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【Key Word Survey】製品の使いやすさの尺度、ユーザビリティー評価(usability evaluation)が市場拡大の鍵

1998年08月14日 00時00分更新

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製品の使い勝手を総合的に評価

 ソフトウェアやハードウェアのヒューマンインタフェースを、利用者の視点から評価する尺度。日本語に直訳すれば「使い勝手の評価」である。アイコンやボタンの形、表示位置などに加え、全体的なボタンの数(シンプルなほど使いやすい)や、操作ガイダンスのメッセージ、マニュアルのわかりやすさなど、総合的に製品の使い勝手を評価するときに使われる。

従来のユーザビリティー評価手法

 これまでも、製品の使いやすさを向上させるという観点で、さまざまな評価手法が用いられてきた。

・グループインタビュー:主に製品の企画段階で、既存の類似製品のユーザー数名を集め、使用上の問題点や満足度を調査するもの。

・ユーザーサポート記録の分析:ハードウェアメーカーやソフトウェア開発元の多くはユーザーサポート窓口を設置しているが、ここに寄せられた問い合わせやクレームの記録を分析して、次期製品やバージョンアップの参考にするもの。

・ピアレビュー:設計や仕様検討の段階で、性能や使いやすさの向上を目的として関係部門や同僚が評価するもの。

・ベータテスト:ベータ版(正式出荷の前段階の試作版)を一部のユーザーや協力企業に配布し、問題点を指摘してもらうことにより、最終製品の品質向上に役立てるもの。主にソフトウェアの分野で採用されてきた。

実際のユーザーによる操作状況を観察する、ユーザビリティーテスト

 最近になって注目を集めてきたユーザビリティの評価手法に「ユーザビリティーテスト」がある。「プロトコルテスト」、「オープン・ザ・ボックス・テスト」など別の名前で呼ばれることもあるが、このテストは、製品のターゲットユーザーに実際に操作してもらい、その様子を克明に観察、記録することで、専門家の見落としがちな問題点を発見し、根本的な製品の改善に役立てることを目的としたものだ。

 このテスト手法が広まってきたのは、Windows 95の発売以降、専門的な知識を持たないユーザーが急激に増えたことが背景にある。下世話な言い方をすれば「素人の考えることは専門家には計り知れない。だとすれば、直接素人から学ぼう」ということなのだ。

 ユーザビリティーテストでは、数名の被験者を集め、同じ作業を一人ずつ行ってもらい、その課程で、どこで迷うか、うまく操作できない原因がどこにあるかを観察する。テストのために、被験者と観察者を仕切るマジックミラーやビデオ撮影装置などを備えた、専門の施設(ユーザビリティーテストラボ)が用意されることもある。

ユーザビリティー向上には、マニュアル改善が不可欠

 筆者は、最近の2年間に、パソコンから健康機器にいたるまで、多様な製品について合計20回近くのユーザビリティーテストを経験した。その結果、テストのたびに、さまざまなマニュアルの問題が明らかになってきた。説明文に使われている用語が理解できない、次に何をすればよいのかわからない、間違えたときの対処方法が探せない、いま行ったばかりの操作が何の役に立つか理解できない、といった現象は、製品自体というよりもマニュアルに起因する問題であることが多いのである。逆に言えば、製品自体のヒューマンインターフェースに改善の余地がある場合でも、マニュアルが上手にユーザーを誘導していれば、初心者ユーザーの場合、大きなストレスを感じることなく製品を利用してくれるということもわかってきた。

 製品のヒューマンインタフェースを検討するときに、それを説明するマニュアルの品質も同時に見直していかなければ、最終的なユーザーの満足は得られない。

雨宮拓(あめみやひらく)氏プロフィール

個人事務所オフィス・スクリプタ代表。マニュアル制作会社勤務を経て、1994年より独立し、オフィス・スクリプタを主宰。テクニカルライターとして、パソコン分野を中心とするマニュアルを執筆しつつ、マニュアル制作、教育ソフトの開発、製品のユーザビリティ改善をテーマとするコンサルティング活動を展開。

この記事は、「Focussed Series」からもアクセスできます。多彩な筆者の寄稿を収録中です。

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