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【Linux Conference 2000 Spring レポート】GTK+を使用したメールクライアント「Sylpheed」

2000年04月21日 00時00分更新

文● 沖中弘史

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 日本Linux協会(以下JLA)とソフトバンクフォーラム(株)は、Linuxユーザーを対象としたイベント“Linux Conference 2000 Spring(以下LC2000)”を東京・有明の東京ファッションタウンで開催した。開催期間は、18日から20日までの3日間。

 LC2000最終日のの20日、大阪大学基礎工学部システム工学科、山本博之氏により「Sylpheed ~電子メールクライアント&ニュースリーダーの設計と実装~」と題された発表が行なわれた。メールクライアントは常時使用するものだけに、誰もが使い勝手の良いものを求めている。会場は、「Sylpheed」に期待する人達の熱気であふれていた。

大阪大学基礎工学部システム工学科、山本博之氏画像
大阪大学基礎工学部システム工学科、山本博之氏

開発動機

 Emacs系メールクライアントに対し、

  • 設定が面倒
  • 重い
  • Emacsを立ち上げなければならない

といった不満があり、GUIを使用したメールクライアントには、

  • インターフェース的に気に入ったものがなかった
  • スレッド表示できないものが多い
  • ほかのメールクライアントとの共存を考慮していないものが多い
  • キーボードのみで操作することを考慮されていない
  • Netscape Messengerは不安定

など、いろいろと不満があった。やはり、自分の欲しいものは自分で作ろうと思い立ち、

  • 上記の不満の解消
  • 容易な設定
  • 徹底的なカスタマイズ

などを可能とし、なおかつ、それを美しいコードで実現するべく、開発を開始したという。

「Sylpheed」画像
「Sylpheed」の画面

「Sylpheed」とは

 「Sylpheed」は、電子メールクライアント兼ニュースリーダーで、

  • X Window System上で動作、GTK+を使用
  • 複数アカウント対応
  • スレッド表示
  • メールの自動/手動振り分け機能
  • XMLベースのアドレス帳
  • 新着、未読管理
  • ニュースリーダー機能(閲覧のみ)
  • メールやニュースのメッセージをMH形式で管理
  • APOP対応
  • gettextによるメッセージの国際化
  • ライセンスはGPL(GNU General Public License)

といった特徴を持っている。

 「Sylpheed」という名前は、某ゲームやマンガとは関係なく、空気の精という意味の、「sylph」という単語の派生語のようなもの。風のように軽快な動作、空気のように自然な操作感にしたい、という意味を込めてある。

 外観やインタフェースは、Windowsでは定番のメールクライアントの「Outlook Express」、「Becky! Internet Mail」などを参考にしている。また、操作系は「Mew」や「Wanderlust」等の Emacs系メールクライアントを参考にした。

 特にユニークな機能として、

「サブジェクトで寄せる」機能
スレッドが切れてしまうような場合に、同じサブジェクトのメッセージを1カ所にまとめることができる
全角文字で書かれた英数字を半角英数字に変換
全角文字の英数字が読みやすくなる
XMLフォーマットを使用したアドレス帳
ほかのアプリケーションで利用可能になる可能性あり
Emacs系メールクライアントと同様の操作感
「Mew」や「Wanderlust」からの移行、併用が可能

がある。

 現在のバージョンは0.3.2。動作環境としては、LinuxなどのUNIX系OSで、GTK+ 1.2.6以降が必要となっている。次のバージョンでFreeBSDへの対応を予定している。

将来の目標

 将来的に実装していきたいと思っているのは、

  • さらなる高速化を目指す
  • マルチパートMIMEのインライン表示
  • 通信部分のマルチスレッド化
  • 完全な国際化
  • IMAP4対応
  • SSL、IPv6への対応
  • PGP、GnuPG対応
  • GNOME対応

などを考えている。


 質疑応答の時間に、「メールなどの検索の時に、Namazuを使用した全文検索ができると、幸せになる人が多いと思うのですが」と質問したところ、「今後の予定の中に入れておきます」と力強いお返事をいただいた。「Sylpheed」の今後に期待したい。

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