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【Linux Conference 2000 Spring レポート】日記のTCOを削減するハイパー日記システムの未来とは?

2000年04月19日 22時18分更新

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 “Linux Conference 2000 Spring”の初日となる4月18日、東京ベイ有明ワシントンホテル内の会議室で「hnsの過去、現在そして未来」と題したセッションが開かれた。講演者は、Hyper NIKKI System Projectの奥田篤士氏と田中知成氏。

 各種UNIX上で動作するWeb日記支援システム「ハイパー日記システム」(hns)について、そもそもWeb日記とは何なのかという説明から、日記システムの必要性や利点を解説し、hnsの現状と今後について発表を行なった。

  「ハイパー日記システム」という、一般には耳慣れないソフトウェアだったが、大して広くもない会議室に30人以上も聴衆が入り、みんな熱心に聞いていた。

Hyper NIKKI System Projectの奥田氏(右)、田中氏(左)

Web日記の成立はWebの成立と同時期

 奥田篤士氏によれば、Web日記はWebが成立したのとほぼ同時期から在存するという。まず、個人がメモ代わりにWeb日記を付け始めた。しだいに日記を書く人が増えるにつれ、分散した日記をたどるのが困難になってきたため、1995年には更新時間を知ることのできるリンク集(俗に「アンテナ」といわれるもの)「日記リンクス」ができた。1996年には非営利の日記リンク集「日記猿人」もでき、他人の日記についてコメントする習慣も成立して、個人的なものであった日記が時代を経るにつれ、よりまとまったものになっていったことがわかる。

 こうして、日記に求められる機能もより高度になっていったという。たとえば「自分の日記からリンクして、他人の日記のある段落に対してコメントを書く」場合、段落ごとにユニークなURIが必要になる。ユニークなURIでアクセスできる過去分のページがあって、(たとえばhttp://www.ascii.co.jp/diary/といったような)固定のURIに最近の日記が見られなければ不便である。そのため、結局は同じ内容のページが2つ必要になるのだ。

 さらに、日記を毎日HTMLで書くのは面倒であるなど、Web日記の総保有コストは高いという。そこで、上記のような作業を支援・自動化する日記システムによってコストを削減する必要があると説明した。

ハイパー日記システムとは?

 ハイパー日記システムは、上記のような手間を削減する「Web日記支援システム」である。段落ごとのアンカーの自動生成や、HTMLよりも簡単なマークアップ言語による日記の記述などにより、圧倒的に日記記述コストを削減できる。実際、これによって1年以上も日記が続いているユーザーが続出しているという。

 ハイパー日記システムでは、Webページは(静的なHTMLファイルではなく)アクセスするたびに動的に生成されるので、たとえば「過去3日間だけ表示」「1カ月まとめて表示」などインタラクティブに表示を変更できる。

 日記はテキストファイルで記述するので、ユーザーは好みのエディタを使うことが可能だ。また、mail2nikkiというツールを利用すれば、メールで日記を更新することもできる。つまり、i-modeなどの携帯端末からでも更新可能となっているのである。なお、携帯端末からの日記閲覧はi systemで可能だ。

 ユーザー数はおそらく200人ほどとのこと。個人ではなくプロジェクトとしてハイパー日記システムを導入した例としては、Debian JP日誌Kondara Project日誌などがある

オープンソースによる開発

 ハイパー日記システムのライセンスはGPLで、メーリングリストを中心に複数人によって開発が進められている。

 彼らの特徴として挙げられるのは、オープンソースソフトウェアにもマーケティングが重要だと認識しているところだ。広報しないと世に伝わらないということで、分かりやすいドメイン (h14m.org)を取得したり、fjなどのコミュニティへのアナウンス、新バージョン発表時のプレスリリース発行など、積極的に広報活動を行なってきたという。

ハイパー日記システムの未来

 今後リリースされるバージョン2.10では、次のような機能が予定されているとのこと。

キャッシュ機能
生成したHTMLをキャッシュしておくことで、約3倍の高速化を実現
ひみつ交換日記機能
日記を閲覧可能なユーザーを制限する機能を加える
アクセス制御機能
ホスト名/クッキー/リンク元/ブラウザ名などから、柔軟なアクセス制御を行なう
静的生成のサポート
現状ではすべてのページを動的に作っているが、静的なHTMLを作成する機能もサポートする
新Webインターフェイス (webif)
Webインターフェイスから日記、todo、予定を編集可能にする。また、FTPアップロードによる日記更新もサポートする

質問が多く飛び出した

 受講者のほとんどはハイパー日記システムをすでに知っていて、実際のユーザーも何人かいたため、かなり詳細な質問や実際的な要望が多くあった。

 一番質問が多かったのはインストールについてだ。「日記記述のTCOを下げるとはいえ、それ以前にインストールの手間がかかるのは面倒」という意見が出た。これに対しては、「インストーラが付属するようになって導入がかなりラクになったと思うが、GUIの設定ツールを作ることも開発者間で論議されている」とのことだった。

 また、すでに存在するFreeBSDのportsとDebian GNU/Linuxのdebパッケージのようなものを使えば、かなりラクになるという意見もあった(なお、RPMパッケージは誰も作ってないとのことだ)。


 Linuxコミュニティは日記をつける人が多くて、もはや流行とはいえないほど定着した感がある。巡回してみるだけでも面白いので、読者の方も日記リンク集などをたどってみてはいかがだろうか。

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