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【RoboCup-98】“RobCup-98 ジャパンオープン”が開幕

1998年04月09日 00時00分更新

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 (社)人工知能学会、RoboCup日本委員会などが主催する“RobCup-98 ジャパンオープン”が本日開幕、東京・青山TEPIAにて11日まで開催される。ロボットによるサッカーを競うRoboCupは、第1回大会が、昨年名古屋で開催され、今年は7月4~9日の日程でフランス・パリのラ・ヴィレット科学産業シティで開催される。



 “RobCup-98 ジャパンオープン”は、RoboCup-98に参加を予定している日本の各チームが実際に対戦を行なうイベント。ソフト上でサッカーを行なうシミュレーションリーグに11チーム、実機リーグの小型部門に4チーム、中型部門に3チームが参加、それぞれの予選が行なわれた。これらの試合の決勝戦は11日に行なわれる。

・実機リーグ 小型部門

 ロボットの大きさは、円形ならば直径15センチまで、箱形ならば縦18センチ、横10センチまでとなっており、高さ、重さは自由。卓球台を競技場として使用し周囲に白い壁が立てられる。また、ボールはオレンジ色のゴルフボールを使用する。1チームは5台以内。

 RoboCupでは、ロボットを人が操作するのではなく、コンピューターのプログラムによってロボットを操作し、競技を行なわなければならない。小型部門では、“グローバルビジョンシステム”(上方につり下げられたカメラで競技場の全体を把握し、それをもとにロボットを操作する)が認められている。ただし、グローバルビジョンシステムを採用しなくてもよい。また、ロボット自体に、プログラムを搭載してもよいし、コンピューターからの指示を電波でロボットに伝えるというシステムを採用してもよい。試合時間は、前半10分、後半10分の計20分。



 第1試合は、奈良先端科学技術大学院大学の“RoboCup-NAIST”(写真手前)対、ソニーコンピューターサイエンス研究所、東京大学などが作った“J-star-98”(写真奥)。“J-star-98”は、グローバルビジョンシステムを採用し、天井からの映像をもとにコンピューターがロボットへの指示を無線で発信する。また、“RoboCup-NAIST”はロボットに搭載したカメラで見た映像をもとに、指示を出すシステムを採用している。

 さて、いざ試合が開始すると、両チームのロボットは、ボールがない方向に動き出したり、ボールの脇でグルグルと回転したり、ロボット同士で押し合ったりと、とてもサッカーの試合をしているとは言えない状態。RoboCupの特別ルールで、膠着状態に陥ったら、ボールの位置を動かしたり、経過時間はそのままで最初からやり直したりもできるが、何度やっても、状況は変わらない。これは、ロボットや天井のカメラがボールを認識できていないことや、カメラがボールを認識していても、ロボットが指示をちゃんと受信できていないために、誤作動を起こしているのが原因という。競技場は、電波や照明の状態が悪く、環境の安定した実験室のように、うまく作動しないという。結局、この試合は両者無得点のまま引き分けとなった。



 第2試合は、個人参加の“Fukui Football Club”(写真)対、“宇都宮・東京大学連合”。“Fukui Football Club”は、マイクロマウス(2つの車輪で走る自立型の小型ロボットで、迷路を早く解決する競技やレースなどを競う大会が、(財)ニューテクノロジー振興財団の主催で毎年開かれている)のマニアだった福島紀行さんと井藤功久さんが、「みなさんの胸を借りるつもりで参加した」というだけあって、かたちの異なるマイクロマウス3体が、それぞれ独自の判断で動くというチーム。試合結果は、“宇都宮・東京大学連合”が“Fukui Football Club”のロボットごとボールをゴールに押し込んで1勝をあげた。

・実機リーグ 中型部門

 ロボットの大きさは、円形ならば直径45センチまで、箱形ならば縦横45センチまで、高さと重さは自由。競技場の大きさは、小型部門の3倍以上、周囲に白い壁が立てられる。また、ボールは、本来は5人でプレイするミニサッカー“フットサル”用のサッカーボールに似た模様の入ったボールを使用するが、それを認識するには、「あと数年かかる」ため、オレンジ色にぬったバレーボールを使用今回はしようしている。

 中型部門では、グローバルビジョンシステムは使用できないので、ロボットに搭載したカメラでボールを認識して、各ロボットを動作させなければならない。



 本日行なわれた試合は、奈良先端科学技術大学院大学の“RoboCup-NAIST”対、大阪大学の“Trackies”。大阪大学は、昨年のRoboCup名古屋大会で、「ロボットが何度も火を噴いたにもかかわらず」優勝したチームで、真ん中のロボットは、「無線による指示を必要としない完全に自立したロボット」という。



 また、“RoboCup-NAIST”は、(株)東芝の『Libretto60』と『同100』を背中に積んだロボットで、市販されている部品を中心に作ったため、「1台60万円程度で作成できた」という。同試合は、結局両者無得点のまま引き分けに終わった。

・シミュレーション部門

 シミュレーション部門は、通産省工業技術院電子総合研究所が開発した“サッカーサーバ”というサッカーシミュレーションシステム上で動作するサッカープログラムで試合が行なわれる。1チームは1~11人で構成され、手がないのでゴールキーパーは存在しない。選手は一定の持久力を持っているが、走ると減少する。また、競技場内の距離で50メートル以内ならば他の選手にメッセージを送ることも可能。試合時間は、前半5分、後半5分の計10分。



 今回の参加チームは11グループ、12チームで、A、B両リーグに分けてリーグ戦を行ない、各リーグの上位3チームで決勝リーグが行なわれる。試合は、ディスプレー上に表示されるが、赤と黄色の両チームの選手が、白いボールを追いかける様子は、小さい虫が動き回っているようで、ちょっとユーモラス。不完全なプログラムが多いのか、ボールに近づいたプレイヤーが突然消えてボールから離れた場所に現われたり、ゴール前の決定的チャンスでフォワードの選手がバックパスしたり、11人の選手のうち9人ぶんのシステムがダウンしてふたりしか動かないチームがあったりと、結構笑えるシーンも多かった。動きがもどかしいだけに、ゴールが決まると、観客から歓声が上がったりした。



 今日の予選で、2勝したチームは、昨年準優勝した安藤友人氏の“Andhill”と、その改良版“Andhill2”、名古屋工業大学のJavaで書かれた“NITStones”の3チームで、優勝は、この3者の争いとなる公算が高い。決勝戦は11日に行なわれる。(報道局 佐藤和彦)

http://www.robocup.org/RoboCup/RoboCup.html

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