9月1日、レーザーファイブ株式会社設立および「LASER5 Linux 6.0」リリースの記者発表が行なわれた。レーザーファイブ株式会社の設立は、既に8月5日に発表されていたが、今回の五橋研究所と米Red Hatとの突然の提携の打ち切りのため、改めて記者発表が行なわれた。
レーザーファイブ(株)の設立
レーザーファイブの設立は、五橋研究所内にLinux専門月刊誌「Linux Japan」などを扱う「LASER5出版局」があるため、一企業内に製品を開発、販売する部門と、その製品を取り上げるメディアの部門とが共存していることは、メディアの独立性を考慮すると好ましくないため、としている。
レーザーファイブの代表取締役には五橋研究所の窪田敏之氏、取締役には事業開発担当として乾信治氏、技術開発担当として吉田智彦氏、財務、総務担当として窪田昭弘氏が就任する。また、監査役は会社組織としての基盤をかためるため、公認会計士の久野康成氏が就任する。
今回は役員とは別に顧問団が作成された。顧問団には、技術的な事を中心にアドバイスを受けていくという。メンバーとしては、羽根秀也氏(Project Vine代表)、杵渕聡氏(日本KDEユーザ会)他となっている。
右から吉田智彦取締役、窪田敏之代表取締役、乾信治取締役 |
レーザーファイブは五橋研究所のOS事業部の権利業務のほとんどを引き継ぐことになり、五橋研究所のOS事業部は解消されることになる。事業としては、「LASER5 Linux」のプロモーション、「LASER5 Linux」, 「Red Hat Linux」のエンタープライズ向けサポート、その他のオープンソースビジネス、オープンソースコミュニティの支援という、ディストリビューションをリリースするだけではなく、幅広いビジネスを予定している。
開発においても、外部との協力体制を強化していく。その一つとして現在、筑波大学と32CPUのスーパークラスタコンピュータを開発している。
レーザーファイブは現在は100%子会社として設立されたが、速やかに増資を行ない、今期末までには独立会社としたい、としている。
米Red Hatとの契約打ち切り
8月26日に突然、五橋研究所と米Red Hatとのパートナー契約の打ち切りの発表がされた。
今回の契約打ち切りの経緯について窪田代表取締役は以下のように語った。
「2月ごろ、ボブ・ヤング(Red Hat Software社会長)と『日本法人ができたらいいね』と言う話は軽いノリでしていた」
「しかし、Linux Worldで来日したときに、情報産業関係の方々に紹介したところ、集まった方々がそうそうたるメンバーで、びっくりしたようだ。またLinux Worldの会場も非常に盛り上がっているのを見て『これは、日本についても真面目に取り組まなければいけない』いう話になった」
「ところが、国際事業の窓口になるRed HatのCEOが数回変わり、全然話が進まなくなった。そして、その後、アメリカの代理店を通して話をしてくれという話をしてきた。その時点でも、日本でのビジネスプランをいろいろ提出したのだが、むこうからはプランらしきものはなにも出てこない。そして、交渉はうまくいかず、100%子会社を設立したいと言ってきた。どうやらむこうの気は変わりそうにないので、日本語版を開発するためのさまざまな資料等を買ってもらうか、資本参加したい、と言う交渉をしたが、その話も受け入れられなかった」
「その後、Red hat日本法人の社長も決まったころ、こちらで開発した「redhat 6.0日本語版」を、Red Hatの日本法人で売りたいと言う話も来たが、金額の折り合いがつかず流れた」
「このようなやりとりを通して、Red Hatの経営方針に疑問というか不安を抱くようになっていった。また、今までにRed Hatに対して改良を提案しても、受け入れられないこともあった。Red Hat Linuxそのものはオープンなので、自分たちで改良してリリースすることはできる。『赤い帽子のマーク』にこだわるよりも、しっかりした製品をきちんとユーザーに届けることにしたい。我々は、IBM-PCアーキテクチャのコンピュータを開発生産したCompaqのように、Red HatのLinuxに付加価値をつけたスーパークローンを作っていきたい」
経営方針に関しては以下のような点も挙げられていた。
「Red Hatの売上は1000万ドル(約12億円)なのに利益がほとんどゼロである。今回のIPOではかなりの金額が集まったが、株主に還元できるのかについても非常に疑問である。我々の考える経営とはかなり違う」
今回、リリースしていく製品が「Red Hat Linux」から「LASER5 Linux」に変わったため、メーカー等との提携に関してもどうなるかも注目されるが、「まだ、正式にどうするかはきまっておらず、これからお願いにあがる」としている。