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Linuxサーバのゆくえ

2000年08月07日 00時00分更新

文● テンアートニ 佐藤栄一

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 Linuxビジネスとサーバビジネスは、密接な関係を持っています。勿論、今後は、サポートビジネスが主体になるのは避けられないでしょう。しかし、サーバビジネスがなくなることはありません。今回は、夏休みムードに乗って長編で、サーバビジネスの軌跡と今後を紹介します。

 (株)テンアートニが設立された1997年は、Linuxがビジネスに登場しはじめた頃です。この頃は、ショップブランドのPCに、Linuxをインストールしただけの商品が「Linuxプリインストールサーバ」として販売されていました。なぜならば、Linuxそのものが珍しく、評価や試験導入が多かった時期だからです。 この頃のサーバは、第1世代の商品といえます。Linuxディストリビューションに含まれているアプリケーションを、PCにインストールして販売している時代です。インテグレーション(ユーザーの要望に応じてサーバを構築すること)的な内容は少なく、「Linuxプリインストール」がメインとなっています。この頃のユーザーの目的は、「安い機器投資でメールやWebサーバがほしい」というのが主でした。低価格の機種を中心にけっこう売れていたと思います。この場合、プリインストールとインテグレーションの境目がない曖昧な状態です。

LinuxWIの写真
サーバ専用PCにLinuxをインストールした「LinuxWI」
VT-Alphaシリーズの写真AlphaチップPCにLinuxをインストールした「VT-Alphaシリーズ」

 1998年に第2世代が登場します。それは、ハードウェア込みのオールインワンサーバのような「専用サーバ(専用のハードウェアにLinuxをインテグレーションしたもの)」の登場です。元々、PCは、汎用的な目的に設計されています。それに対して、専用サーバは、不要なハードウェアを排除して、コンパクト化とデザイン性を向上させました。勿論、価格も圧縮されています。さらに、利用目的にフォーカスしてソフトウェアを構成しています。 これまで、Linuxディストリビューションを汎用のPCにインストールしていた製品は、専用サーバの登場で姿を消すことになります。これ以降は、汎用PCやサーバ専用機は、インテグレーション案件に利用されます。また、専用サーバは今も脈々と販売されています。

 1999年は、第3世代がスタートします。ハードウェアメーカーが、続々とLinux対応を表明しはじめたのです。ハードウェア面で信頼性を向上するとともに、メーカー保守も受けられるようになりました。インテグレーション面でもメーカーのサーバ専用機を核とすることで、新たな局面をむかえました。 また、プリインストールサーバもメーカーのサーバ専用機を使用して、ソフトウェア面でも付加価値を付けるようになります。「ユーザー登録」機能など利用者を支援するためのユーティリティの搭載は、当たり前となっています。さらに簡易なグループウエアを搭載するなど、ユーザーへのアピールを強化してゆきます。

e-Serverシリーズの写真
日本アイ・ビー・エムのNetfinity1000にLinuxおよび簡単セットアップツールをインストールした「e-Serverシリーズ」

 さて、次世代のサーバビジネスは、どのようになるでしょうか。それは、アプライアンス化と高性能化/耐障害化の2局面に進みます。 アプライアンスサーバは、これまで追求されてきた価格と機能面で手軽に使えるサーバを進化させたものです。家電感覚で使用できるLinuxサーバを目指します。ネットワークのベースとなるメール、Web、DNSなどは、第1世代のLinuxサーバに任せて、既存のネットワークや業務に必要なアプリケーションを搭載した、アプライアンスサーバが増えるでしょう。

Xuni-L S Liteシリーズの写真アクアリウムコンピューターのwhite neonにISVW(InterScan VirusWall)をインストールしたアプライアンスサーバ「Xuni-L S Liteシリーズ」
Hyper Smileαシリーズの写真日本SGIの1450にSmileα販売管理をインストールした「Hyper Smileαシリーズ」

 システム全体の高性能化(HPC:High Performance Computing)と耐障害化(HAC:High Availability Computing)を追求し、Linuxを商用UNIXと同等レベルで活用しようとする、大規模インテグレーションが本格化します。これまで、Linuxサーバは、インターネットサーバとして企業情報システムの一部を担ってきました。しかし、これからは、企業情報システムの根幹やデータセンターなどの市場に適合するようになります。それには、以下の3つの理由があります。

  1. SMPやクラスタなどによるマルチCPU構成の一般化が急速に普及……ラックマウントの1Uサイズサーバが後押し
  2. SAN(Storage Area Network)による大型の共有ストレージの実現
  3. IA-64の登場……来年には、商用UNIXとLinuxの対決が開始

 これら3つの要因は、コンピュータ業界全体に当てはまります。しかし、その恩恵をもっとも大きく享受できるのは、Linuxといわれています。特にIA-64が登場すると、市場シェアを望む各社の思惑に乗って、Linuxがブレイクするでしょう。

 今回は、夏休みバージョンとして長編でお送りしました。次回は、夏休み疲れを癒す、短編でお送りします。

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