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(株)ガーラ――バナー以外で収益を確立する方法

e-business羅針盤

2000年06月05日 00時00分更新

文● 吉川

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 ガーラがなぜ成長しているのか? という問いを発する前に、ガーラが現在のネットビジネスについて、どのように認識しているのかを把握しておこう。まずは、ネットビジネスの普遍性と特殊性について聞いた。

菊川氏写真
(株)ガーラ代表取締役社長 菊川曉氏
[日刊アスキー] 軒並みネットワーク関連企業株価が上昇し、そのあと下落するなどして、連日一般誌がにぎわっていますが、そもそもネットビジネス、特にコンテンツビジネスは収益が上がるのでしょうか?
[ガーラ 菊川氏] 前提として、ネットビジネスがすべて儲かるというのは間違いで、さらに、「ネットビジネスは、ある規模を超えると(ランニングコストは変わらないので)収益がどんどん伸びる」という話についても、私はそうは思っていません。

 あるジャンルに関して、過半数のシェア(トップシェア)を取れば、プライスリーダーになれる。2番手、3番手は、プライスリーダーが決めた価格よりも少し安い価格で製品を出し、シェアを奪い取ろうとする。当然、2番手、3番手の収益は落ちる……。この構図は、今までの経営学と何も変わりがないわけです。たとえば、バナー広告の出稿であれば、まずYahoo!を考え、そのあとにほかの媒体という話になるでしょう。当然、Yahoo!以外の媒体は、広告料を安くして対抗、結果的に収益率は落ちるわけです。そのジャンルにおいて、トップ企業が一番大きな利益を得ることができるということです。

 ネットビジネスはいろいろな可能性があるから、今は大したことがなくても、将来収益を生むことも考えられるし、逆に途中で終わるかもしれません。しかしそれは、ごく普通のことですよね? たとえばネットビジネス以外の場所でも、何が伸びるかわからない。ただ、一般的に、ネットビジネスに対する判断力が、まだない人が多いと思います。ネットビジネスが理解できない人は「バブルだ」と言うし、判断力がある人は、「将来収益性が出る会社だな」、「話題になっているだけで収益性がないのではないか?」というようなことを言います。
[日刊アスキー] では、ネットビジネスにおいて、どういった企業が伸びて、どういった企業がだめになるのでしょう? その違いは?
[ガーラ 菊川氏] ジャンルにもよるので、一概には言えません。コンテンツ提供者の場を考えましょう。コンテンツ提供者を分類すると、仕入れから提供までを一貫して行なう「一貫型」(たとえば、ニュースサイトでいえば「取材から記事提供」まで)と、無料掲示板/電子メールなどの、機能を絞った機能提供・集積型があります。
 一貫型は、asahi.comや、アスキーさんのサイトもありますね。この一貫型は、2~3年前には、独立したコンテンツ提供者が多数いたのですが、現在生き残っているのは大手マスメディアが運営しているものが中心です。そして、機能提供・集積型のほうは、「楽天市場」や我々のガーラフレンドが位置しているわけです。

 結局企業ですから、支出と収入を見たときに、収入のほうが上回らないと生き残っていけないわけです。そして、収入のモデルをその会社がどのように持っているか、というのが生き残っていけるかどうかの判断基準になるでしょう。

 たとえば「まぐまぐ」が持っているのはメールアドレスだけなのですが、とにかく会員数が多く、リーチが広い。だから生き残っていけるでしょう。ガーラフレンドの場合は、リーチはありませんが、会員の属性を持っている。
生き残っていけないのは会員の属性をそれほど持っていないのに、会員数が少ないところでしょうね。

 収入に関しては、広告収入、マーケティング収入、ECの収入など、ひとつのアクセスに対してどのくらいの収益モデルを持つことができるのか? という課題があります。これからはじめるサービスに対して、「こういうビジネスモデルを付加して収入を上げていくんだ」という形で設定しておかないといけない。ビジネスモデルの収入源となるものには、必ず想定されたマーケットがあります。バナーの収入でサイトを成立させるつもりであれば、本当にバナーのマーケットが拡大していくのかどうか? 本当にその会社の提供するバナースペースが、他社と比較してバリューのあるものを持っているのか? といったことを検討しなければなりません。

 理論的にいうと、どの会社も1ページビューに対するコストが一緒だとしたら、バナーの販売価値を高くすることができた会社だけが生き残れるわけです。ただページビューが多いだけの会社だったら、1ページビューを作るコストと収入のバランスが悪くなる。どんなに人を集めていても、そのページを作るためのコストがかかりすぎて支出が多くなってしまうわけです。

 今回、ネット関連だけで株式が暴騰して下落したことによって、本当に会社のビジネスモデル/収益性がどうなっているのかというのを見ないければいけない、という認識が広まったと思います。たった今赤字だからといって、将来も赤字とは限らないし、たった今黒字だからといってこれからどうなるかも分からない。その企業の評価をそれぞれができなければいけない。

 最近反動的な風潮として「赤字企業はだめだ」という話もありますが、赤字企業でそのままダメな企業と、赤字で将来黒字になるビジネスモデルで頑張っているところもありますから、一緒にしてはいけないと思いますね。

 以上のような現状の中で、ガーラはどうやって利益を上げているのだろうか? 次ページでは、ガーラの各事業を見ていくとともに、具体的な収益にもスポットをあてる。

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