著者 Matt Welsh, Lar Kaufman
訳者 小嶋隆一、山崎康宏
オライリー・ジャパン、ISBN 4-900900-00-1、6100円(税別)
著者 Matt Welsh, Matthias Kalle Dalheimer, Lar Kaufman
O'Reilly、ISBN 1-56592-469-X、$34.95 US
本書はLinuxの世界で最も有名な書籍であり、Linuxについて勉強するならこの本以外は考えられないというくらいで、バイブルと言ってもよいでしょう。私は、原書の初版、2版、そしてこの夏に出たばかりの3版のすべてをもっていますが、いざというときこの本くらい参考になったのはほかにありません。3版になって表紙のデザインがオライリーの標準的なデザインパターンになり、右上角には15万部以上売れたと書かれていますが、十分に納得のいく数字ではないでしょうか。
日本語訳は1996年4月に発行され、800ページを越える分厚い本ですが、まだLinuxの書籍がそれほど多くない当時、本書はLinuxのバイブルそのものでした。あまりにも分厚く持ち歩きがたいへんなので通読したことはありませんが、何か調べなければならないときなど、非常に役立ちました。インストールと若干のツールの解説くらいしかしていない本ばかりの中、本書は詳細な情報を提供している唯一の本として常に手の届くところに置いていました。ツールの説明はほどほどで、運用管理するために必要なことがあれこれ書かれています。しかし、すでに訳本が出てからでさえ3年半が経過して古さはいかんともしがたいものがあります。新版の翻訳が非常に望まれます。
Linuxのインストールが最終目標のような情けない人はともかく、もっと先へ行きたい人は、ぜひ英語版の最新版を手元に置いておきましょう。通読するのはたいへんでしょうが、必要なときに原書で探すことは必須です。文献と索引はしっかりしているので、manの情報では不足のときなどに利用できます。もちろん、通読できればそれに越したことはありません。
ネパールの技術者にUNIXを教える必要に迫られたとき、WindowsマシンにLinuxを入れ、第2版をテキストとして利用しました。「私に聞くより、テキストを読むように」と指導しておきました。本書を読み、情報源の探し方を心得てしまえば、さらに深い知識を身につけることはたやすいことです。つまらない本しか売れない日本より、こういう本をしっかり読んでいるアジア諸国の技術者の方が台頭してくるのは当然のことですね。
藤原博文
プロフィール
パズルを解くためにTK-80などに手を出したが、BASICの低速性が気に入らず、ついコンパイラを作ってしまった。それ以降はソフトウェアの世界から足抜けできなくなり、逆にパズルをする暇がなくてストレスが溜っている。UNIXはVAXの頃から使い始めすでに20年近く、Linuxは4年前より日常的に利用している。ホームページはhttp://www.pro.or.jp/~fuji/