システムインテグレーター(以下SI)は、製品の性格と顧客の傾向によってスタイルが大きく変わります。今回から2回にわたり、「Red Hat Linux」を取扱うことによる、SIのスタイルの変化を考えます。Linuxをはじめとするオープンソースのソフトウエアがビジネスシーンに浸透することで、本格的に始まる純粋なサポートビジネスのお話です。今回は、大企業相手のSIを中心に考えます。
大都市のSIは、どうしても大企業を相手にすることが多くなります。大企業中心に営業をやっていると、基本的な営業姿勢が見えなくなることがあります。本来SIは、顧客のニーズに合わせてシステムを提案するのが仕事です。
しかし、大企業では、「ネットワークOS、200ユーザーライセンス以上をくれ」とか「スイッチングHUB、100Mと10M共用で16Port以上がほしい」など、考えなくても先方が指示してくれることがよくあります。これがエスカレートすると「△社の型番□□□を10台、レビジョンF以降のバグ対応済みがほしい」というように、言われるままに品物をそろえればいい場合もあります。
このような大企業相手のSIは、品揃えに加えて価格やスピード(在庫)が大きなアドバンテージとなります。また、先方の指示に適応する商品を選ぶだけなので、御用聞き的な営業になってしまいます。これなら、新人でも勤まってしまいます。
しかし、大手企業にLinuxが浸透しはじめると大きく変わります。技術力のある大企業などは、Linuxを自力で導入する傾向が強くなります。そうなると、インストールと設置作業をSIが行なうことが、なくなってしまうことが考えらます。つまり、「サーバビジネス」が、成り立たない可能性が出てくるのです。
しかし、いくら大企業に技術力があっても、Linuxのすべてに精通しているわけではありません。また、トラブルも考えられます。その場合、保険の意味で必要となるのが純粋なサポートです。Red Hat Linuxのリセラーは、Red Hat Linuxを販売するのではなく、サポートなどのサービスを販売するのです。勿論、Red Hat Linuxは、無償に限りなく近い形で提供されるはずです。これが、ライセンスビジネスとサポートビジネスの違いです。
オープンソースのビジネスユーザーへの普及は、ライセンスビジネスの終焉を招くかもしれません。そうなると、ハードウェアやソフトウエアの販売による収益からサポート提供による収益に大きく転換する必要があります。
さて、次回は、Red Hat Linuxを取扱うことによるシステムインテグレーターのスタイルの変化、中小企業編です。圧倒的に多い中小企業編について考えます。
