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Linuxcare Asia Pacific Business Development Managaerインタビュー

1999年09月27日 00時00分更新

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 Linuxのサポートを行なうLinuxcareが、本格的に日本国内でサービスを展開する。その詳細について、Linuxcare Asia Pacific ManagaerのJay Powell氏に聞いた。Powell氏は、日本にも住んでいたことのある日本通。インタビューも日本語で行なわれている。

jay Powell氏
Linuxcare Asia Pacific Business Development Managaer Jay Powell氏

Linuxcareの日本における展開

[アスキー]  日本国内でのこれからの戦略をお話ください。
[Jay Powell氏]  我々には4つのビジネスエリアがあります。1番目は、24時間7日間のサポートです。我々のサポートは、ディストリビューションにも、ハードウェアにも特化せず、Linux本体に対して、深いところまで見ていくことができます。いま80人の社員がいますが、Windows NTやUNIXのサポートはやっていません。Linuxのみに特化しています。日本では、日本の営業日の営業時間に、日本語のサポートをやります。日本では日本語でサポートをします。
[アスキー]  海外では24時間のサポートということですが、日本では営業時間のみですか?
[Jay Powell氏]  日本語での24時間サポートは可能です。日本で事務所をオープンしたら、日本の営業時間は日本で電話対応をして、日本の営業時間外になると、自動的にアメリカに電話がかかるようにします。それは問題ない。メールもありますし、我々のサポートは、ほとんどWebベースでデリバリーしますので、地域は関係なくなります。
 我々にとって大切なのは、「Distribution Independent」という立場です。現在、Red Hat(日本語redhat)を除けば、LASER5 Linuxは日本のマーケットで2番目に大きなディストリビューションだと思います。1番はTurboLinuxで、2番目がLASER5 Linux 6.0。それからほかにもたくさんのいいディストリビューションがあります。Vain Linuxなどですね。我々はすべてをサポートしたい。
[Jay Powell氏]  今スタッフが80人いるのですが、その80人がすべてLinuxのサポートをしています。Windows NTやUNIXのサポートは行なっていません。日本語の場合は、日本の営業日の営業時間に、日本語のサポートを行ないます。これは日本のお客さんのためにやらねばならない。日本でのサポートを英語で行なうことはありません。
 サポートの次が教育のコースウェアです。これもディストリビューションから独立しています。Linuxcareの教育コースは、UNIXの“グル”が作っているということです。たとえば、Sambaのコースならば、Sambaチームの1人であるAndrew Tridgellさんが作っています。彼はLinuxcareの社員なのです。これらの教育コースは、来月から日本語バージョンとして訳し始めます。
[アスキー]  実際に教えるのはそういったグルの方々ですか?
[Jay Powell氏]  今は私たち(グルも含めた)Linuxcareが教えることができますが、将来は日本の教育機関と契約をして、やっていきたい。日本のパートナーの先生がLinuxcareに来て、勉強してもらって、日本で実施する。そういう形のパートナーシップの話も進んでいます。
 3番目がCertification(認定)です。こちらもディストリビューションとは独立しています。我々のCertificationの場合はカーネルレベルでスタートします。たとえば……日本の大きなハードウェアメーカーを何か選んでください
[アスキー]  では、NECで。
[Jay Powell氏]  わかりました。たとえば、NECさんでしたら、NECさんが我々にハードウェアの認定を依頼した場合、我々の認定の最初のステップとして、そのハードウェアにカーネルをインストールします。一番最近の安定カーネルです。そこですべてのプロセスがうまく運用できるかどうかをテストする。そして次が最近の開発版カーネルでテストします。さらにそれから複数のディストリビューションでテストします。たとえば、NECさんが5つディストリビューションを選んだら、そのディストリビューションでテストするわけです。そして、もし問題があれば、報告をするのです。1つのディストリビューションに特化した認定ではなく、「Linuxの」認定をもらえる。ここがユニークな点です。こうしたCertification業務も日本で展開したい。
[アスキー]  すでに日本企業の製品に認定が出たのですか?
[Jay Powell氏]  Certification業務の契約は昨日サインしました。それから、Dellコンピュータの製品は世界単位で認定を出しています。
 これ大事なポイントなのですが、さきほども言いましたが、ディストリビューションは関係ない。ほんとうのLinuxCertificationです。なぜそれが可能なのかといったら、我々の社員は、ずっと前からLinuxに取り組んでいます。ほんとうのLinuxのグルがいる。そういう人達が認定を行なっています。LinuxcareのCertificationは1日や2日でできるものではなくて、3週間くらいかかります。本当に深いところまでテストするのです。
[アスキー]  認定業務を日本企業と一緒になって行なうことは?
[Jay Powell氏]  色々なケースがあると思いますね。たとえば簡単なデスクトップのマシンだったら、LinuxcareのSanFranciscoのラボでテストすればいい。しかし、大きなマシンの場合は、その会社のエンジニアと一緒にテストをやります。たとえばLinuxcareのエンジニアがその企業に行って、日本でテストする可能性もあります。現在、1つのハードウェアメーカーさんと一緒にそういったことをやっています。ほかのパターンとしては、それからその会社の米国支店に行ってテストする場合もあるでしょう。いろいろな可能性があります。我々はすごくフレキシブルに動くことができますから。お客さんの要望を聞いて、契約や条件を考えます。
[アスキー]  認定にパスしたマシンにロゴを貼ったりするのですか?
[Jay Powell氏] 付けています。
[アスキー] どういったロゴですか?
[Jay Powell氏]  それはハードウェアメーカーさんにお任せです。私としては、「Wintel」ではなく、「Lintel」といったロゴを見てみたいですね(笑)。ただ、我々の認定のマークはあります。それはメーカーさんのWebページに付けていただけます。メーカーさんがマシンの外側に付けたいのでしたら、それもできます。また、我々の認定を受けたら、Linuxcareのページにも情報が出ます。なぜなら、まだアメリカでも、「Linuxをやりたいけど、どういうハードウェアで動作するか分からない」といった場合がある。LinuxcareのWebページに行けば、我々が認定したことがあるハードウェアでベストが選べます。
 Certificationの次はProfessional Serviceで、これは基本的にコンサルティングです。これも日本で行なえれば、やります。
[アスキー]  独自のハードウェアを使っているところなどで、もし認定のテスト中に動かなかった場合、ドライバ等の開発に協力することもありますか?
[Jay Powell氏]  先ほど言ったProfessional Servicesでは、ドライバの開発を行なうことができる。コミュニティと力を合わせることもできるでしょう。現在、OpenSorceコミュニティは世界中に広がっていますが、中心はSanFranciscoのベイエリアですよね。そのコミュニティとの関係が強くできるから、たとえば3COMのネットワークカードならば、3COMの開発の担当者をよく知っているから、すぐに連絡できる。違うカードだったら、コミュニティと一緒に作ったり、「こういうものが必要だよ」と報告することができる。我々とOpenSorceコミュニティとのリレーションシップは非常にいいと思う。
[アスキー]  日本のコミュニティとの関係は?
[Jay Powell氏]  色々なユーザーズグループに入っています。東京Linuxユーザーズグループ「TLUG」にウチのメンバーもはいっていますし、TLUGのWebAdministratorが我々の社員だったりします。
[アスキー]  日本人スタッフはいらっしゃいますか?
[Jay Powell]  現状で、アメリカ人4人が日本語を話すことができます。全然問題ない。それから日本人スタッフも本社にいます。
[アスキー] 日本の技術者を雇うといったことは?
[Jay Powell氏]  日本人のエンジニアは欲しい。必ず。日本の事業所を作るときに、必ず日本人を入れたい。僕はほかの会社で日本法人のスタートアップをやったことがあるのですが、外資系の大きな間違いが、ガイジンが日本に来て、「入れてください」といいますね。ところが、その外国人が日本のやり方が分からなかったら、それは困る。私の意見では日本人を入れたほうがいい。その日本人と相談してマーケットをどうするか決めたほうがいいのです。
 これは、すぐにでも入ってきてほしい。今年の終わりか来年のQ1あたりでも。心配なのが、エンジニアリング技術より、日本語と英語を話せるエンジニアで、Linuxに詳しくて、仕事を変わりたい人を見つけるには時間がかかるという点です。
 ですから、日本法人を作っても、1年で5人くらい入る形になると思う。マーケットが大きくなれば、もっと人を増やす。もっと人を入れたいのですが、最初は5人くらいで始めたいと思います。
[アスキー]  日本の拠点はLinuxcareが直接作るのか、日本のパートナーと協力して作るのか、どちらでしょうか?
[Jay Powell氏]  日本のパートナーと作りたいのです。しかし、タイミング的にはすぐに始めたほうがいいと思うから、取りあえずパートナーを捜しながら日本の事務所を作ろうかと思います。あとでパートナーを追加できると思います。もちろん今いてくださればいいのですが。
[アスキー] ターゲットは? たとえば僕のような個人ががサポートを受けたい、というのと、会社がサポートを受けたい、といった状況があると思うのですが。
[Jay Powell]  OK、サポートは2つの市場があります。1つは大きな会社、エンタープライズですね。それは我々はやりたい。もうひとつがディストリビューションベンダーのマーケット=リテールマーケットですね。エンドユーザーが秋葉原に行って、なにかディストリビューションを買って、持って帰ってインストールして、そしてサポートが必要になった場合、リテールベースのサポートをやらなければならない。そのマーケットにも興味があったのですが、我々はエンタープライズ向けサポートを行ないます。それは、ほんとうに深いところまでLinuxを追究できるからです。もちろんインストールの問題にも答えられるけれども、一番やりたいのが、ミッションクリティカルのサポートやエンタープライズのサポートなのです。
[アスキー]  エンタープライズ向けミッションクリティカルサポートとなると、OracleといったRDBMS製品なども絡んでくると思いますが、そういったものを使っているユーザーになると、必ずしもサポートの範囲がLinux、特にカーネルの範囲に留まらないと思うのですが、Linuxの上に乗っているアプリケーションのサポートも含まれるのですか?
[Jay Powell]  我々はメジャーディストリビューションのOpenSorceというものだったら、ソースコードが見えるのであれば、すべてサポートします。Apach、Innなど。逆にコードが見えなければサポートできない。
[アスキー]  サポートに関してはアメリカと同じメニューだけではなく、日本に特化するものは行ないますか?
[Jay Powell]  たとえばATOKのようなメジャーなアプリケーションの場合ですが、ATOKがOpenSorceかどうか僕は分からないけれども、すべてのディストリビューションに入ってくるでしょう。すると、たぶんATOKに関する質問をもらうと思います。ただOpenSorceしていないと、答えられるかどうかはわからないのですが。
[アスキー]  プロプライエタリなソフトウェアのサポートはわからない、というお話でしたが、エンタープライズ向けにフォーカスしていくというのであれば、そのシステムのほとんどにプロプライエタリなアプリケーションが混じっている可能性があるのでは?
[Jay Powell氏]  確かに。しかし、我々はSIと仕事をしたい。SIがLinux上で大きなアプリケーションの開発をし、そのSIと一緒に我々が仕事をしたら、システムの内容は分かる。コードもわかる。だからプロプライエタリのものが入っていてもサポートはできる。
[アスキー]  PostgreSQLやPHP3でシステムを作っていこうという盛り上がりがあって、ほかの業種からの参入もあるようなのですが、こういう人達もターゲットに?
[Jay Powell氏]  ターゲットというよりも一緒にやりたい。Linuxのアプリケーションを作りたい、Linuxのシステムを入れたいというところで、話を進めていきたいですね。我々には経験がありますから、その経験をみなさんと共有したい。今の日本のLinuxのマーケットは、6カ月前と全然違うことになっています。6カ月前は会社の中の“社員”が話をしているレベルだったのが、今は会社として動いています。
 ここがすごく面白い点です。日本でこれだけ早い展開というのは、あまり見たことがない。
[アスキー]  日本で一緒にやっていくというところで、契約しているSIさんはありますか?
[Jay Powell氏]  NDAがありますから、まだプレスリリースを投げていないですけれども、けっこうあります。でんさテクノ東京さんの話はすでに公開しています。
[アスキー] 何社と契約されているのでしょう?
[Jay Powell氏] 10月からの契約で、5社くらいです。
[アスキー] 日本のエンタープライズ市場で足りないものはなんでしょうか?
[Jay Powell氏]  エンジニア。UNIXに詳しい人間がいるから、Linuxも問題はないと考える場合が多いのですが、LinuxはUNIXではありません。まずそれを第一に理解しないと行けないと思う。本当のLinux向けのエンジニアが出てきたら、もっとうまいことになると思う。
[アスキー]  たとえば、Windows NTが盛り上がったときに、Visual Basic(VB)という開発ツールがあって、時期に新入社員であったエンジニアならば、VBを使って、Win32を勉強してというステップがあったかと思うのですが。その点Linuxは?
[Jay Powell氏]  Linuxでは何が足りない? といえば、アプリケーションや開発環境です。LinuxはDesktopに関してそんなに強いものではない。強いけれども便利なものがないと思う。もうちょっとデスクトップ用アプリケーションが必要ですね。VBのような、今まで使った環境がLinuxのために必要です。
 ここ5年間くらいのアプリケーションを見たら、VBを使って、NTベースで作っている。いままでのコーポレートのように、「Intelの上でこれををやります。NT上のナントカをやります」といった形態をLinuxでも行なうのであれば、VBのような開発環境が必要だと思います。
[アスキー] ライバル会社は?
[Jay Powell氏]  ライバルはある。ただ、我々は本当に深いところまでサポートできる。担当者にはグルがいますし、専門エンジニアがたくさんいます。我々みたいな能力を合わせていくと、コンペティションとの距離は遠いと思います。
 Linuxcareを作ったときに、周りにはLinuxのハードウェアベンダーさんやディストリビューションベンダーさんがあった。皆さんが心配することは、「Linuxを入れたら、どこがサービスを入れてくれますか?」ということで、そのためにLinuxcareを作りました。世界で初のLinuxサービス会社です。そこから成長を続けたし、経験もある。ですから、“コンペティション”というよりは、一緒に働いてマーケットを広げていきたいですね。たとえば、でんさテクノ東京さんです。彼らと一緒にLinuxの市場を広げるのであれば、すごくいいことだと思います。だから、コンペティションというより、将来のパートナーかもしれないと考えています。今のLinuxの市場は、いろいろなチャンスがあります。マーケットを広げるのだったら、皆さんのためにうまいことができると思います。
 日本の経験やマーケットの能力と、我々のLinuxの能力をあわせたら、非常にいいコンビになるかもしれない。そういうことを考えています。
[アスキー]  アジアパシフィックは日本以外では?
[Jay Powell氏] 色々な国で話しています。韓国、それからシンガポール、中国ですね。台湾にもお話をしていたのですが、地震で心配です。ただ、契約には至っていません。それから、オーストラリアには事務所を作りました。事務所を開設しているのは、オーストラリアとヨーロッパです。
[アスキー] ありがとうございました

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