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三菱電機が研究所公開を実施、次世代移動体通信規格に関する展示も

1998年02月06日 00時00分更新

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 三菱電機(株)は自社研究所を特別公開し、研究開発成果の披露を行なった。家電製品に関する技術なども展示されたが、展示の中で一番多かったのが情報・通信関連の新技術。次世代移動体通信システムの基地局系装置や、人工網膜チップICを利用したモーションキャプチャーシステム“人工網膜チップ応用モーション追跡システム”のデモンストレーションなどが注目を集めていた。

 同社が開発を行なっている次世代移動体通信システムは現在2種。ひとつは2000年ごろのサービス開始を目指している“IMT-2000(International Mobile Telecommunications 2000)”の中の“W-CDMA(Wideband Code Division Access)”方式。これは電波産業会(ARIB)などが次世代の国際標準移動通信システムとして推進している方式で、従来の移動体通信よりも高速移動中のデータ送信が可能となり、音声だけでなくパケットデータや動画などが電送できるようになるというもの。最大384Kbpsのデータ送信が可能だとしている。

 現在同社では、エヌ・ティ・ティ移動通信網(株)(NTTドコモ)が公開したシステム実験用仕様に基づいて、W-CDMA基地局系装置と移動局装置を開発している。W-CDMA基地局系装置には、独自開発のATMセルバススイッチング方式を用いて、音声データやパケットデータ、動画データの通信・制御情報を共通化した。また、同装置には移動局装置から送信されてきた信号を復調する際に、ビルなどの反射により遅れて受信される遅延波を分離、識別して受信品質を向上させるRAKE受信方式を用いているが、同社では従来アナログとデジタルが混在していた受信処理をすべてデジタル化、従来の基板8枚の構成を2チップのLSIに集積した。これにより装置は従来の8分の1に小型化され、低消費電力化も図られた。ほか感度の低下を防ぐ、偶高調波ミクサ採用のダイレクトコンバータを独自開発、採用している。同社では、今後NTTドコモが計画しているW-CDMAシステム実験へ参加し、実用化に向けた開発をさらに進めていく予定。

 もうひとつの次世代移動体通信システムは、IMT-2000よりもデータ送信速度が大きく、双方向通信が可能な“FPLMTS PhaseII”。時速50kmでの移動中に、34Mbpsのデータ転送が可能だとされている。プロジェクト名“SAMBA”と呼ばれ、現在EU(欧州連合)が推進する“ACTS(Advanced Communications Technologies and Services)計画”の中で広域移動体通信システム(MBS)が開発されている。同社では'96年7月からACTS計画に参画、高速移動しながらハイビジョン並みの動画像電送を実現するためのトライアル機を開発している。今回はトライアル機のシステムの内、コントロールユニットを除いた基幹部“ベースバンド処理部”が展示された。

 同システムはドイツで接続試験を行なったあと、今年ポルトガルのリスボンで開催される『EXPO'98』でデモンストレーションを行なう予定。同社では救急車における遠隔医療画像伝送システムや、高速移動中のデータ転送に強いことからテレビ中継などへの応用を考えている。

 人工網膜チップICを利用した動作解析システム“人工網膜チップ応用モーション追跡システム”は、従来のモーションキャプチャーシステムとは異なり、人体にセンサーを取り付けることなくモーションキャプチャーが可能。人間の目のように配置した2台の人工網膜モジュールを用いて、人間の動きを3次元的に解析、動きをリアルタイムにCGに反映させることができる。



 デモンストレーションでは32×32画素の人工網膜モジュールを使用して、リアルタイムで人間の頭部の動作解析を行なっていた。このシステムでは頭や肩の輪郭を用いることで頭部領域を推定し、人工網膜チップがまぶたや口の動きを読みとる。そのためキャプチャー中に対象人物が入れ替わっても、人工網膜モジュールがすぐに新たな頭部領域を推定、動作解析を再開する。動きは頭の上下左右への移動や、口、まぶたなどに反応。単に開閉だけでなく、口をとがらせたり、ゆがませたりといった動きにも対応する。すでに任天堂(株)がこの技術を使った製品を発表しており、同社ではさらにパソコンやゲーム機などのインターフェースへの適用や、簡易モーションキャプチャーシステムとしての普及を見込んでいる。(報道局 市川美穂)

http://www.melco.co.jp/

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