10月25、26日の2日間、東京の明治記念館にて、インプライズの製品を中心に、テクノロジー、活用事例、今後の技術動向等を紹介する開発者向けのイベント、「Inprise Conference 99 Tokyo」が行なわれた。
今回は、Linux関連の各セッションの模様をお届けする。
InterBase Product Address
インプライズのInterBaseプロダクトマネージャ加藤大受氏により、「InterBase」の特徴、および将来の展開について解説された。
「InterBase」の特徴としては、最新の技術を素早くとりいれること、そしてエンタープライズレベルのRDBMSとしては、扱いが容易で管理の手間がかからないこと、という説明があった。また、Windows、Linux、SCO UNIX、Netware、Solaris、HP-UX、AIXといった多彩なプラットフォームで動作することも、その特徴の一つだという。
そして、次期バージョンのInterBase 6については、現在英語版のfield test2をリリースしていて、同じく英語版の製品版を2000年第1四半期にリリースを予定しているという。InterBase 6の新機能としては、管理ツールの強化、接続形態の強化、SQL99への準拠とSQLの拡張、組込み用途へのソリューションがあげられた。そのほかにリードオンリーメディア(DVD-ROM、CD-ROM等)上にある、データベースの利用のための拡張がはかられるという。また、データ型についても、64ビットの数値型に対応し、ANSIへの準拠を高める等の対応も発表された。
JBuilderによるWebアプリケーション開発
インプライズの藤井等氏により、Webアプリケーションを開発するためにJava Servletを利用する方法が紹介された。
まず、Webアプリケーションは、ブラウザによって動作が異なる可能性のあるアプレットを使わずに、任意のブラウザで表示可能なHTMLベースのデータのやりとりを行なうべきである、とした。 そして、Webクライアント自身にダイレクトデータベースアクセスをさせない方法として、Javaを利用した解決策があげられた。
Servletの特徴については、「Servletエンジンで実行されるため、CGIよりも高速」であり、「標準のAPIを利用することにより、プラットフォームに依存しないオープン性が確保できる」ことと、「Javaの膨大なAPI群を利用可能なため、開発が容易で、高機能なものが作成できる」とした。
そして、「初期化(init)」「要求の処理(service)」「破棄(destroy)」というServletのライフサイクルが実際のコードを元に解説された。また「要求の処理」については、さらに細かく「要求 - パラメータの取得」「処理 - ビジネスロジック」「出力 - HTMLの生成」という機能に分けることができることが解説された。
このような機能の分離により、それぞれの機能において以下のような利点が生ずる。
- サーバに対する要求を、パラメータを介したデータの受渡しとできるため、ユーザーインターフェイスであるHTMLとの連係が容易になる。
- 処理を別のCPUで行なうことができるため、スケーラビリティの問題を解決できる。
- 出力部分を単独で設計できるため、Webデザイナーとの役割分担が可能となる。
最後に、インプライズストアを実例としてあげたケーススタディが行なわれた。
Linux Servletプログラミング
インプライズの加藤大受氏により、Linux環境におけるJBuilder、InterBase for Linux、InterClientを利用したServletの構築方法についての解説が行なわれた。
Servletを選定する理由としては、藤井氏と同じく、「ユーザーインターフェイスとロジック部分を切り離すことによる高い拡張性」、「プラットフォームに依存しないこと」があげられた。また、「他のツールとの連係」、「JSP(Java Server Page)の活用ができること」、「パフォーマンスが高く、情報も豊富なApacheとApache JServを利用することができる」こともその理由だという。ちなみに、インプライズのWebサイトでもApache+Apache JServという環境を活用している、という。
そこで、なぜ、Linuxを利用するかだが、「コストパフォーマンス」「OS部分のソースコードが公開されていることにより、問題の切り分けが簡単」、「情報の入手がしやすい」等の、理由があげられた。
次に、実際にLinuxでS ervletを利用するための環境についての説明がなされた。必要なソフトウェアは、以下のようなもの。
- Webサーバ:Apache
- Servletエンジン:Apache Jserv
- JSDK(Linux版は無いため、Solaris版を流用)
- JDK(Blackdown or IBM)
ただし、現在、Linux版のJBuilder製品版が存在しないため、Windows環境でServletを開発し、そのServletをLinuxに転送して使うことになる。
その後、日本語の取り扱い、iMode、cdmaOne等のブラウザに対応するための注意点といった、実践的なテクニックの紹介が行なわれた。
「Oracle8i for Linuxのご紹介」
日本オラクル(株)パートナー事業本部ビジネス開発部の池田秀一氏より、Oracle8i for Linuxの紹介があった。氏の講演は、Oracle8iをインターネットコンピューティングのためのデータベースとして、位置付けるものだった。
まず、Oracle8iの「Windows NT+SQL Server」の組合せに対するアドバンテージとして、Oracle8iは幅広く、安定したプラットフォームをサポートしている点をあげた。そして、「開いていないことがあるコンビニエンスストアには、客は来なくなる」という例をあげ、インターネットビジネスで使われるサーバでは、停止することは命とりであるとした。
また、Windows NTについては、「Windows 2000になりAlpha CPUのサポートもなくなること」、「バージョンアップ項目がサーバ向けのものではない」ことなどをあげ、クライアントとしては良いが、サーバ用途では期待が持てないとした。
そして、今後のインターネットアプリケーションにおける鍵はJavaであるとし、現在のOracle8i 8.1.5ではJavaをPL/SQLを使って処理しているが、8.1.6からはOracle8i内部にJavaVMを持ち処理するようになると語った。
最後に、日本オラクルのLinuxへの取り組みとして、Oracle8i for LinuxがNECによりOEM出荷されたこと、OracleによるLinux技術者認定制度「ORACLE MASTER Linux+」がスタートしたこと、小型のLinux専用サーバ「blue grass」へOracle8i for Linuxバンドルを予定していること、などをあげた。なお「ORACLE MASTER Linux+」については、「ORACLE MASTER GOLD」レベルの試験問題が用意されるとのこと。また、すでに存在するものとして、Oracle8i for Linuxへの移行をサポートする「Linuxマイグレーションセンター」、「Oracle&Linuxシステム構築プログラム」をあげた。
このほかLinux関連では、風穴江氏による「Linuxと業界動向」というタイトルのLinuxの現状と、将来像、および、業界動向についての解説が行なわれた。開発者向けとあって、どの講演も実際の現場にいるプログラマ、SE向けで内容も濃い実践的なカンファレンスだったといえる。