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【Contents Survey】Webとのリンクで成長を続けるCD-ROM百科事典

1998年08月14日 00時00分更新

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 CD-ROMが登場した当初から、辞書や辞典などは有力なコンテンツだった。紙に印刷された辞書は重くなるし、頻繁に更新ができない。関連する項目を探すのにも手間がかかる。大百科事典になると本編1冊分の索引が付いてくる。CD-ROMであれば軽いし、場所もとらない。それに様々なキーワードでのクロス検索はコンピュータの得意とするところだ。現在では国語辞書、英和辞書、和英辞書、用語辞典、百科事典など様々な辞書・辞典がCD-ROMで販売されている。

 こうしたCD-ROM辞書・辞典だが、最近の傾向としてはWebとの連動という動きがある。CD-ROMの閲覧画面からボタンをクリックすることで、関連するWebにジャンプするというもの。製作コストの面からいっても、辞書・辞典の一項目にさける情報量は自ずと制約がある。これを補うために無限大に広がるWebサイトとリンクしようというものだ。この機能を本格的に取り入れたのは、日本では97年秋に発売されたマイクロソフトの「Encarta Encyclopedia 98」からだろう。これに対抗し、98年冬に発売された日立デジタル平凡社の「マイペディア98」もWebリンク機能を搭載した。実をいうと、筆者の会社はマイペディア98のWebリンク作成に関わっている。そこで、手前味噌になってしまうが、このマイペディア98 Webリンクについてどのようなものか紹介していこう。

 マイペディア98には「哲学・思想」「音楽」「からだとこころ」「スポーツ・娯楽」「地球・宇宙」など20項目に分かれた約6万3000項目が掲載されている。閲覧画面に「Webリンク一覧」というメニューがあり、選択するとWebブラウザが起動し、日立デジタル平凡社のリンクページにアクセスする。このページには該当する項目のハイパーリンクとリンク先の紹介が表示されており、実際のWebサイトにジャンプできる。1998年8月12日現在、Webリンクがあるのは3001件だけだが、2ヶ月に500項目のペースで追加している。あるキーワードを入れて検索すれば該当するWebページが一覧表示され、クリックすればジャンプする。これはサーチエンジンと同じとも言える。

 それでは、このマイペディアのWebリンクと一般的なサーチエンジンとはどう違うのだろうか。マイペディアのWebリンク一覧で表示されるハイパーリンクは1項目あたり多くても5件程度、ほとんどは1件か2件しかない。一方、サーチエンジンでは数百、数千件がヒットすることも珍しくはない。つまり、マイペディアWebリンクは厳選されたガイドブックなのである。サーチエンジンはイエローページというところか。イエローページにはほぼすべてのお店の電話番号が載っているけれども、それから目的の店を探し出すのは難しい。ガイドブックは著者の主観によって選ばれた店だけが載っている。その著者が信用できれば、ガイドブックは大いに役に立つ。

 もっとも実際にエルデでやっている作業というのはサーチエンジンの検索結果をしらみつぶしにアクセスしていく、ということである。その中から「マイペディアお勧めのリンク」にふさわしいと判断したWebサイトをリストにまとめる。これはある意味でもう一冊のマイペディアを編集し、構築するのと同じことである。もちろん、最終的に日立デジタル平凡社のWebリンク一覧に掲載するのはマイペディア編集部の判断である。おそらく、Encartaでも他のWeb連携CD-ROM百科事典でも同じような作業をやっているのだろう。これだけは、いくらサーチエンジンの機能が進化しても機械化できない部分であるからだ。

 ところで、各担当記者からあがってくるリストにしたがってアクセスしたり、それ以上に調査中に問い合わせを受けてアクセスしていくうちに、すっかり雑学王になってしまった。そして、世の中には「こんな項目のWebサイトはないだろう」という項目のWebサイトを作っている人が大勢いることも分かった。ただ、欧米のWebサイトと比べて日本のWebサイトの情報がまだまだ不十分であることも歴然とした。コンピュータ関連や趣味的なもの、現在進行形の社会問題についてのWebサイトは多いのだが、文科系や社会系は概して弱い。理科系でも学術的な内容となるとけっこうお寒い。項目が見当たらないか、ヒットしても講義のシラバスや古書店のカタログに名前が出ているだけ、ということに何度となく遭遇した。

 いずれは、すべてがネットワーク上に統合され、CD~ROMなどの形態での辞書というのは消滅していくのかもしれない。だが、しばらくはCD-ROM(DVDを含む)というメディアは必要だし、その限界を拡張する過渡的な存在としてWebリンクは存在するのだろう。

・日立デジタル平凡社
 http://www.hdh.co.jp/
・マイクロソフトEncarta
 http://www.microsoft.com/japan/products/prodref/494_ov.htm

土屋勝(つちやまさる)氏プロフィール

(株)エルデ代表取締役。1993年ごろから慶応義塾大学文学部のインターネット共同実験に参画。1995年春には専用線接続を開始。「Windows 98リファレンスブック」(アスキー)、「Word 98リファレンスブック」(アスキー)、「インターネットの疑問Q&A」(オーム社)など著書多数。

この記事は、「Focussed Series」からもアクセスできます。多彩な筆者の寄稿を収録中です。

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