Debianとの互換性は問題なし
RPM系ディストリビューションはRed Hat・TurboLinux・SuSE・Vine Linuxなど数多くあり、それぞれパッケージのフォーマット自体は同じとはいえ、構成が異なっているので、ディストリビューション間でパッケージの互換性があまりない。それに対してDebianは、DEBパッケージがDebianでしか使われてこなかったこともあって、RPM系ディストリビューションのような問題はPreview 1発生していない。
しかし、Corel LINUXのようなディストリビューションの登場で、RPM系と同じような問題が起こってしまうのではないかと心配する人も多いだろう。
結論から言えば、Corel LinuxはDebianとの共通点が多いので、今のところそういう問題は発生していない。Corel LINUXに含まれるパッケージのうち、Debianに含まれていないものは、
- wp-icons (Corel WordPerfectのアイコン)
- wxp-free (Corel WordPerfect 8.0本体)
- communicator-corel (Netscape Communicatorのアイコン)
- qt-corel (QTライブラリ)
- kde-corel (Corelが拡張を加えたKDE)
だけだ。あとはDebianのパッケージをそのまま使っているので、apt-getなどでDebianのパッケージをインストールすることも可能だった。
ただし、Preview 1だから仕方ないのだが、Debianのポリシーや「常識」に則っていないパッケージが目立ったのが残念だ。たとえば“kde-corel”は、KDE全体が1つのパッケージになっている(本来なら、各機能ごとにパッケージを分けてくれたほうが扱いやすい)うえに、スクリプトを置くべき“/etc/init.d/rc2.d/”にバイナリへのシンボリックリンクがあるなど、「お行儀」がよくない。試しにlintian(DEBパッケージのチェッカ)をかけてみたら、警告とエラーが合わせて549も出てしまった。大半は基本的なミスにすぎないので、リリースまでには直っていることを期待したい。
総合評価
今回のプレビュー版を見る限り、DebianをユーザーフレンドリにしようというCorelの試みは、かなり成功しているようだ。KDEのユーザーインターフェイスは理解しやすいし、特に初期インストールの容易さには目を見張るものがあった。しかし、dpkgののフロントエンドであるGet-Itでは、パッケージのインストールは相変わらずインタラクティブに行なわなければならないなど、Debianそのものがかかえている問題は残っているが、解決するにはCorel LINUXではなくDebianに手を加える必要があるだろう。それに、このようなものはほかのどのディストリビューションも抱えている問題だ。
あくまで今回のテストは、Preview 1に対して行なったものだが、それでも本当にLinuxをデスクトップで使えるものにできるのでは、という可能性を感じることができた。