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Linuxシステムコール

2000年09月28日 18時50分更新

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LinuxシステムコールLinuxシステムコール

発行(株)技術評論社(http://www.gihyo.co.jp/)

  • 著者 塚越一雄
  • 発行 (株)技術評論社
  • ISBN 4-7741-1031-0
  • 2480円

 Linuxにも慣れ、C言語について一通りの勉強を終えると、簡単なアプリケーショ ンプログラム程度は組めるようになります。しかし、アプリケーションであっ てもOSとの絡みの部分は必ず出てきます。便利なものを作ろうとすればする ほど、OSの機能を生かせるシステムコールを使わなければならなくなります。 Linuxのプログラミング本や、カーネルソースの解説書、さらにはデバイスドラ イバなどの本もありますが、最初からこれらの本に立ち向かうよりも、やさしく 書かれたシステムコールの解説書を読んで基礎を理解してから本来の目的である、 より高度なプログラミングの学習に進むべきでしょう。

 本書は、そういう目的に非常に適したシステムコールの入門書です。プロセス、 シグナル、入出力、パイプ、ソケットの説明があり、システムコールの主要 な部分はほぼカバーしています。これだけのことを説明しようとすると、普通 はB5判の分厚い本になるのが常ですが、本書は、それぞれの概念を理解すること だけに目的を限定しています。つまり、実際的な利用のされ方についてはほとん ど触れず、あくまでも基礎的な概念を理解できるように、徹底して簡単なステッ プに分けて解説しています。ここまで丁寧に、システムコールの基本部分だけを 説明した本は今までなかったでしょう。

 もちろん、その反動で、本書の解説は、実際にプログラミングで使われているよ うな例ではありません。本書は、あくまでもシステムコールの入門書であり、今まで 難しい本を読んで挫折してしまった人にはたいへん向いているのではないでしょうか。 実際にシステムコールの動作を確認できる非常に短いプログラムを示し、実行結 果を示しながら説明しています。プログラムは長くても50行程度で、 気楽に入力して確かめられる短いものばかりです。そして、その短いプログラム を少しずつ変えながら、動作がどのように変わっていくかが極めて丁寧に書かれ ています。システムコールに慣れた人なら、斜め読みできるような本です。

 Cプログラミングをやる以上、基本的なシステムコールくらいは、使う使わない にかかわらず理解しておくべきです。この本の範囲くらいは、Cプログラミング の基礎教育に加えたいものです。

 本書は、システムコールの入門書で、実際のプログラミングにはもっと実際的な 本とか、ソースコードとかを参考にする必要があります。そう思って、本書の参 考文献を見ましたが、ここにはシステム関連の書籍がそれほど載っていませんで した。せっかくこういう入門的な本なのだから、さらに先へ進むための道案内は 欠かせないでしょう。ぜひ、本書を読み終わったら、各自でLinuxの内容的に突っ 込んだプログラミングの本や、さらにはカーネルソースなどにも手を出してみ るのがよいでしょう。

藤原博文

プロフィール

藤原博文

パズルを解くためにTK-80などに手を出したが、BASICの低速性が気に入らず、ついコンパイラを作ってしまった。それ以降はソフトウェアの世界から足抜けできなくなり、逆にパズルをする暇がなくてストレスが溜っている。UNIXはVAXの頃から使い始めすでに20年近く、Linuxは4年前より日常的に利用している。ホームページはhttp://www.pro.or.jp/~fuji/

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