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World PC Expo 99レポート Vol.4 「生越昌己氏講演: Linuxをどのように情報システムに組み込むか」

1999年09月12日 00時00分更新

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 PC World Expo 99(主催:日経BP)において、9月9日に「Linuxが情報システムを変える」と題したセミナーが行なわれた。前半では「Linuxがもたらす新しいコンピューティング環境」と題して、日本Linux協会会長の生越昌巳氏による講演が行なわれ、後半では「オープンソースとビジネス・システム」というテーマでパネルディスカッションも行なわれた。

 有料のセミナーではあるが50人程度の受講者が参加し、ビジネスシーンにおけるLinuxに対する関心の深さが感じられた。

 Linuxを情報システムに対してどのように組み込んで行くか、というテーマで行なわれた、生越昌己氏の講演の模様をお伝えする。

生越昌己氏
生越昌己氏。氏自身の経験に基づく現実に即した話を聞くことができた

 生越氏は、まず現代の情報システムに必要なものは「柔軟性、即時性、可用性、信頼性、経済性」であるとし、メインフレーム(基幹系システム)とLinuxの比較が行なわれた。「現在のPCハードウェアによるLinuxのシステムは、CPUや処理能力だけを比較すればメインフレームと大差はない」としながらも、基幹系システムの優位な点としては「信頼性、ソフトウェア、利用技術」とし、Linuxの優位な点としては「柔軟性、動作の軽さ、ソースコードの公開によるシステムの明解さ、柔軟なインターフェイス、豊富なフリーソフト、コミュニティの存在」があげられた。

 そして「Linuxは、情報システムに使えるコンピュータになりつつある」という。そして今のLinuxシステムに足りないものについて「信頼性。さらに、アプリケーション。システムトランザクションモニタ、メインフレームと同じ信頼性をもったデータベースといったものが必要」とした。

 次に、現在生越氏が開発に関わっているLinuxによるシステムを例にとり、Linuxの劣る点をカバーするために利用している、クラスタリング技術についての解説があった。「クラスタリングとは、処理を複数のコンピュータで行なうことにより、信頼性を向上させたり、1台あたりの負荷を減らす、すなわち処理能力を上げることができるものである。その結果、メインフレームに対するLinuxのマイナス面をカバーすることができる。さらに、Linuxによるシステムはメインフレームに比べコストパフォーマンスが高いので、経費を削減することもできる」とした。

 さらに、Linuxに対してなされている、無用な心配、および誤解を取り上げ、それに対する、回答を提示した。

 まず、「Linuxはフリーなので亜流ができる」という心配に対しては 、「根幹の部分に関しては、どのディストリビューションも同じものを使っているので心配無い」とし、次に「Linuxは保証がない」事については「ビジネス的にそれが必要なら、サポートしてくれる会社と契約を結べばよい。ソースが公開されているのだから、技術的には、問題がないはず」とした。また「セキュリティに不安がある」という心配に対して、「誰でもソースを見ることができるので、逆に短時間でセキュリティホールは塞がれるのでかえって安全」と語った。

 さらに「ソースを公開するとノウハウが流出する」という誤解に対して、「Linuxそのものはソースを公開しているが、Linux上で動作するソフトウェアに対するソース公開は強制されていない」と語った。「ドライバ等のハードウェアサポートが弱い」「ソフトウェアが少ない」という心配は「今や、時間が解決することで、ドライバに関してはソースを公開することにより、開発効率が一気に上がるため、メリットは多い」とした。

 最後に、「Linuxは万能ではない。メインフレームの時代は続くだろう。Linuxの特性と運用方法を考えた上で、1つのソリューションとして利用してほしい」とまとめた。

 氏が考えていた内容に対し時間が少なかったようで、配布されたテキストのすべてについては触れられなかったが、Linuxを褒め讃えるだけではなく、現実に即した中身の濃い講演だった。

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