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Windowsに追いつく?

2000年10月02日 21時15分更新

文● 塩田紳二

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 Windowsでは、数多くのアプリケーションがそろっており、特にオフィス系ソフトが充実していることがメリットだと言われている。しかし、このオフィス系ソフトといっても、大多数は、マイクロソフトのOfficeシリーズのユーザーで、一人のユーザーが使うソフトの数はそれほど多くない。

 最近、Linux用のオフィス系アプリケーション(つまりワープロとか表計算ソフト)がいくつも登場しているが、そのうち、いくつかは日本語化が予定されていたり、すでに日本語が使えるような状態になっているようだ。また、Windowsで有名なインプットメソッドであるATOKも本格的な製品が登場し、環境的にはちょっと整いつつあるような感じである。単にオフィス系ソフトが登場したことだけを見て、「Linuxにもデスクトップ時代の到来」というにはちと早すぎるような気はする。まだ、Windows環境に比べれば、いろいろと未整備な面もあるからだ。

 しかし、オフィスアプリケーションを使うほとんどのユーザーは、「コンピュータがどう動いているのかちゃんと理解していないし、理解したくもない」人々である。まあ、日刊アスキー Linuxを読むような人に、このような人はいないと思うが、こうした人は、いままで以上に増えているのである。その最たるものは、「インターネットがやりたいから、パソコン買った」という人たちである(知り合いにパソコンを買ってインターネットしているというから見に行ったら、インターネット対応ワープロ専用機だったという人もいる)。こうした人々は、インターネットやりたさにパソコンを買い、そこにインストールされているからという理由で、組み込まれているワープロなんかを使っている。こういうユーザーが重要なのは、従来のユーザーと違い、必ずしもマイクロソフト製品であることにはこだわらない人だからである。

 Windowsユーザーの中には、「やっぱりマイクロソフトのWordやExcelでないと」という思いこみを持つ人も多いが、実際には、他のソフトでも十分に代用が可能だが、「始めて使った」、「すでに慣れている」という理由から、他のソフトへ乗り換えることはあまりしない。Outlook Expressを使うユーザーが多いのは、Windowsが動けば、そこにあるメールソフトだからで、その機能ゆえ選ばれているわけではない。人間というものは怠惰で、だれしも、すでについてしまった習慣や覚えたことを捨てるのは困難なものだからである。しかし、新規ユーザーはいままでになく増えており、ある意味、取り込みのチャンスでもある。

 だとすると、必要なのは、オフィスソフトが付いているディストリビューションではなく、Linux用オフィスソフトを使うためのディストリビューションやインターネットするためのディストリビューションではないだろうか? 起動するとインターネットが使えて、ワープロで年賀状が印刷できる、このような環境を構築するためのディストリビューションを用意しておけばいいのかもしれない。

 これを実現するためには、印刷環境の整備や、周辺装置などのドライバの充実などが必要だ。なぜなら、上記のような人々に自分が使っているのがLinuxなのかWindowsなのか区別が付くわけはなく、近所のディスカウントショップで安売りしている適当なカラープリンタを買ってくるだろうし、USBのデバイスを適当に買ってしまうだろうから。それらがちゃんと動かないと、ちょっと難しい。

 そう考えると「デスクトップ」時代の到来はずいぶんと先のような気がしてくる。まあ、その前には、「わかっている人には、十分な環境」ということにはなるのだろうが……。

 Linuxベースのオフィス系ソフトがあり、VMWareやWINEでWindowsのアプリケーションを利用可能だとすると、現在のWindowsの強みは、数多くの周辺装置のサポート(ドライバ類)にあると思われる。ここをクリアできれば、デスクトップ分野での将来は見えてくるような気もする(もっとも、そうした方向は不要という意見もあるだろう)。マイクロソフトが簡単には許さないとは思うが、WindowsとLinuxでドライバを共有できるような仕組みなんてできるといいのかも。Linuxをサポートするメーカーも増えてきたところだし、ここはひとつ、マイクロソフト以外のメーカーで団結して、共通デバイスドライバコンソーシアムなんか作って対応してほしいところ。

 タイミング的には、マイクロソフトは、Windows Meの後継でNTカーネル系に移行しようとしているが、このタイミングで、切り捨てられる古い周辺装置も多いはず。長期的に見れば、USB、PCカード、プリンタがWindowsなみにサポートできるようになれば、「違いの分からない」人たちにも安心して使えるはずである(一番のヤマはプリンタドライバやアプリケーションが現在のプリンタの機能を把握するような仕組みづくりなのだと思うが)。

 司法省の裁判もあって、最近のマイクロソフトはちょっと大人しいということなので、今がチャンスなのかも。

(塩田紳二)

塩田紳二(しおたしんじ)

プロフィール
 雑誌編集者、電機メーカー勤務を経てフリーライターとなる。月刊アスキー、月刊インターネットアスキーなどの雑誌連載や、Web雑誌(ASCII24 Intel/MS Espresso)の連載などで執筆中。1961年生れ。一児の父。最近の趣味は、革細工。といっても、通信教育のコースを始めただけ。目的は究極のモバイル鞄づくりなのだが。

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