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東京農業大学のLinux―VA Linux Systemsジャパン導入事例

2001年01月15日 01時28分更新

文● 吉川

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東京農業大学のLinux導入にあたっては、

  1. 全体のシステムコストの低減
  2. インターネット関連事案の増加に対応するためのノウハウ蓄積

という目的があったようだ。1番の理由はいうまでもないが2番目では、今後のインターネット関連事案に対し、Linuxやオープンソースへのノウハウを蓄積していこうという意図があるという。

たしかに、「Linuxの採用」という点では、それほど珍しい事例ではない。だが、まだ日本国内ではお披露目もされていなかったVA Linux Systemsジャパンの製品を導入するというのは、日本での実績面を考えれば疑問が残る。

芳野氏、田中氏写真
東京農業大学学長室の芳野公一氏(左)と東京農業大学 国際農業情報学部 コンピュータセンター 事務主任 田中晋氏(右)

今回取材を受けていただいた広報担当と東京農業大学学長室の芳野公一氏、実際にVA Linux Systemsジャパンの導入にあたった、東京農業大学 国際農業情報学部 コンピュータセンター 事務主任 田中晋氏、そして同校にシステムを納入した、東芝エンジニアリング カスタマーサポート&サービス事業部ソリューション営業部主任 内田正文氏にお話を聞いた。

[日刊アスキー] FreeBSDも含め、大学関係におけるPC-UNIXの導入というのは、ある意味自然な形だと思います。ただ、システム導入という面から見ると、たとえば他社のPCサーバという選択肢もある中で、なぜ始動後間もないVAの製品を導入されたのでしょうか?
[田中氏] 実績に着目し、「VAの評価が全部出揃ってから」というよりも、「Linuxできちんとしたサポートを受けられるか」という観点で導入を決めました。事実、導入当時は国内のメーカーだからといって、満足なサービスを提供できるところはなかったと思います。 VAは米国でかなりメジャーな存在で、サポート面も含めて東芝エンジニアリングさんに「任せて下さい」と言われたものですから。
[内田氏] VAはナンバーワンの実績がありますし、既存のディストリビューションを買ってきてPCサーバにインストールして、というのではく、相応にカスタマイズされています。パフォーマンスも信頼性もあるわけです。今回、東京農業大学様の計画と、VAの製品がマッチして、この計画に参画させていただきました。
[田中氏] 日本で売っていない製品をわざわざ米国から取り寄せるというリスクはありましたが、それはVA JAPANさんのほうでサポートしていただけるという確約は取れていますので。
[日刊アスキー] では、Linuxですから当然価格面のメリットはあったとして、あとはサポートがしっかりしているというのが導入の理由ということになりますか?
[田中氏] そうですね。ご提案の中で、「ソリューション」という言葉も出てきてましたので、そこもポイントでした。それからサポートですね。米国での実績などもご紹介いただきまして、それだったら、今回お願いをしてみましょうということになりました。
[日刊アスキー] 採用を決められて、実際に導入したあとに問題などはありましたか?
[田中氏] 日本法人設立と同時期の導入だったので、若干早すぎたかな、という印象はありました。ただ、東芝エンジニアリングさんのほうでフォローしていただいたので、問題はありませんでした。
[日刊アスキー] 今後VAのシステムを入れてみたい、と考えていらっしゃる方に対して、メッセージみたいなものはありますか?
[内田氏] やはり、「性能が出る」ということに尽きるでしょう。そのほかに、サポート体制があるという点、また、技術革新が非常に早いということも挙げられると思います。技術が優れているのは、Linux.comの運営元でもあるという点も大きいでしょうね。
[日刊アスキー] 確かに、Linux企業の場合はオープンソースへの貢献度が高いかどうかという点も、信頼度に大きく結びついていますよね。

東京農業大学

[日刊アスキー] ところで、話は変わるのですが東京農業大学についても少し教えてください。都内なのにとても緑が多くていいところですね。
[芳野氏] 創設者は榎本武揚です。1891年に創立され、2001年で110周年を向えます。名前だけを聞くと、まっさきに畑や水田、畜産などを思い浮かべる方がいるのですが、バイオサイエンスをはじめ、醸造、造園、食品栄養学などカバーする範囲は広く、「農業」の名を冠した生物系総合大学ともいえます。

“「農業」の名を冠した生物系総合大学”の端的な例として、美術大学卒業後に同校の造園科学科に入学し、空間デザインを学ぶ人もいるという。

出身者はそれぞれ専門職として活躍している。我々が口にする加工食品のほとんどは、同校出身者の手によるものなのだそうだ。また、造り酒屋のご主人の多くは、同校出身者だという。なんと、アルコールを作ってもいい大学は、東京農業大学だけなのだそうだ。このように、実験・実習に重きをおく同校の教育方針を知った受験生は、「実学」を学びたいと、東京農業大学に入学するという。

同校のWebページ(http://www.nodai.ac.jp/)は、ぜひご覧いただきたい。特に学生へのインタビューページ、栄養科学科のページはおすすめ。今回のVA Linux Systemsジャパンの事例とはなんの関係もないのだが、東京農業大学の具体的な研究内容や学生生活がインタビューによって語られ、読み物としてとても楽しく、オペレーションにも工夫が感じられる。

システム構成の紹介部分でも少し触れたが、研究施設も豊富だ。今回取材した世田谷キャンパスのほか、厚木と網走(オホーツクキャンパス)にキャンパスを持ち、さらには宮古島に亜熱帯農場、富士には畜産農場を持つなど、さまざまな気候に特化したなんと東京ドーム75個分の学術施設を用意している。

現在の学長は農学博士の進士五十八(しんじいそや)氏。同氏は2001年度版の入学案内で「東京農業大学は、食と環境の問題解決に、具体的技術で、また実際的計画や行動で果敢に取り組んでいる」と語る。

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