて開発競争をしているのである。

 しかし、PinkRabbitの開発基盤は、そこにはない。このメールソフトのエンジンは、実はメールではなく、グラフィックソフトである。グラフイックソフトとして完璧なものを作り、それをインターネットプロトコルにのせたのである。だからもHTMLも何も関係ない。このアプリケーションをお互い持っていれば、それだけで完璧なグラフィック画像の交換ができる。

 PinkRabbitの事業主体は(株)コラボ(代表小林裕子氏)であり、すでにペータ版フリータイプの配布が開始されている。正式版は、10月を予定しているが、もちろんフリーダウンロードが可能であり、バージョンアップも着実に行われている。メールというのは、単独で利用するものではなく、伝えるべき他者の存在が必要となる。そのためにメールアプリケーションは、フリータイプという誰もが入手しやすい方法で配布し、その上で、企業やキャラクター会社が、PinkRabbit仕様の便せんやスタンプを作りたい時は、制作料金をいただく、というビジネス構造だ。フリータイプの他に、企業別にカスマイズされたPinkRabbitも登場の予定だ。

 PinkRabbitプロジェクトの中で、実際に開発業務を担っているのは、(株)ガオ(代表照井俊光氏)である。ガオは、'80年代の初期より、ハイテクシーンの総合的な企画、開発を行ってきた。'80年代中期には、ソニーや松下電器産業などのメーカーと独創的なコンシューマー向けソフトを作ってきた。PinkRabbitは、実際使ってみると分かるが、ワープロとしてもグラフィックソフトとしても、高いレベルの仕上がりになっているが、こうした過去の経験が生かされているからであろう。

 今年度末の注目すべきベンチャー企業は(株)コラボが大本命であり、年末のクリスマスカードから、年賀状まで、昨年までのWebメールの時代は終わり、今年からはPinkRabbit仕様のものが、多く流通するだろう。

・『PinkRabbit』のサイトでダウンロードできる
 http://prabbit.colabo.co.jp/
・PinkRabbitの概要については本紙サイトでも紹介されている
 http://www.ascii.co.jp/ascii24/issue/980812/soft02.html

橘川 幸夫(きつかわ ゆきお)氏プロフィール

1950年、東京都出身
(株)デジタル・メディア研究所 代表取締役所長、(株)メタ・ブレーン 取締役出版事業部長、(株)マジック・ポイント 代表取締役社長

この記事は、「Focussed Series」からもアクセスできます。多彩な筆者の寄稿を収録中です。

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