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ついに動き始めた国内インターネットデータセンター(その1)

サービスで見る国内インターネットデータセンター

2000年10月17日 02時51分更新

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 IDCの最も基本的なサービスは、Eビジネスを指向する顧客がIDC施設内の場所を借りてそこに自分のサーバを設置稼動するハウジング、あるいはIDCが貸し出したサーバを設置稼動するホスティングの2つである。確かに、これまでにもISPによってWebサイト用途にハウジングやホスティングサービスが提供されているが、IDCは事業の中核としてそのサービスを提供しているところが異なっている。つまり、ミッションクリティカルな用途にも耐えられるサーバ運用環境を目指し、冒頭でも述べたように、

  • サーバの可用性・安全性を極めたファシリティ
  • コネクティビティ重視のバックボーン

を追求していることが特徴である。

ファシリティサービス

 サーバを連続稼動する上でまず気を遣わなければならないのが実は電源である。並みの電力では、サーバを同時に何百台、何千台も、しかもノンストップで稼動させることはできない。加えて、IDCのサーバスペース(サーバが置かれた場所)は機器の発熱負荷に対し冷房管理がなされており、その空調設備に費やす電源も確保しなければならない。そのため、IDCのファシリティでは、給電システムが一般のオフィスビルに比べ桁違いに強化されている。

 具体的には、国内の場合、契約電力が2000kwを超えると「特高受電」という工場などで使われる超大容量の電力が使われる。将来的な拡張性も含めて、大規模なIDCではすでに特高受電を利用しているところも多く、現時点で使っていなくても特高受電の受変電設備用スペースを確保していることもある。もちろん、給電は複数の変電所から行なわれ、また構内も本線、予備線の2回線受電方式が採られるなど、冗長化が図られる。さらに、停電時に備えた無停電電源装置(UPS)や、非常用自家発電設備なども標準的に設置されている。

 また、IDCには、ハウジング/ホスティングしたサーバの管理を行なうために顧客(人)の出入りが生じる。そこで、IDCのファシリティサービスには、施設自体へのセキュリティ、つまり人の入退室をチェックする設備やサーバスペースの安全性維持のための厳重な対策も含まれている。たとえばサーバスペースの入口にはICカードや指紋を使った認証機器、内部には監視カメラを設置するのが一般的である。さらに、サーバを収納するラックは施錠し、 場合によっては「ケージ」と呼ばれる金網で囲ったり、

ラック
写真1 サーバスペースに置かれたラック(アバヴネットジャパン提供)

ケージ
写真2 ラックを囲んだり、ラックを使わない直置きサーバに利用するケージ(アバヴネットジャパン提供)

別途個室を設けてその中にサーバを設置することもある(図1)。

図1
図1 IDCの内部はこうなっている!

 もちろん、災害等に備えたIDCの施設(ビル)自体の安全性確保も万全だ。ビルが耐震/免震構造であることはいうまでもなく、サーバスペースの床を免震構造にする、耐荷重を高める(1平方メートルあたり500kg~1000kg)、特殊ガスによる消火装置を備えるといった徹底ぶりである。また、物理的なファシリティではないが、IDCの設置位置や顧客情報を公にしないようにしてセキュリティを高めるIDCがほとんどである。

 このようにIDCにはサーバを確実に、しかも安全に運用するためのファシリティサービスがあるが、これは次のネットワークサービスに付随するものと考えられている。つまり、程度の差はあれ、こうしたファシリティはどのIDCにも備わるものである。

ネットワークサービス

 ネットワークサービスには、IDCのバックボーンを多数の顧客でシェアし、かつ各顧客が満足できるコネクティビティを提供することが求められる。そのため、IDCには最低でも数百Mbpsクラスのバックボーンを備えたところが多い。また、バックボーンをどこに接続しているかにもこだわる。コネクティビティはEビジネスのまさに核であり、顧客はそのためにIDCにアウトソーシングしているといっても過言ではないからである。

 ネットワーク的に無駄のないコネクティビティを実現するため、IDCのバックボーンは通常、ISP同士の接続ポイントであるIX(Internet eXchange)に複数直結している。そうすることで、なるべく多くの他サイト(ISP)に最小限のホップ数で接続できるようにしている。国内でいえば、日本の2大IX(JPIX、NSPIXP-2)があるKDD大手町ビルに直結しているIDCがほとんどである。

 ファシリティサービスはどのIDCでもほとんど同じと前述したが、ネットワークサービスはIDCのバックボーンによって差が生じる部分である。特に、外資系や、国内キャリアやISPといった通信事業者が運営するIDCは大容量のバックボーンをすでに所有しており、SLA(サービス品質保証)などを付けてネットワークのスループット(帯域幅ではなく実際の伝送速度)を保証しているところも多い。外資系でいえばアバヴネット、レベルスリー、デジタルアイランド、ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC、グローバルセンター、国内IDCでいえばNTT系、KDD、ジェンズ(日本テレコム)、アット東京(TTNet)などはネットワークサービスに特に強いIDCである。

 だが、ここで注意しておきたいことがある。「バックボーン」は通常IDCが接続している回線の総容量を指すが、外資系と国内企業とではつながっている地域が異なることである。外資系は主に日米回線が中心だが、国内企業は日本国内の回線が中心だ。こうした中、国内網も徹底的に追求する外資系IDCがある。アバヴネットだ。

 同社は「ダークファイバ」と呼ばれる未使用の光ファイバ回線を含め、Gbpsクラスの自社の対米回線を所有している一方、国内網は積極的な「ピアリング」によってISPとの相互接続性を高めている。ピアリングとはISPと対等に接続することをいうが、ピアリングしているISPが多ければ多いほど、サイト(IDC)にアクセスするユーザーとのネットワーク的な距離を縮めることができる(図2)。

図2
図2 ピアリングすればISPから直接ユーザーにデータを転送できる

 また、コンテンツデリバリ技術を持つデジタルアイランドも注目のIDCである。同社は、総計14Gbpsの自社回線を所有し、世界に分散したIDC間でストリーミングデータや、ECサイトのダイナミックデータをユーザーに近いキャッシュサイトに配信するサービスを行なっている(Footprint)。

「付加価値」サービスをウリにするSI系IDC

 ハウジング/ホスティングされたサーバは、IDCのファシリティサービス、およびネットワークサービスよってコネクティビティとノンストップ運用、厳重なセキュリティ(物理的な安全性)が約束されるが、基本的な部分を除いて運用管理は一般に顧客に任される。基本的な部分とは、定期的にpingを発行してサーバが動作しているかどうかの確認や、機械的な障害で停止している場合の電話連絡、サーバのリブートなどである。当然、日々のサーバの運用管理、システムの拡張などは含まれない。こうしたサービスは別途「付加価値」サービスとして提供されていることが多い。

 付加価値サービスには、

  1. データのバックアップやアプリケーションの監視、セキュリティ対策(ウイルスや不正侵入検知)といった日常のサーバ運用や、負荷分散やストレージ拡張といったサイトのパフォーマンス改善、サーバ機器が故障した時に代替機に交換するといった拡張運用サービス
  2. 必要に応じてサイトの設計や構築を見直し、再設計、再構築を行なうというスケーラビリティを実現するシステムインテグレーション(SI)サービス
  3. アプリケーションの受託開発・運用や、ASPサービス(ERP/CRM/SFAなど)

がある。だが、いうまでもなくすべてのIDCがこのような付加価値サービスまで踏み込めるわけではない。

 こうした中、自社のシステムインテグレーション力を生かし、付加価値サービスを充実させてIDC事業に参入するSI事業者も多い。たとえば、NTTデータや日本ユニシス、東芝エンジニアリングといったSI事業者系IDCや、また従来のデータセンター運用ノウハウ(およびその施設)を生かした富士通や日本IBM、NEC、日立などのメーカー系IDCである。

素朴なギモン

IDCが都心に多いのはなぜ?

 「都心でなければIDCではない」という見方もあるほど、ほとんどのIDCは都心に集中している。これには2つの理由がある。1つは、IDCのバックボーンをIX(特にKDD大手町ビル)に引き込むためである。JPIX、NSPIXP-2は国内の多くのISPが集まるインターネット接続の心臓部であり、ここに接続することでネットワークのコネクティビティの向上を図れる。もう1つは、顧客の大半が東京に集中しているためである。つまり、サーバの運用管理を基本的に自分で行なわなければならない顧客の利便性を図っているのである。

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