コンパックコンピュータ(株)は5月17日、大規模エンタープライズ向けサーバ「Compaq AlphaServer GS320/GS160」を発表した。同製品は、大企業の基幹業務や通信業界向けで、731MHzの「Alpha 21262A」プロセッサを最大32基、メモリは最大256GBを搭載可能という、大規模エンタープライズ向けサーバと呼ぶにふさわしいスペックを持っている。同社代表取締役社長の高柳肇氏も、「コンパックの名機として呼ばれるであろう製品だ」と同製品に対する自信を表わしていた。
現在、AlphaServer上では、Tru64 UNIX、OpenVMS、Linuxの3つのOSが動作可能(現在サポートされているのは、Tru64 UNIX、OpenVMS)となっている。米Compaq Computerは、Linus Torvalds氏にAlphaマシンを寄付するなど、当初からLinuxに対して積極的な姿勢を見せており、現在、Alphaプロセッサに最適化されたC、C++、Fortranコンパイラ、CPML、CXMLなどの演算ライブラリの開発などを行なっている。また、コンパックコンピュータ(株)でも、日本語全文検索システム「MitakeSearch」のLinux上への移植を行なっている。
「Compaq AlphaServer GS320/GS160」の発表に伴って来日した、米Compaq Computer Vice President Don Harbert氏、Product Management Vice President Donald Jenkins氏と、コンパックコンピュータ(株)エンタープライズビジネス統括本部 本部長 市原隆保氏に、AlphaServerの戦略について、風穴 江氏がインタビューした。
米Compaq Computer Vice President Don Harbert氏 |
OpenVMSの場合、アメリカでは、ヘルスケア、政府内の基幹アプリケーションなどで使用されています。日本ではテレコミュニケーション関係で、ヨーロッパでは、携帯電話のカスタマーケアなどで使用されています。
Linuxの場合ですと、ハイパフォーマンステクニカルコンピューティング分野、特にBeowulfクラスタリング(NASAが開発した科学計算用のクラスタシステム)での使用をターゲットとして考えています。
コンパックコンピュータ(株)エンタープライズビジネス統括本部 本部長 市原隆保氏 |
風穴 江氏 |
現在、エンジニアリングの面で、Tru64 UNIXとLinuxの互換性を向上させる作業を進めています。これは、Tru64 UNIX上でLinuxアプリケーションを動作させるものです。LinuxアプリケーションをTru64 UNIX上で動作させることで、エンタープライズ機能への対応や、スケーラビリティの確保といったことが可能となります。
米Compaq Computer Product Management Vice President Donald Jenkins氏 |
弊社は、AlphaServerで動作するLinux用のハイパフォーマンスのコンパイラを開発しており、C、C++、Fortranといった言語に対応しています。このコンパイラでは、Tru64 UNIXとLinux間で互換性を確保しています。また、このコンパイラはAlphaプロセッサに最適化されており、GNUのコンパイラに比べて、より高いパフォーマンスを発揮します。
弊社のWebサイト「CSA Test Drive Homepage」の流体力学演算のベンチマークで比べてみると、米Sun Microsystems(SPARC上のLinux)や米Intel(x86上のLinux)に比べて、Alpha上のLinuxが倍のパフォーマンスを示しています。つまり、ほかのシステムに比べて、Alpha上のLinuxのほうがハイパフォーマンスであるといえます。Tru64 UNIXと比べますと、Tru64 UNIXのほうが10%程度高速なのですが、それでもAlpha上のLinuxはTru64 UNIXに近いパフォーマンスを出しています。そして、このような結果が出た最大の理由は、コンパイラの最適化がなされているためなのです。
ですから、Alphaプロセッサに最適化されたコンパイラを持つ弊社は、Linuxのハイパフォーマンステクニカルコンピューティングのセグメントでは、リーダーとなれると思っています。
また、最適化されたコンパイラの強みは、ハイパフォーマンステクニカルコンピューティングだけでなく、インターネットサーバの分野でもいえることです。たとえば、Alpha上のLinuxで動作する、ハイパフォーマンスのApacheを売り込むこともできるわけです。そう考えると、今後、Linuxの用途をもっと広範囲に広げることができると思います。ただ、ビジネス的にどれぐらい広がるかというのは、現段階では市場のようすを見ているところです。
そして、ひとつめの技術として、次世代のEV7プロセッサ(21264の次の世代のプロセッサ)の中に埋め込まれることになる、新しいスイッチングのテクノロジがあります。このテクノロジーによって、4、8、16、32、64といった、SMPのスケールアップが容易になります。
2つめとして、さらに次の世代のEV8になりますと、プロセッサ内の同時マルチスレッディングが可能になり、独立した形で複数のスレッドを処理できるようになります。これにより、これまでの2倍から3倍の処理が可能になります。
また、現在のAlphaアーキテクチャは継続的に改善されており、異なるアーキテクチャからの移行による困難などがなく、リーダーとしての位置を充分確保できると考えています。