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「Compaq AlphaServer」インタビュー

2000年05月19日 00時00分更新

文● 沖中弘史

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 コンパックコンピュータ(株)は5月17日、大規模エンタープライズ向けサーバ「Compaq AlphaServer GS320/GS160」を発表した。同製品は、大企業の基幹業務や通信業界向けで、731MHzの「Alpha 21262A」プロセッサを最大32基、メモリは最大256GBを搭載可能という、大規模エンタープライズ向けサーバと呼ぶにふさわしいスペックを持っている。同社代表取締役社長の高柳肇氏も、「コンパックの名機として呼ばれるであろう製品だ」と同製品に対する自信を表わしていた。

 現在、AlphaServer上では、Tru64 UNIX、OpenVMS、Linuxの3つのOSが動作可能(現在サポートされているのは、Tru64 UNIX、OpenVMS)となっている。米Compaq Computerは、Linus Torvalds氏にAlphaマシンを寄付するなど、当初からLinuxに対して積極的な姿勢を見せており、現在、Alphaプロセッサに最適化されたC、C++、Fortranコンパイラ、CPML、CXMLなどの演算ライブラリの開発などを行なっている。また、コンパックコンピュータ(株)でも、日本語全文検索システム「MitakeSearch」のLinux上への移植を行なっている。

 「Compaq AlphaServer GS320/GS160」の発表に伴って来日した、米Compaq Computer Vice President Don Harbert氏、Product Management Vice President Donald Jenkins氏と、コンパックコンピュータ(株)エンタープライズビジネス統括本部 本部長 市原隆保氏に、AlphaServerの戦略について、風穴 江氏がインタビューした。

米Compaq Computer Vice President、Don Harbert氏画像
米Compaq Computer Vice President Don Harbert氏
[風穴氏] AlphaServerでは、Tru64 UNIX、OpenVMS、Linuxという3つのOSをサポートすることになるわけですが、各OSがターゲットとするビジネスのセグメントがありましたら、お話しください。
[Harbert氏] Tru64 UNIXのターゲットとしては、ハイパフォーマンステクニカルコンピューティング(AlphaServerのような高性能なマシンを使用した、科学技術演算などの大規模演算を目的とする使用法)、eBusiness、エンタープライズアプリケーション、テレコミュニケーション、ERP(Enterprise Resource Planning)、ビジネスインテリジェント(データベース、データウェアハウスなど)を考えています。
 OpenVMSの場合、アメリカでは、ヘルスケア、政府内の基幹アプリケーションなどで使用されています。日本ではテレコミュニケーション関係で、ヨーロッパでは、携帯電話のカスタマーケアなどで使用されています。
 Linuxの場合ですと、ハイパフォーマンステクニカルコンピューティング分野、特にBeowulfクラスタリング(NASAが開発した科学計算用のクラスタシステム)での使用をターゲットとして考えています。
コンパックコンピュータ(株)エンタープライズビジネス統括本部 本部長 市原隆保氏画像
コンパックコンピュータ(株)エンタープライズビジネス統括本部 本部長 市原隆保氏
[市原氏] 少し補足しますと、日本では製造業の製造工程において、OpenVMSが多く使われています。特に半導体製造業では、90%以上がOpenVMSを使用しています。
[風穴氏] Compaq Computer(以下Compaq)社内において、各OSの開発リソースの振り分け、各OSの開発者の人数の比率はどのようになっているのですか?
[Harbert氏] Tru64 UNIXは、800~900人の開発者によって開発されています。OpenVMSの開発は500人程度、両OSに対応したコンパイラには300人と、だいたいこのような比率になっています。Linuxについては、オープンソースのコミュニティに依存しています(笑)。ですので、社内の開発者はほとんどおりません。
風穴 江氏画像
風穴 江氏
[風穴氏] 日本アイ・ビー・エムが、Linuxの事業部を作って全社的にLinuxを推進していくという発表を行ないました。AlphaServerでも、3つめのOSとして対応していますが、先程のハイパフォーマンステクニカルコンピューティング分野以外の、もっと広い範囲でのサポートはないのでしょうか?
[Harbert氏] 本日の発表でも述べたとおり、弊社では、AlphaServerのハイパフォーマンステクニカルコンピューティングの分野でビジネスチャンスがあると考えています。今後、Linuxの機能にもっと拡張性が出てきて、エンタープライズ対応ということになれば、そのほかの分野についても、ビジネスチャンスが生まれてくるのではないかと思います。
 現在、エンジニアリングの面で、Tru64 UNIXとLinuxの互換性を向上させる作業を進めています。これは、Tru64 UNIX上でLinuxアプリケーションを動作させるものです。LinuxアプリケーションをTru64 UNIX上で動作させることで、エンタープライズ機能への対応や、スケーラビリティの確保といったことが可能となります。
米Compaq Computer Product Management Vice President Donald Jenkins氏画像
米Compaq Computer Product Management Vice President Donald Jenkins氏
[Jenkins氏] Linuxというのは、Intelプラットフォームにとっても、AlphaServerにとっても大きなチャンスです。IDC(米International Data)の調査によりますと、現在、Linuxのシェアの25%を弊社のマシンが占めています。RISCプロセッサに限れば、AlphaServerのシェアは50%以上になります。また、Beowulfクラスタの分野でも大きなシェアを持っています。
  弊社は、AlphaServerで動作するLinux用のハイパフォーマンスのコンパイラを開発しており、C、C++、Fortranといった言語に対応しています。このコンパイラでは、Tru64 UNIXとLinux間で互換性を確保しています。また、このコンパイラはAlphaプロセッサに最適化されており、GNUのコンパイラに比べて、より高いパフォーマンスを発揮します。
  弊社のWebサイト「CSA Test Drive Homepage」の流体力学演算のベンチマークで比べてみると、米Sun Microsystems(SPARC上のLinux)や米Intel(x86上のLinux)に比べて、Alpha上のLinuxが倍のパフォーマンスを示しています。つまり、ほかのシステムに比べて、Alpha上のLinuxのほうがハイパフォーマンスであるといえます。Tru64 UNIXと比べますと、Tru64 UNIXのほうが10%程度高速なのですが、それでもAlpha上のLinuxはTru64 UNIXに近いパフォーマンスを出しています。そして、このような結果が出た最大の理由は、コンパイラの最適化がなされているためなのです。
  ですから、Alphaプロセッサに最適化されたコンパイラを持つ弊社は、Linuxのハイパフォーマンステクニカルコンピューティングのセグメントでは、リーダーとなれると思っています。
  また、最適化されたコンパイラの強みは、ハイパフォーマンステクニカルコンピューティングだけでなく、インターネットサーバの分野でもいえることです。たとえば、Alpha上のLinuxで動作する、ハイパフォーマンスのApacheを売り込むこともできるわけです。そう考えると、今後、Linuxの用途をもっと広範囲に広げることができると思います。ただ、ビジネス的にどれぐらい広がるかというのは、現段階では市場のようすを見ているところです。
[風穴氏] 最後に、Alphaプロセッサは、競合するプロセッサに対してパフォーマンス面でかなりのアドバンテージを持っていると思いますが、今後はどうなっていくのでしょうか?
[Harbert氏] Alphaの今後のロードマップは、主要な2つの技術があることで、充分明るいといえます。まず、基本的には64bitプロセッサとしての強みがあります。
  そして、ひとつめの技術として、次世代のEV7プロセッサ(21264の次の世代のプロセッサ)の中に埋め込まれることになる、新しいスイッチングのテクノロジがあります。このテクノロジーによって、4、8、16、32、64といった、SMPのスケールアップが容易になります。
  2つめとして、さらに次の世代のEV8になりますと、プロセッサ内の同時マルチスレッディングが可能になり、独立した形で複数のスレッドを処理できるようになります。これにより、これまでの2倍から3倍の処理が可能になります。
  また、現在のAlphaアーキテクチャは継続的に改善されており、異なるアーキテクチャからの移行による困難などがなく、リーダーとしての位置を充分確保できると考えています。
[風穴氏] ありがとうございました。

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