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嵐の開発?!

1999年08月25日 10時01分更新

文● 池田篤司

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 嬉しい知らせは、8月9日から13日に開かれたSan JoseのLinux Worldが、Stormixにとっては華々しいデビューとなったことだ。悲しい知らせは、開発者の1人であるガースが大学にもどるためにStormixを去ったことである。9月に大学へ戻ることは前から聞いていたが、やはり少し残念だ。大学は、あと1つ単位をとれば卒業できるそうなので頑張ってほしい。ちなみに彼の専攻は数学なのだ。

 Storm Linuxの基本コンセプトは、「easy install」「easy to use」である。ターゲットとするユーザーは、Windowsを使っているLinuxの初心者。「KDE」を採用し、簡単なデスクトップを目指した。

 去年の10月の時点で、いまだグラフィックインストールを採用しているパッケージはなかった。Storm Linuxは、豊かなGUIインターフェイスを実現するために、X Window System上のインストールシステムを開発した。また、同じインストールプログラムでテキストベース画面のインストールが選択できるようになっている。

 ハードウェアのコンフィギュレーションは、Autoditectプログラムによって自動的に行なわれ、パーティションの作成は、GUIインターフェイスでユーザーフレンドリーである。Storm Linuxは、インストールが終了すれば100%Debian GNU/Linuxとして動作する。採用したDebianのバージョンは、2.1。将来は、SAS(Storm Administration System)を利用したアドオン パッケージを発売する計画である。たとえば、ファイアウォールパッケージをインストールしたら、Storm Linuxがファイアウォールに早変わりする。スモールビジネスパッケージをインストールしたら、メールサーバやWebサーバなどが瞬時にインストール、セットアップされるようになる。

 以上が、Storm Linuxの開発当初の主な特徴であった。Linux Worldから帰って来た8月現在、戦略を「デスクトップ」という位置づけよりも、「ネットワークに強い」Storm Linuxへ移行させることになった。今の僕等にCorel Linuxの存在は無視できないし、正面からの衝突は避けたい。今後は、デスクトップとしての機能はこのままに、ネットワーク関連の機能を先に充実させていく計画だ。

 開発の担当は、ケビンがテキストベースのユーザーインターフェイスライブラリ「CTK」の開発や、基本部モジュールの作成、パーティショニングライブラリ。ガースはハードウェア自動検出とMID(Module Interface Daemon。ストームアドミニストレーションシステムの一部)の開発。僕がケビンのCTKとGNUのGTK+を使ってSAT(Storm Administration Tool。同じく、ストームアドミニストレーションシステムの一部)を開発した。

 作業を始めたころ、北米スタイルと日本スタイルの作業形態の違いに戸惑ったが、北米のスタイルのほうがゆとりがあって自由度がある。その違いとは、共同作業主体なのか、個人作業主体なのかという点だ。それは、会議の回数からもうかがえる。日本にいたころは、1日に2時間の会議が4回あり、それでもうすでに5時を過ぎてしまったことが、一体何回あったことか。日本スタイルは、何かするにあたってグループの人間の同意を求める。つまり責任は全員にあるのだ。北米では、あくまで個々に責任があるので、失敗したら、その責任を取るのはあくまで個人だ。そのかわり、その個人のやりたいことができるので、ユニークなものがたくさん開発されるのであろう。反対に、日本スタイルのよいところは、個々の人々の持ってる情報が均一なため、それが製品に反映されて誰が作っても同じものができ、均一な製品ができ上がるのだろう。と最近、勝手に自分で納得している。文化の差を、真面目に追求すると日本人の自分が浮き彫りにされてくるのでけっこう面白い。

 SATの開発当初、ユーザーインターフェイス部分を、時にはグラフィカル、時にはテキストベースと切替えて実行するにはどうしたらよいか悩んだが、UNIXのカーネル内のファイルシステム構造に答を見つけた。UNIXのファイルシステムは、VFS(Virtual File System)という共通インターフェイスを通して、それぞれのファイルシステムをコントロールしている。たとえば、Linuxが、ext2、MS-DOSのFATやMacのHFSなどのまったく違うファイルシステムを操作できるのは、カーネルが、このVFSを通してext2、FATやHFSを操作しているからなのだ。

 このファイル システムの構造と同じようにしてやれば、同じプログラムから書き換えることなしに2つの性格の異ったCTKとGTKを操作してやることができる。

# Sample program 
window(hello_win1);
hello_win1:title("Hello");
show(hello_win1);
label(hello_win1.label1);
hello_win1.label1:set_label("Hello world!!");
show(hello_win1.label1);

Fig.1 sample.sl

Fig.1 を入力して、「sat -f sample.sl」を実行してやれば、X Window System上ではウィンドウが、Xを立ち上げずに通常のコマンドラインからこのコマンドを実行すれば、テキストベースのウィンドウが出現する。

 今、チェックしてみたところ、β版のシステムに satコマンドはインストールされていませんでした。次回の版では、インストールされますのであしからず。(^^i

池田篤司(いけだあつし)

プロフィール

池田氏の写真

 工学院大学情報工学コース卒業後、1990年(株)PFUに入社し初めてUNIXを知る。SystemV系リアルタイムOSのカーネルの開発、保守に携わる。1994年、不況の中強気で会社を辞め渡加。
 1997年にLinuxを使い始める。1998年、Netnation Communicationsに入社し、1999年にStormix Technologiesが設立され移籍する。

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