渡辺裕一、古俣信行 著
エーアイ出版発行 ISBN 4-87193-699-6 3000円(本体) CD-ROM1枚付き
Linux上での画像処理といえば以前はxvでしたが、決して機能は高くない上に、シェアウェアでした。それ以外には何もない淋しい世界でしたが、最近になってGIMPが華々しく登場してきました。商用画像処理として定評のあるPhotoshopに似た機能があり、フリーでオープンときているのですから、一気に広まりました。出初めは安定性も悪く、しばしば落ちていたようですが、最近は何の問題もなく動くようです。
LinuxのCD-ROMには、大量のとても使い切れないほどのソフトウェアがついてきます。しかし、ソフトがついてきただけではなかなか使いこなせるものではなく、クールな画像を作るためのノウハウなどを伝授してくれる本は欲しいところです。Photoshop使いには、操作が極めて近いので説明書も不要でしょうが、GIMPで画像処理を始めようという私のような人には、一通り説明してくれる本はぜひ欲しい。
日本国内でGIMPが流行しだしたころ、早速GIMP本は出たのですが、とにかく出せば売れるから作ったという、内容が全然ない本でした。しかし、時間が経過し、GIMP使いも育ち、中身を伴った本が訳されたり書かれたりするようになりました。他人より先に行こうなどと考えないのなら、本はあわてて買うより、ちょっと待ってから買うほう方が賢明です。あるいは、原書を直接読むべきでしょう。
この手の本は、操作説明ばかりというのが通例ですが、本書はGIMPの環境設定についてずいぶん詳しく書かれています。訳書では当然ないか、あっても訳注程度で誤魔化されてしまう日本語の利用などは極めて丁寧に説明されています。最近のLinuxではGIMPは標準装備になっていますが、それでもソースからインストールまでの解説とフォントの扱いはたいへん詳しく、いろいろなことに役に立つでしょう。
実際の操作の説明は、多くの画像を用いながら、簡単に説明を加えるという方法で、延々と解説が続きます。本の最初にカラーの表示例が8ページだけありますが、それ以外は全部モノクロになっています。今では、GIMPはずいぶん一般的になってきたので、CD-ROMはなくてもいいから、もっともっとカラーページを増やしてくれるほうが嬉しい。
それにしても、GIMPの機能は多過ぎて、ほんの一部を使っているだけです。GIMPは、技術よりも、デザインのセンスが必要なソフトウェアで、私は永久に初心者の域を出そうにありません。