今年1月のCES(Consumer Electoronics Show)で、米Intelは、Linuxベースのインターネットアクセス機器である「Web Appliance」を発表した。これは、Celeronベースで、PCアーキテクチャではないハードウェアを持ち、インターネットアクセス用に作られたマシンである。
このマシンがLinuxであるということは、いろいろとニュースにもなった。日本でも、NECの運営するBiglobeが扱うのだとか。いろいろと評価はあるのだろうが、筆者が注目しているのは、IntelによるLinuxでのUSBサポートである。
ご存じのように、Windows 98でUSBが正式サポートされて以来、多くの周辺機器がUSB対応になった。いままでシリアルやパラレルで接続されていた機器もUSBに対応し、SCSIカードを必要としていたスキャナもほとんどがUSB対応だ。また、ネットワークカードや外付けモデム、携帯電話接続ケーブルなんかもUSBになり、いまやUSBに対応していない種類の周辺装置を探すのが難しいぐらいだ(もっとも、速度の関係もあって、外部記憶機器は対応していないものが多いが)。
おそらく、このUSB化は今年もすすみ、今年の終わりには、周辺機器はUSBで接続するのが普通になると思われる。というのは、いままでUSBをサポートしていなかったWindows NTがWindows 2000でUSB対応を果たすからでもある。
しかし、LinuxのUSB対応は、いまだ、十分とはいえない部分がある。1つには、カーネルでのサポートがようやく動くようになったばかりであることと、いまのところLinux用にドライバを提供するような周辺機器メーカーがないからだ。
Intelが、Web ApplianceでLinuxを採用するからには、なんらかの技術公開があるのではないかと思われるし、必要なら、メーカーに働きかけて、ドライバを提供するぐらいは行なうだろう。
つまり、インテルのWeb Applianceの登場は、LinuxのUSBサポートによい影響があるのではないかということだ。
実際、原稿書きという仕事をしていると、いろいろなことを調べなければならないのだが、IEEEで規格化されている1394は、比較的簡単にドキュメントが入手可能なのに対して、USBは、それほど簡単ではない。その理由の1つは、USBが企業同士が集まって作ったコンソーシアムによって規格を決めているからで、一般に広く仕様を公開するのではなく、お金を払って会員になってもらって、情報を公開するという形態だからである。
Linuxのさまざまな開発プロジェクトは、あくまでも個人ベースというものが多く、このため、企業から情報提供を受けられないこともあった。最近になり、さまざまな企業が「Linux業界」に参入しているようだが、USBのような完全に企業ベースの仕様については、参入企業のほうで、情報提供してもらいたいものである。
こうした情報提供やコードのフィードバックこそが、企業とコミュニティの共存には必要なのではないだろうか?
(塩田紳二)