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e-businessを知る

1999年09月29日 06時14分更新

文● 月刊アスキーNT

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 では、実際にe-businessはどのように行なわれているのか? IBMでは、ネットワーク・コンピューティングを4つのセグメントに分けている。4つのセグメントとは、「エレクトロニック・コマース」「イントラネット」「インター・エンタープライズ(エクストラ・ネット)」「デジタル・インフラストラクチャー」である。各セグメントは、さらに細かい構成要素で構成される(図2)。セグメントは、その名前から大体の判断ができるが、具体的な事例を4つのセグメントに照らし合わせ、e-businessを浮き彫りにしてみる。なお、事例の中には、IBMがソリューション提供していないものも含まれる。あくまでも“e-businessの事例”として捉えていただきたい。
図2
図2 e-business4つのセグメント

エレクトロニック・コマース

 まずは、最近もMicrosoft Moneyの自社対応版を出し、ネットワークに対して意欲的に活動する東京三菱銀行のインターネットバンキングだ。年中無休の24時間体制でサービスが稼動しており、サービスのメニューは、残高照会、入出金明細照会、振り込み・振り替え予約とその取り消し、となっている。

 金融機関ではそのほか、インターネット・バンキングの世界標準である「GOLD」に対応した、さくら銀行(http://www.sakura.co.jp/bank/)のWeb Bankingも存在する。顧客がWeb経由でアクセスする場合は、JavaのServletが銀行側バックエンドとのやりとりを仲介する。

 エレクトロニック・コマースのセグメントでユニークなのが、コンビニエンスストア「ローソン」や「サンクス」に設置されているMMS(MultiMedia Station http://www.ibm.co.jp/mms/)だ。MMSにより、コンビニエンスストア店舗内で売れなかった大型商品が扱えるようになった。物理的な制約を、e-businessが取り除いた一例といえる。

イントラネット

 流通分野では、ヤマト運輸(http://www.kuronekoyamato.co.jp/index/)がIBMのWebサーバ「390 Web」を使用して、事務処理の効率化とともに便のステータスを問い合わせるシステムを構築している。また、サントリーでは、顧客情報システムによって営業から生産部門まで情報を共有し、顧客からの要望への対応時間短縮と満足度向上を達成した。紀伊國屋書店(画面2  http://www.kinokuniya.co.jp/)の事例も有名だ。紀伊國屋書店では、顧客の発注作業の低減と、自社の作業効率化を図った。

紀伊國屋書店のWebページ
画面2 バーチャル書店として、日本では定番となっている紀伊國屋のWebページ

迅速な情報提供/共有を実現したのが、岩城硝子(画面3 http://www.igc.co.jp/def.html)の事例だ。製品情報の一元化が可能になり、多種多様なガラス製品のカタログもデジタル化され、作成/改訂期間の短縮につながっている。

岩城硝子のWebページ
画面3 岩城硝子。カタログは、目次、製品名、品種の3つのカテゴリで検索できる

インター・エンタープライズ(エクストラ・ネット)

 このセグメントでは、なんといってもクライスラーが特徴的だ。本社と部品メーカーで情報を共有することにより、新車の開発期間を短縮したほか、部品の調達コストも低減された。また、IBMの事例ではないがパソコンユーザーにも身近なデル・コンピュータ(http://www.dell.co.jp/)も、部品のサプライヤや物流を担当するFedExとの連携により、製品管理コスト削減を行なっている。デル・コンピュータの場合、インターネットによるダイレクト販売も連携しており、顧客は自分が発注したマシンの組立状況や発送ステータスを、Webを使って確認可能だ。

デジタル・インフラストラクチャー

 このセグメントは、上述の3つのセグメントの、いわば下層にあたる存在だ。これには、IBM事例ではないがたとえば東京都の臨海副都心マルチメディア実験などが当てはまる。臨海副都心マルチメディア実験は、地域産業の情報化を促進するため、CATV網でデータ通信を行ない、クライアント側はセットトップボックスを使って情報を取得/発信する。コンシューマ向けのデータ通信実験として、注目を集めている。デジタル・インフラストラクチャーには、このほか光ファイバや衛星を使ったデジタルデータ放送なども含まれる。

 デジタル・インフラストラクチャーの場合、ほかのセグメントと異なるのは、すでに「business」の範疇を超えていることである。社会インフラそのものの話と言ってもよい。e-businessを、ネットワークを契機とした社会の変革と考えれば当然の帰結といえる。e-businessの概念が広まり、行政サービスもネットワークにつながって開放されれば、住民票を取るために会社を半日休んだり、免許の書き換えで並ぶ必要はなくなる。

 以上4つのセグメントは、いずれもわれわれ個人の生活にも大きくかかわってくる。e-businessとは、単なるビジネスの変革というよりも、社会に存在するすべてのモノがネットワークにつながることによって、最終的には生活そのものがより便利に進化する端緒といえるかもしれない。

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