このページの本文へ

【Key Word Survey】プラグインなしでマルチメディア配信を実現 イスラエルの注目技術“Emblaze”

1998年08月10日 00時00分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷


 最近、日本のハイテク産業は本当に元気がない。一方、米国のほうもかつての勢いはなく、どちらかというと雲行きがあやしくなっている状況である。そんな中、世界で今、一番元気がいいのはイスラエルであろう。

 インターネット関連で「これはすごい」というような技術が、イスラエルからどんどん出てきているのだ。とりわけ強いのは、データ圧縮とセキュリティーの分野で、いずれもイスラエルの高度な軍事技術を背景にしているため、そう簡単に他国のハイテク企業が太刀打ちできないころが強みになっている。

 そんなイスラエルのハイテクベンチャーのひとつにGEOという会社がある。私が今、最も注目しているのは、このGEOのEmblazeという製品だ。

GEO本社受付
GEO本社受付



 ご存じのとおり、現在インターネットを通じて音声や動画、そしてインタラクティブ性のあるマルチメディアコンテンツを配信しようとすると、プラグインが必要、専用サーバーが必要というのが常識である。代表的なのは、MacromediaのShockwave、Flashであり、Real NetworksのRealplayerであろう。

 Emblazeはこうした常識を打ち破って、プラグインなし、サーバーなしにインターネット上でマルチメディアを実現する、ひとつの突破口を開いたのである。 プラグインがいらないのは、EmblazeがJavaで開発されているからである。これまでネットサーフィンをしていて、「プラグインがないから駄目」、あるいは「プラグインがあってもバージョンが古いから駄目」という経験をしたことのない人はいないであろう。これは大変なストレスである。



 Emblazeは、プラグインなしにオーディオ、ビデオ、インタラクティブコンテンツを配信できるので、「誰に」対しても配信できることはもちろん、「どこでも」、すなわちセキュリティーの都合上、プラグインを通さないよう設定された企業内ネットワークの環境に対しても配信できるわけである。これは特に、インターネットでCFやプロモーションビデオを流したい企業にとって朗報で、米国ではすでにディズニーやナイキ、MTVをはじめ、たくさんの企業がEmblazeを採用し始めているのだ。

 Emblazeはまた、専用サーバーなしにホ-ムペ-ジからオーディオやビデオのストリーミング配信を可能にした。これによって、たとえば個人のホ-ムペ-ジに、家庭用ビデオカメラで撮影した子供の運動会の映像をアップして世界中に向けて配信する、といったことも手軽にできるようになったわけである。

 そして、Emblazeが何より優れているのはその圧縮技術である。JPEGの静止画であれば最大4分の1、オーディオデータなら最大40分の1、そしてビデオデータに至っては最大200分の1に圧縮することができる。

 Emblazeのラインナップは現在5製品で、その内訳は、静止画データを圧縮するEmblaze WebCharger、オーディオデータを圧縮するEmblaze Audio、ビデオデータを圧縮するEmblaze Video、ノンプログラミングでインタラクティブなイメージマップを作成できるEmblaze HotSpots、アニメーション、ゲームをはじめインターネットを通じて配信するマルチメディアコンテンツを開発できるEmblaze Creatorである。

 いずれも日本語版が発売されており、ホ-ムペ-ジ(http://www.jp.emblaze.com)にはEmblazeの各製品を使ったサンプルがアップされている。製品の体験版をダウンロードすることも可能である。

 GEOは、引き続きインターネットライブ放送技術のEnblaze LiveFeedや、3D技術のEmblaze 3Dを開発中で、年内にはリリース予定である。 将来このEmblazeが、マルチメディアコンテンツの配信技術としてグローバルスタンダードになるかどうか、それは私にも断言はできない。しかし、間違いなく言えるのは、マルチメディアの将来展望は「この先にある」ということである。

Emblaze 3Dのデモンストレーション。この画像は本邦初公開である
Emblaze 3Dのデモンストレーション。この画像は本邦初公開である



・GEO Interactive
http://www.emblaze.com/

高木 利弘(たかぎとしひろ)氏プロフィール

株式会社クリエイシオン代表取締役。マルチメディア・プロデューサー。一般誌でライター、編集者などを経験。「MACLIFE」編集長を経て、1996年6月、独立して(株)クリエイシオンを中心に活動を開始。パブリッシャーとしての経験を生かして、インターネット、マルチメディア関連のコンサルティング、プロデュース、セミナー、執筆活動を行なう。

この記事は、「Focussed Series」からもアクセスできます。多彩な筆者の寄稿を収録中です。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン