膨大な数のパッケージ
Debian GNU/Linuxの利点のひとつは、膨大な数のソフトウェアがパッケージ化されて配布されていることだ。potatoでは4000個以上のパッケージが用意されているので、ユーザーは、かなり特殊でない限りほとんどのソフトウェアをdebパッケージとして簡単にインストールすることが可能だ。
また、これらのソフトウェアのインストールを助けるツールとして“apt-get”という強力なコマンドが開発された。ユーザーは“apt-get install xxx”とするだけで、apt-getコマンドが、パッケージの移存関係を考慮してxxxパッケージと必要なライブラリなどを一緒にインストールしてくれる。パッケージの取得元としてFTPサイトを設定できるので、常にシステムを最新に保つことも容意だ。
ただし、「悪夢」とまで形容されていた初期インストールの難しさはpotatoでも解消されていない。初心者には理解しにくいインターフェイスのパッケージ管理ツール“dselect”が初期インストールに利用されているため、たとえばRed Hat Linuxのように「ポイント&クリック」で簡単にインストールすることはできない。
100パーセントフリー
Debian GNU/Linuxは、企業ではなく、Debian Projectに所属する500人ほどのボランタリな開発者によって開発されている。彼らの目標は利益を上げることはなく、フリーソフトの精神を尊守しつつ使いものになるディストリビューションを構築することだ。そのため、Debian GNU/Linuxは「フリーソフト」しか含んでいない。
問題は「フリーソフト」という言葉にさまざまな定義があることだ。無料なだけのソフトウェアや改良に制限のあるもの、商用配布に制限のあるものは、「フリーソフト」と呼べるのか。この問題をクリアにするため、Debian Projectは「Debian Free Software Guidelines」(DFSG)というライセンスの判断基準を定義した。DFSGが要求する条件は、「(販売を含む)再配布の許可」「ソースコードの提供」「派生ソフトウェアの容認」「差別の禁止」など9項目にわたり、GPLやBSDライセンスなどがこれに適合する例として挙げられている。
しかし、DFSGに適合しないソフトウェアをすべて排除すれば、バイナリのみ配布のNetscape Communicatorなどをdebパッケージからインストールすることができなくなる。この手間を省くために、Debian GNU/Linuxとは別個に「non-free」として、Netscape Communicatorなどがdebパッケージで配布されている。
新アーキテクチャへの対応
potatoでは、新たにPowerPCとARMアーキテクチャに対応した。これでサポート対象はIntel x86、SPARC、Alpha、Motorola 680x0、PowerPC、ARMの6つのアーキテクチャとなった。このうち、SPARCはSun Microsystemsのワークステーションで、680x0は(PowerMacではない)古いMacintoshで使われているCPUだ。また、ARMはカナダのCorelが販売していた“NetWinder”マシンなどに使われているものだ。
今回、PowerPCに正式対応したことにより、iMacもDebian GNU/Linuxの動作対象となった。
Debian Projectは、potatoをJoel "Espy" Kleckerに捧げるとしている。Debian開発者だったJoel Kleckerは、先月、若くして筋ジストロフィで亡くなった。IRCにEpsyというニックネームで参加し、ほかの開発者と同様メールで開発に活発に関わっていたが、彼は寝たきりのままDebian Projectに参加し続けていた。