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Mozilla、MPLとGPLのデュアルライセンスに

2000年08月17日 00時00分更新

文● 植山 類

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 Mozilla Organizationは8月16日、オープンソースのWebブラウザ「Mozilla」のライセンスを、GNU GPL (General Public License)とMPL (Mozilla Public License)のデュアルライセンスにする計画を発表した。いままではMPLでライセンスされていた。

 デュアルライセンスとは、ソフトウェアを2種類のライセンスで配布することだ。商用ソフトウェアを数種類の条件/価格でライセンスできるように、フリーソフトの著作者も単一のソフトウェアをそれぞれ異なるライセンスのもとで配布する権利がある。GPLとMPLはそれぞれ許可することや制限が異なるが、デュアルライセンスではライセンスが互いに矛盾していてもかまわない。これは、同一のソフトウェアを2つの箱につめて、1つはGPLで、もう1つはMPLで出荷したと考えるとわかりやすいだろう。同じことを単一のアーカイブに対して実現するのが、デュアルライセンスなのだ。

 Mozillaがデュアルライセンス化されれば、ライセンシーはGPL/MPLのどちらか都合のよいほう(または両方)を選択して、再配布・改変することが可能だ。

 この計画では当然、ライセンスの変更が必要となる。ライセンスを変更できるのは著作者だけなので、彼らの同意が必須だ。Mozillaの著作者はmozilla.orgのCVSツリーに変更を加えた開発者だけではなく、メールやバグ追跡システム(Bugzilla)を通してパッチを投稿した人も含まれる。Mozilla Organizationは、開発者に同意を求めたあとライセンスを変更するとしている。

デュアルライセンス戦略

 今回のライセンス変更は、最近の大きな動きのひとつだ。例を挙げてみよう。

  • MySQLは6月、それまでの商用利用に制限のあるライセンスからGPLに変更した
  • Sun Microsystemsは6月、オフィススイート「StarOffice」のソースコードを、GPL/LGPLとSISSL (Sun Industry Standards Source License)のデュアルライセンスで公開すると発表した
  • Tripwireは6月、ファイル変更監視ツール「Tripwire for Linux」次期バージョンをGPLでリリースすると発表した
  • MandrakeSoftは3月、PCエミュレータ「Bochs」の権利を購入しLGPLでライセンスした
  • IBMは2月、ファイルシステム「JFS」のソースコードをGPLで公開した

 これらに共通しているのは、GPL (またはGPL互換なライセンスであるLGPL)を採用していることだ。

 Netscape CommunicationsがMozillaを公開して以来、企業がソースコードを公開するとき、「オープンソース」だが自社独自のライセンスを選択することが多かった。ソースコード公開義務のあるGPLは採用しにくかったためだが、この企業色の強い戦略は開発者にあまり人気がなかった。

 そこで多用されるようになったのが、デュアルライセンス戦略だ。この方法をとれば、MPLのようなソース公開義務なしのライセンスとGPLのような人気の高いライセンスを同時に選択することができる。問題は、GPLのみでライセンスされたパッチなどが出回った場合だが、対策を施す企業もある。たとえばStarOfficeは、メインのCVSツリーに加えるコードをSISSL/GPLのデュアルライセンスにすることを義務づけている。

 開発者にとってデュアルライセンスの利点は、GPLのみで改良を行なうことにより企業に「反乱」を起こすことが可能というところだ。この自由が確保されている限り、デュアルライセンス戦略に反発する開発者は少ないと思われる。

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