日本Linux協会(以下JLA)とソフトバンクフォーラム(株)は、Linuxユーザーを対象としたイベント“Linux Conference 2000 Spring(以下LC2000)”を東京・有明の東京ファッションタウンで開催した。開催期間は、18日から20日までの3日間。
LC2000最終日のの20日、大阪大学基礎工学部システム工学科、山本博之氏により「Sylpheed ~電子メールクライアント&ニュースリーダーの設計と実装~」と題された発表が行なわれた。メールクライアントは常時使用するものだけに、誰もが使い勝手の良いものを求めている。会場は、「Sylpheed」に期待する人達の熱気であふれていた。
大阪大学基礎工学部システム工学科、山本博之氏 |
開発動機
Emacs系メールクライアントに対し、
- 設定が面倒
- 重い
- Emacsを立ち上げなければならない
といった不満があり、GUIを使用したメールクライアントには、
- インターフェース的に気に入ったものがなかった
- スレッド表示できないものが多い
- ほかのメールクライアントとの共存を考慮していないものが多い
- キーボードのみで操作することを考慮されていない
- Netscape Messengerは不安定
など、いろいろと不満があった。やはり、自分の欲しいものは自分で作ろうと思い立ち、
- 上記の不満の解消
- 容易な設定
- 徹底的なカスタマイズ
などを可能とし、なおかつ、それを美しいコードで実現するべく、開発を開始したという。
「Sylpheed」の画面 |
「Sylpheed」とは
「Sylpheed」は、電子メールクライアント兼ニュースリーダーで、
- X Window System上で動作、GTK+を使用
- 複数アカウント対応
- スレッド表示
- メールの自動/手動振り分け機能
- XMLベースのアドレス帳
- 新着、未読管理
- ニュースリーダー機能(閲覧のみ)
- メールやニュースのメッセージをMH形式で管理
- APOP対応
- gettextによるメッセージの国際化
- ライセンスはGPL(GNU General Public License)
といった特徴を持っている。
「Sylpheed」という名前は、某ゲームやマンガとは関係なく、空気の精という意味の、「sylph」という単語の派生語のようなもの。風のように軽快な動作、空気のように自然な操作感にしたい、という意味を込めてある。
外観やインタフェースは、Windowsでは定番のメールクライアントの「Outlook Express」、「Becky! Internet Mail」などを参考にしている。また、操作系は「Mew」や「Wanderlust」等の Emacs系メールクライアントを参考にした。
特にユニークな機能として、
- 「サブジェクトで寄せる」機能
- スレッドが切れてしまうような場合に、同じサブジェクトのメッセージを1カ所にまとめることができる
- 全角文字で書かれた英数字を半角英数字に変換
- 全角文字の英数字が読みやすくなる
- XMLフォーマットを使用したアドレス帳
- ほかのアプリケーションで利用可能になる可能性あり
- Emacs系メールクライアントと同様の操作感
- 「Mew」や「Wanderlust」からの移行、併用が可能
がある。
現在のバージョンは0.3.2。動作環境としては、LinuxなどのUNIX系OSで、GTK+ 1.2.6以降が必要となっている。次のバージョンでFreeBSDへの対応を予定している。
将来の目標
将来的に実装していきたいと思っているのは、
- さらなる高速化を目指す
- マルチパートMIMEのインライン表示
- 通信部分のマルチスレッド化
- 完全な国際化
- IMAP4対応
- SSL、IPv6への対応
- PGP、GnuPG対応
- GNOME対応
などを考えている。
質疑応答の時間に、「メールなどの検索の時に、Namazuを使用した全文検索ができると、幸せになる人が多いと思うのですが」と質問したところ、「今後の予定の中に入れておきます」と力強いお返事をいただいた。「Sylpheed」の今後に期待したい。