このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 次へ

すべてのデバイスはBluetoothに通じる

2000年04月03日 11時56分更新

文● 月刊ASCII network PRO

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
有線から無線へ。ワイヤレスネットワークの本格的な普及とともにBluetoothという無線インターフェイスが注目されている。現在、標準化団体のBluetooth SIGには、携帯電話とパソコン、チップセットのメーカーだけでなく、周辺機器、AV機器、POS端末、自動車、通信機器などのメーカーも含め、史上空前の1400社が支持を表明している。なぜBluetoohがこれほど注目されるか? ここではBluetoothの概要とその将来について、分かりやすく説明していきたい。

400社が支持する無線インターフェイス

 Bluetoothは、携帯電話、パソコン、周辺機器間でのデバイス間で1Mbpsのデータ送受信を可能にする無線インターフェイスである。仕様はNokia、Ericsson、Intel、Motorola、Toshibaを中心に発足した業界団体Bluetooth SIG(※1)によって策定され、1999年8月には正式バージョン1.0がリリースされている。

 現在、Bluetooth SIGには携帯電話、パソコン、周辺機器など1400社近くのメーカーが参加し、各社製品化を進めている状況だ。参加している顔ぶれをみると、携帯電話やパソコンのメーカーだけでなく、プリンタ、デジタルカメラ、時計、POS端末、ゲーム機、自動車、AV機器など非常に幅広い。そして、先頃SonyとMicrosoftが対応を表明したことで、業界標準仕様としての地位はますます高まり、さまざまなデバイスでの相互接続も実現される運びになっている。かつて、ここまで広範囲のデバイスで実装されたインターフェイスはない。

 Bluetooth SIGの成り立ちをみていくと、携帯電話とパソコンという2つの業界がどのように1つの標準仕様に動いていったかがよく分かる。ワールドワイドで大きなシェアを誇る携帯電話メーカーであるNokia、Ericssonは携帯電話同士のデータ交換を完全にケーブルレスで行ないたいという構想を約6年前から暖めていた。そして、将来的にデジタルデータを扱うコンシューマデバイスの中心であるパソコンとの接続が必須と考えたのだ。その結果、ほとんどのパソコンに内蔵されているCPUの元締めであるIntelに、この仕様の話を持ちかけたのがBluetooth SIG設立のきっかけである。一方で、当時IntelはMicrosoftとともにHomeRF(※2)を推進し、同じ2.4GHz帯域(※3)を利用する家庭内無線ネットワークプロトコル「SWAP(Shared Wireless Access Protocol)」の策定に動いていたが、結局Bluetoothの策定も主要メンバーとしてかかわることになる。これには「USBの無線化にBluetoothを採用する」というIntelの思惑があったのが大きな理由だ。パソコン向けの周辺機器接続用インターフェイスとしてIEEE1394ではなく、USBを積極的に推進するIntelとしては、何千万台もの携帯電話に搭載されると予想されるBluetoothをワイヤレスUSBとして採用することが最善の選択肢だったわけである。

※1 Bluetooth SIG(Special Interest Group)……1998年に結成されたEricsson、Nokia、IBM、Intel、Toshibaの5社をプロモータに結成された業界団体で、Bluetoothの標準化作業や普及、技術支援などを行なう。2000年1月5日現在のメンバーは1371社。また、当初の5社に加え、3COM、Lucent Technologies、Microsoft、Motorolaの4社がプロモータとして参加することになった。ちなみにBluetoothとはスウェーデンとノルウェーの統一国家を樹立した中世の王様の名前。電話業界とパソコン業界の統一を祈願してEricsson社が命名したという。

※2 HomeRF(Home Radio Frequency)……IntelとMicrosoftが中心とする業界団体HRFWG(Home RF Working Group・http://www.homerf.org/)によって策定された家庭内無線通信の規格。無線LANのIEEE802.11とコードレス電話で用いられるDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)の音声転送方式を組み合わせ家電用に簡素化したもの。家庭内のパソコンやコードレス電話での利用を想定しており、携帯電話での搭載を前提としたBluetoothと市場は異なっているとされている。このHomeRFの通信プロトコルがSWAPで、データ伝送速度は最大1.2Mbpsで、最大伝送距離は50m。データ伝送に周波数ホッピングスペクトラム拡散方式を用い、1秒間に50回のホッピングを行なう。6チャネルまでの音声チャネルも確保する。1998年6月には、国内でもHRFWGの日本委員会が発足している。

※3 2.4GHz帯域……免許不要で扱える周波数帯域で、ISM(Industrial Science Medical)と呼ばれる。欧米でも同帯域が開放されており、Bluetoothのほか、電子レンジ、IEEE 802.11やHomeRFのSWAPなどもこの帯域を用いている。同じ場所で同時に複数の無線通信を行なうことでパケット衝突(コリジョン)が起こるため、データ伝送速度の低下が懸念されている。なお、国内では1999年11月の郵政省の答申により、既存の2471G~2497GHzまでの26MHz幅に加え、2400~2483.5GHzの83.5MHz幅も利用できるようになった。

前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 次へ

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ