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LinuxWorldの波紋観測

2000年08月25日 19時54分更新

文● テンアートニ 佐藤栄一

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 日本の夏は、蒸し暑く逃げたくなります。海外脱出組も多かった8月14~17日に米国California州のSan Joseでは、LinxuWorld Conference & EXPO 2000 San Joseが開催されました。今年のLinuxWorldは、大きな変動がみられたようです。

 日本のイベントはビジネス主体の展覧会なので、企業が多いのはうなずけます。日本のLinux系イベントでは、昨年から大手ベンダーの出展が目立つようになってきました。米国はコミュニティ主体なので、大手ベンダーの展示が少なく、ビジネス分野もインテグレータやベンチャー企業の展示が多かったのです。そのため、コミュニティに近いSGIの出展が目立っていました。

 しかし、今年のLinuxWorldには、Compaq、Dell Computer、IBM、Sun Microsystemsが参加しています。さらに、基調講演をDell ComputerのMichael Dell会長が講演する様変わりです。このようなコミュニティの祭典ともいえるLinuxWorldへの大手ハードウェアベンダーの参加は、大手ハードウェアベンダーがLinuxの推進者として表舞台に立ったことを示します。

 もうひとつ、新たな局面を感じるニュースがありました。それが、大手ベンダーの、デスクトップ環境「GNOME」への支持の表明です。Compaq、HP、IBM、Sun Microsystemsなどの大手コンピュータベンダー、Red Hat、VA Linux SystemsなどのLinuxベンダー、さらにFree Software Foundationなどが、GNOMEへの支持を表明したのです。このニュースには、人気を二分するデスクトップ環境であるKDEとの対決を懸念する論評も見られました。しかし、これは、本格的にLinuxをクライアントでも使用しようとする流れの表われと感じます。

 すでに、全世界のWebサーバにおいて、Linux 30%に対してWindows(NT/2000)が28.3%と大きく上回り、トップシェアを獲得しています(Netcraft調べ)。このように、IT用途では、優劣が見えてきたので、クライアント市場にもフォーカスが当たりはじめたと考えられます。

 しかし、日本では、クライアント市場を考えるのは時期尚早のようです。世界的な流れに対して、日本のサーバーOS市場のシェアでは、Linux 4%に対してWindows NT 80%と大きな隔たりがあります(IDG社調べ)。

 このような世界の技術トレンドとの隔たりをLinux業界にいる我々はよく承知しています。今こそ日本のIT業界全体が、サーバOSについて本気で考える時期にきているようです。

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